最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ルールベースエンジンソフト事件(控訴審)

知財高裁平成25.11.27平成25(ネ)10058未払著作権料請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      八木貴美子
裁判官      小田真治

*裁判所サイト公表 2013.11.28
*キーワード:使用許諾料、和解合意、要素の錯誤

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■事案

ソフトウェアの使用許諾料等に関する紛争の和解合意書の有効性などが争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :大学教授遺族ら
被控訴人(一審被告):設計・製図用コンピュータソフトウェア製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法95条

1 合意による紛争解決の有無及びその効果

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■事案の概要

『1 事案
 P1は,被控訴人の取締役であった。P1と被控訴人との間で,P1を著作権者と,被控訴人を使用者とし,P1は被控訴人に対し,P1が著作権(P5との共有)を有する電子計算機用のプログラムであるDSP(プログラムの著作物)の使用,複製,販売等を許諾することとし,他方,被控訴人はP1に対し,DSPの使用,複製,販売等につき使用許諾料を支払う旨の契約(本件使用許諾契約)を締結した。その後,被控訴人がアトリスに対して,同社のコンピュータにDSPを複製し,使用をすることを許諾したことから,P1の成年後見人が法定代理人として,被控訴人に対し,本件使用許諾契約に基づき,使用許諾料2565万2592円及びこれに対する平成18年12月1日から支払済みまで約定利率である年8%の割合による遅延損害金の支払を求めた(原審における訴訟係属中にP1は死亡したため,P1の相続人である控訴人らがP1の訴訟上の地位を承継し,被控訴人に対し,控訴人P2は使用許諾料1282万6296円及びこれに対する同日から上記割合による遅延損害金,控訴人P3及び同P4は,それぞれ使用許諾料641万3148円及びこれに対する同日から上記割合による遅延損害金の支払を求めた。)。
 これに対して,被控訴人は,被控訴人がP1に技術顧問料として月額50万円を支払い,また被控訴人が有する診療支援知識ベースの著作権をP1に譲渡することとし,その代わり,P1は,被控訴人がアトリスへDSPを貸与したことに関する過去分の請求を不問とすること等を内容とする合意(本件合意)が成立したから,P1の被控訴人に対する請求権は消滅したなどと反論した。
2 原審の判断
 原審は,P1と被控訴人との間で本件合意が成立したことにより,アトリスへのDSPの貸与に関し,P1の被控訴人に対する請求権が存在したか否かにかかわらず,その請求はできないものとなったと判断して,控訴人らの請求をいずれも棄却した。
 控訴人らは,原判決の取消し等を求めて,控訴を提起した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 合意による紛争解決の有無及びその効果

訴外株式会社アトリスへDSPソフトウェアをライセンスした際の使用許諾料の成否やその額について、P1と被控訴人の間で紛争となり、平成19年4月10日に関係者6名が参集の上、和解の内容となる合意書を作成した点に関して、原審は本件合意が成立したと認めていましたが、控訴審でも原審の判断を維持しています(5頁以下)。
なお、本件合意を締結するに当たり、P1の意思表示に要素の錯誤があったと控訴人は主張しましたが、認められていません。

結論として、本件合意が成立し、これを無効とする理由が認められない以上、本件合意成立後は被控訴人に対してその支払を求めることはできなくなり、P1の地位を承継した遺族である控訴人らについても同様であるとして、控訴人らの主張は認められていません。

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■コメント

原審の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

原審記事