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2013年10月29日

POS情報開示システムライセンス事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

POS情報開示システムライセンス事件

東京地裁平成25.9.20平成24(ワ)6801損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      森川さつき

*裁判所サイト公表 2013.10.21
*キーワード:ライセンス契約、共同開発、契約不更新

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■事案

POS情報開示システムのライセンス契約不更新に起因して紛争となった事案

本訴原告・反訴被告:情報処理会社
本訴被告・反訴原告:生活協同組合、システム開発会社(組合子会社)

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■結論

本訴請求棄却、反訴請求認容

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■争点

条文 著作権法112条1項

1 著作権行使の不可能を理由とする不法行為の成否
2 契約の更新拒絶等を理由とする不法行為の成否
3 不法行為請求(2)の成否
4 著作権法112条1項に基づく差止請求の成否
5 本件第1ライセンス契約及び本件第1覚書に基づくライセンス使用料請求の成否(反訴)
6 本件第2ライセンス契約及び本件第2覚書に基づくライセンス使用料請求の成否(反訴)

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■事案の概要

『本訴は,原告が,(1)POS情報(販売時点情報)開示システム(プログラム)である「宝箱システム」(以下,「宝箱システム」といい,これに係るサービスを「宝箱サービス」という。)の著作権を有し,その後継システムである「トレジャーデータ」(以下「トレジャーデータ」という。)を共同開発して著作権を準共有しているなどとした上で,被告らは,原告の著作権行使を不可能にし,また,原告が継続契約関係に基づく独占的な営業上の利益を保有し,契約の更新を拒絶する正当な理由がないにもかかわらず,不当な意図に基づき契約の更新を拒絶したなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償5億4413万9378円の一部請求として,被告ら各自に対し,4億9163万1283円の支払を求め(以下「不法行為請求(1)」という。),(2)被告組合は,宝箱システムの著作権を有していないにもかかわらず,ライセンス料を支払わせたなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償請求(選択的に不当利得に基づく利得金返還請求)として,被告組合に対し,1億0919万6750円(附帯請求としてライセンス料の各支払日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金)の支払を求める(以下,選択的併合である不当利得に基づく利得金返還請求を含めて「不法行為請求(2)」という。)とともに,(3)著作権法112条1項に基づく差止請求として,被告らに対し,宝箱システム及びトレジャーデータの使用禁止を求めた事案である。
 反訴は,(1)被告組合が,宝箱システムのライセンス契約及び覚書に基づくライセンス使用料として,原告に対し,3191万5500円(附帯請求としてライセンス使用料の各弁済期の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金)の支払を求め,(2)被告会社が,トレジャーデータのライセンス契約及び覚書に基づくライセンス使用料として,原告に対し,3150万円(附帯請求として前同様の遅延損害金)の支払を求めた事案である。』(3頁以下)

<経緯>

H15 被告組合が東京流通情報にシステム開発、保守委託
    被告組合がいるかママにホームページ運用委託
H17 いるかママがPSIGとの間で「宝箱システム」運用業務委託契約締結
H18 被告組合といるかママ間で「宝箱システム」独占的ライセンス契約締結
    いるかママがサンエー、コープこうべ、ライフとの間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
H19 いるかママから原告に運営引継ぎ
    原告と被告組合間で「宝箱システム」独占的ライセンス契約(本件第1ライセンス契約)、業務委託契約、覚書締結
    原告がPSIGとの間でシステム共同開発契約締結
    原告がサンエーとの間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
    原告といるかママとの間で営業譲渡覚書締結
    原告がライフ(首都圏)との間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
    原告がいるかママ及びコープこうべとの間で事業譲渡契約締結
    原告がライフ(近畿圏)との間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
H21 原告がタイヨーとの間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
    原告がサンネットとの間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
H23 トレジャーデータの企画、開発、完成
    被告会社(被告組合子会社)と原告との間で「新宝箱システム環境使用契約書」、ライセンス契約書(本件第2ライセンス契約)、覚書締結
    被告会社がアジェントリクスとライセンス契約締結
    被告組合が原告に対して本件第1ライセンス契約不更新通知
    原告が札幌地裁に提訴、東京地裁へ移送

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■判決内容

<争点>

1 著作権行使の不可能を理由とする不法行為の成否

(1)宝箱システムの著作権の帰属

原告は、宝箱システムの著作権について開発元から譲渡を受けていたと主張しましたが、裁判所は認めていません(34頁以下)。結論として、宝箱システムの著作権は、被告組合に帰属していると判断しています。

(2)トレジャーデータの共同開発

宝箱システムの後継システムとなるトレジャーデータの開発について、原告は、被告らとの共同開発である等の主張をしましたが、トレジャーデータの開発に関する原告の主張を裁判所はいずれも認めていません(36頁以下)。

結論として、原告は、宝箱システム及びトレジャーデータの著作権を有するとは認められず、原告がこれらのシステムを利用することができなくなったとしても、それが原告による著作権の行使を不可能にした不法行為を構成するものとはいえない。また、著作物の使用という側面からも原告はトレジャーデータへの移行に伴い、宝箱サービスの使用廃止について同意しており、宝箱システムのプログラムを保管していたのであるから、被告らによって宝箱システムのプログラムの使用が不可能にされていたとは認められない。同様に、原告は、本件第2ライセンス契約によってトレジャーシステムを利用できる権利(ライセンス)を取得していたのであるから、被告らによってトレジャーデータの使用が不可能にされていたとは認められない。よって、著作権行使の不可能を理由とする不法行為は成立しない、と裁判所は判断しています。

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2 契約の更新拒絶等を理由とする不法行為の成否

原告は、宝箱システムからトレジャーデータへの移行作業は、従前同様に原告が独占的なライセンス権限、データベースの権限を有し、利用者に対し引き続きサービスを提供する権限を有していることを前提に行われたものである旨主張しました(39頁以下)。
この点について裁判所は、本件第2ライセンス契約の文言や被告会社からの通知の際の原告の対応を勘案して、原告と被告らの間において、原告に対してトレジャーデータの利用についても独占的なライセンスが与えられることが予定されていたと認めることは困難であるし、その他これを認めるに足りる証拠はないと判断。
結論として、被告会社が原告に対してトレジャーデータの利用について独占的なライセンスを与えなかったことや被告組合が本件業務契約を更新しないでPOS情報の提供をしなくなったこと等が原告の営業の利益を違法に侵害するとはいい難く、不法行為は成立しないと判断しています。

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3 不法行為請求(2)の成否

原告は、被告組合が宝箱システムのシステムプログラムの著作権を有していないのに不法にライセンス料名下に金員を詐取してライセンス料相当額の損害を原告に与えたなどとして、不法行為を主張するとともに、著作権がない被告組合に対し本来著作権使用の対価としてのライセンス料を支払う必要がないとして不当利得を主張しました(42頁以下)。
しかし、被告組合は宝箱システムの著作権を有しているとして、裁判所は原告の主張を認めていません。

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4 著作権法112条1項に基づく差止請求の成否

原告が宝箱システム及びトレジャーシステムの著作権を有しているとは認められないことから、差止請求は認められていません(43頁)。

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5 本件第1ライセンス契約及び本件第1覚書に基づくライセンス使用料請求の成否(反訴)

原告が被告組合に対して宝箱システムのライセンス利用料を支払うことを内容とする本件第1ライセンス契約及び本件第1覚書に基づく被告組合のライセンス使用料請求(3191万5500円)は、理由があると裁判所は判断しています(43頁以下)。

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6 本件第2ライセンス契約及び本件第2覚書に基づくライセンス使用料請求の成否(反訴)

原告が被告会社に対してトレジャーシステムを利用できる権利(ライセンス)の対価支払を内容とする本件第2ライセンス契約及び本件第2覚書に基づく被告会社のライセンス使用料請求(3150万円)は、理由があると裁判所は判断しています(44頁以下)。

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■コメント

POS情報開示システムのクラウド化に伴い、サービスの運用会社を変更、運用を発注元の子会社に担当させることとしたため、従前の運用会社との契約が不更新となったことから契約関係について紛争となりました。

written by ootsukahoumu at 07:11│TrackBack(0)知財判決速報2013 

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