最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

YG性格検査用紙出版契約事件(控訴審)

大阪高裁平成25.8.29平成24(ネ)12著作権に基づく差止請求権不存在確認等請求、著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官      遠藤曜子
裁判官      横路朋生

*裁判所サイト公表 2013.10.17
*キーワード:出版契約、共有著作権、正当な理由、訴えの利益

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■事案

共有者による出版契約の更新拒絶が「正当な理由」(著作権法65条3項)を有するかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人(一審甲事件被告兼乙事件原告):共有著作権者
控訴人(一審乙事件原告)          :共有著作権者
被控訴人(一審甲事件原告兼乙事件被告):実験心理学器械製作販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法65条3項

1 本件更新拒絶に正当な理由があるか等について

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■事案の概要

『1 被控訴人は,亡Cとの間で,平成12年1月1日に原判決別紙1商品目録記載1ないし4の各検査用紙(以下「本件各検査用紙」という。)について,原判決別紙2の著作物出版販売契約書に係る著作物出版契約(以下「本件出版契約」という。)を締結して本件各検査用紙を出版,販売していたところ,同契約で定められた当初の利用期間が満了したことから,被控訴人及び本件各検査用紙の著作権の相続人ら間で,同契約の存続を巡って紛争が生じた。
2 本件甲事件は,被控訴人,一審甲事件原告D(以下「一審原告D」という。)及び同E(以下「一審原告E」という。)が,主位的には,一審甲事件原告らと控訴人Aとの間で,本件出版契約が存在していることの確認を求め,予備的に,(1)被控訴人が,控訴人Aとの間で,控訴人Aが,Cから相続した著作権の持分権に基づき,被控訴人がする本件出版契約に基づく出版,販売行為に対する差止請求権を有しないことの確認を求め,(2)一審原告D及び同Eが,控訴人Aに対し,著作権法65条3項に基づき,本件出版契約の更新に合意することを求めた事案である。
 本件乙事件は,控訴人らが,本件出版契約が契約期間満了により終了したことを前提として,被控訴人に対し,控訴人らが有する本件各検査用紙の著作権の持分権に基づき,本件各検査用紙の出版,販売の差止等を求めるとともに,不法行為に基づき,それぞれ2200万円の損害賠償及びこれらに対する不法行為の日の後である平成22年3月26日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
3 原審は,被控訴人の甲事件の主位的請求を認容し,一審原告D及び同Eの甲事件の請求については,主位的請求は確認の利益がなく不適法であるとしてその請求に係る訴えをいずれも却下し,予備的請求はいずれも棄却し,控訴人らの乙事件の請求をいずれも棄却したところ,控訴人らが控訴した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件更新拒絶に正当な理由があるか等について

本件出版契約の更新拒絶についての「正当な理由」を基礎付ける事実に関して、控訴審でも原審の判断を維持し、本件更新拒絶に著作権法65条3項にいう正当な理由があるとは認められず、控訴人Aがした本件更新拒絶は有効なものとは認められず、本件出版契約は同契約3条の規定により更新されて存続しているものと認められ、その結果として、被控訴人は本件出版契約に基づき本件各検査用紙を出版、販売する権利を有することが認められると判断しています(3頁以下)。
なお、控訴人らは、本件訴訟の控訴審における和解協議における被控訴人の態度は、本件各検査用紙の出版権者として不適格であることを示すものであり、本件更新拒絶についての正当な理由を基礎付ける事由になる旨を主張しましたが、主張に係る事実が本件訴訟係属後に起きた事実であることや和解協議に全く応じなかったわけではないことなどから、この点についての控訴人らの主張を裁判所は認めていません。

結論として、被控訴人による甲事件主位的請求である控訴人Aとの間において本件各検査用紙の出版、販売に関して本件出版契約が存在することの確認を求める点については認容され、控訴人らの乙事件各請求は、いずれも棄却されています。

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■コメント

YG性格検査用紙の出版を巡る紛争の控訴審判決となります。結論としては、原判決の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

2011年12月5日 原審記事