最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ルールベースエンジンソフト事件

大阪地裁平成25.5.28平成23(ワ)12939未払著作権料請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 谷 有恒
裁判官      松川充康
裁判官      網田圭亮

*裁判所サイト公表 2013.6.4
*キーワード:使用許諾料、和解合意

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■事案

ソフトウェアの使用許諾料等に関する紛争の和解合意書の有効性などが争点となった事案

原告:大学教授遺族ら
被告:設計・製図用コンピュータソフトウェア製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

1 合意による紛争解決の有無及びその効果

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■事案の概要

『P1と被告は,DSPと称するプログラムについてソフトウェア使用許諾契約(以下「本件使用許諾契約」という。)を締結し,被告は,DSPの使用又は複製,販売に対し使用許諾料を支払う旨を約していたところ,P1は,被告が株式会社アトリス(以下「アトリス」という。)のコンピュータにDSPをインストールし,その使用を許諾したとして,本件使用許諾契約に基づく使用許諾料の支払を求める本件訴訟を提起したが,P1が死亡したため,P1の相続人である原告らは,P1の地位を承継し,各自の法定相続分に応じ,被告に対し,本件使用許諾契約に基づく使用許諾料の支払を求めた』事案(2頁)

<経緯>

        P1らがDSPプログラム著作物を開発
H08.11 被告会社設立
H09.04 P1と被告が使用許諾契約締結
H16.07 アトリスから被告に対して開発業務委託
H18.01 被告が著作権料算定基準表を作成
H18.10 P1が被告に契約違反を通知
H19.04 P1と被告らが会議を開催
H19.05 P1が新会社設立
H19.12 被告らが年間ライセンス合意書作成
H23.03 P1について後見開始
H23.07 後見人P3が本訴提起
H24.03 P1死去

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■判決内容

<争点>

1 合意による紛争解決の有無及びその効果

アトリスへDSPソフトウェアをライセンスした際の使用許諾料の成否やその額について、P1と被告の間で紛争となり、平成19年4月10日に関係者6名が参集の上和解の内容となる合意書を作成した点に関して、裁判所は合意が成立したと認めています(8ページ以下)。
結論として、本件合意が成立し、これを無効とする理由が認められない以上、P1が本件合意以前にアトリスへのDSPソフトウェアのライセンスに関して使用許諾料の請求権を有していたか否かに関わりなく、本件合意成立後は被告にその支払を求めることはできなくなり、P1の地位を承継した遺族である原告らについても同様であるとして原告らの主張を認めていません。

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■コメント

紛争解決のための合意書をP1と被告らが作成したものの、その後P1が脳溢血となり後見が開始され、P1の子であるP3が成年後見人として本件訴訟を提起したという経緯があります。

被告会社のサイトを拝見しますと、このプログラムは、プロセスとルールを分けて実装して、ルール部分を「ルールベース」として管理することでメンテナンス性・保守性を向上する、という機能を有するものです。
判決文にあるような診療支援データベースであれば、たとえば、診断結果を自動的に判定し、受診者の健康状態をわかりやすく説明した健診結果報告書の作成を自動化する統合健康管理ASPへ応用されます。

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■参考サイト

被告サイト
システム開発の効率化 業務案内