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2012年10月09日

韓流DVD販売契約解除事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

韓流DVD販売契約解除事件

東京地裁平成24.7.11平成22(ワ)44305損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      西村康夫
裁判官      森川さつき

*裁判所サイト公表 2012.10.05
*キーワード:二次的著作物、頒布権、ライセンス契約、解除、損害

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■事案

韓流スターが出演するDVD商品についてライセンサーと卸業者間の販売契約解除に伴いサブライセンシーである販売取扱店の販売行為の著作権侵害性が争点となった事案

原告:映像制作会社(韓国法人)
被告:映像音楽ソフト会社(日本法人)

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法11条、26条、114条2項、3項、112条1項、民法545条1項但書

1 原告の著作権の有無
2 本件解除の有効性
3 原告の頒布権は消尽しているか
4 被告は解除前の第三者として保護されるか
5 被告の故意過失
6 損害論
7 差止めの成否

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■事案の概要

『別紙物件目録記載1ないし4のDVD商品(以下,パッケージを含めたDVD商品全体を「本件商品1」のようにいい,本件商品1ないし4を合わせて「本件商品」という。)の映像(本件商品のDVDに固定された一連の映像であり,音声・音楽・字幕を含む。以下「本件映像」という。)の著作権を有すると主張する原告が,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件商品の販売,頒布の差止めを求めるとともに,民法709条,著作権法114条2項又は3項に基づき,損害617万5000円及び弁護士費用61万7500円の合計679万2500円並びにこれに対する不法行為の後の日である平成23年6月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁)

<経緯>

H19.6 原告がMBCとテレビプログラム利用契約締結
H19.8 被告と訴外JCIが本件DVD頒布契約締結
H19.9 原告がJCIと本件DVD販売契約締結
H19.9 JCIが原告に代金の一部となる1184万円を支払う
H20.1 原告がJCIに本件DVDを全数引き渡す
H20.2 JCIが原告に不良品の通知
H20.2 被告が本件DVDを販売開始
H20.4 原告がJCIに販売契約の解除の意思表示

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■判決内容

<争点>

1 原告の著作権の有無

(1)準拠法

原告が韓国法人であるため、前提として準拠法が検討されています(10頁以下)。差止請求、損害賠償請求の準拠法については、結論としては日本法が適用されると判断しています(ベルヌ条約5条(2)、法適用通則法17条、7条)。

(2)本件映像の著作権

本件商品であるDVDに収録された映像は、韓流スターが出演した韓国のTVトーク番組「パク・サンウォンの美しいTV顔」(本件プログラム)について、原告が原告の費用において日本語字幕を付け、音楽を差し替えて17名の韓国人俳優・女優の出演した回を選択し、本件映像に収録すべき場面を選択して編集しDVD化したものでした。
裁判所は、結論として、本件映像について本件プログラムの二次的著作物性を肯定し、原告が本件プログラムに新たに加えた創作的部分については、映画の著作物である本件映像の映画製作者であると認められる原告が単独で著作権を有しているが、本件プログラムと共通しその実質を同じくする部分については、原告の著作権は及ばないと判断しています。

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2 本件解除の有効性

本件商品の一部に不良品があったことを契機として訴外JCIは原告に対して販売契約に基づく残代金の支払いをしていませんでしたが、原告がJCIに引渡し済みの本件商品3万7000枚のうち3枚の不良品が認められる以上には瑕疵が認められなかったことから、JCIに債務不履行が認められています(13頁以下)。そして、原告の無催告解除、解除の意思表示が肯定されており、本件販売契約は、平成20年4月17日に原告の解除により無効となったと判断。本件販売契約による原告からJCIへの頒布許諾も無効となったものとされています。

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3 原告の頒布権は消尽しているか

被告は、原告の頒布権は原告からJCIに対する本件商品の譲渡により消尽していると主張しました。しかし、裁判所は、公衆に提示することを目的としない映画著作物の頒布権について、いったん適法に譲渡されるとその目的を達成したものとして消尽し、その後の再譲渡にはもはや著作権の効力は及ばないとする最高裁判例(中古ゲームソフト事件 最判平成14年4月25日)に言及した上で、原告からJCIに対する本件販売契約が債務不履行により有効に解除されており、適法な第一譲渡があったとはいえず、本件において消尽を論ずる余地はないと判断しています(15頁以下)。

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4 被告は解除前の第三者として保護されるか

被告は、民法545条1項ただし書の「第三者」に当たり、原告は本件解除により被告の権利を害することはできず、原告の被告に対する損害賠償請求は認められないと主張しました。
しかし、裁判所は、ここで「第三者」とは、解除前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者であって、対抗要件を備えた者をいうと示した上で、被告は解除前にJCIから頒布許諾を受けていたが、原告からJCIに対する頒布許諾とJCIから被告に対する頒布許諾とは別個の債権的な法律関係であるとして、被告が解除された本件販売契約の目的物につき新たな権利関係を取得した者ということはできず、また被告の権利は対抗力を備えたものでもないことから、被告は民法545条1項ただし書にいう「第三者」として保護される余地はないと判断しています(16頁)。

結論として、被告は、本件解除によりJCIが頒布権原を失ったことで、JCIから利用許諾に基づく頒布権原を原告に対抗することができなくなり、被告は原告の著作物を無許諾で頒布したことになると判断されています。

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5 被告の故意過失

本件解除前の頒布行為については、被告に過失はなく、解除通知の参照送付を受けた時点(平成20年4月17日)以降は解除の可能性を認識したとしてその後の被告の頒布行為については少なくとも過失があると認められています(16頁以下)。

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6 損害論

損害論について、裁判所は、114条2項に基づき、被告の得た利益を算定してます(17頁以下)。

平成20年4月17日以降の販売枚数 合計2321枚
JCIからの仕入額 1880円(1枚あたり)
直販価格      3800円
卸販売価格     2850円
粗利         970円から1920円
変動経費         不明
被告の利益      190円
原告寄与度     50パーセント(二次的著作物)

2321枚×190円×0.5=22万0495円(税別)

合計 22万0495円

なお、114条3項に基づき使用料相当額を1枚あたり50円としても算定していますが、同条2項での算定額を上回るものではないとの判断です。

そのほか、弁護士費用として、2万2050円(損害額の10パーセント相当額)が認定されています。

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7 差止めの成否

被告の元に本件商品の在庫が存在することから、本件商品の販売、頒布の差止めが112条1項に基づき認められています(19頁以下)。

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■コメント

DVD商品に関する日本国内での独占的販売代理店(サブライセンシー)となった被告にとっては、国内総代理店(マスターライセンシー)の債務不履行によって火の粉を被ってしまったような事案になります。

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■追記(2013/4/19)

『頒布権の消尽を考える場合には、「適法複製物」の譲渡であることが重要であって、その譲渡が法的形式において「有効性」であることが重要な訳ではない』として判旨に疑問を呈する見解として、山本隆司「山本隆司弁護士の著作権談義 第7回頒布権の消尽」『公益社団法人日本複製権センター(JRRC)メールマガジン』(2013/4/19配信第10号)参照
written by ootsukahoumu at 06:56│TrackBack(0)知財判決速報2012 

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