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2012年02月01日

テレビCM原版事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

テレビCM原版事件

東京地裁平成23.12.14平成21(ワ)4753損害賠償請求事件等PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      菊池絵里
裁判官      小川雅敏

*裁判所サイト公表 2012.1.17
*キーワード:映画の著作物、著作者、映画製作者、著作権の帰属

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■事案

テレビCM原版の著作権の帰属などが争点となった事案

原告:映像企画制作会社
被告:広告代理店、原告元取締役A

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、2条3項、16条、2条1項10号、29条

1 本件各CM原版の著作権の帰属
2 被告らの損害賠償責任の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,(1)被告アドックに対し,<ア>原告が制作したケーズデンキの新店舗告知のテレビCM原版(新店舗名部分が空白の原版)について,被告アドックが無断で当該原版を使用して新たに新店舗告知のテレビCM原版(新店舗名を挿入した完成版)を制作し,そのプリント(CM原版のコピー)を作成した旨主張し,また,原告が制作した新店舗告知のテレビCM原版(上記と同様の完成版)について,被告アドックが無断でそのプリントを作成した旨主張し,著作権侵害(新店舗名部分が空白の原版の複製権侵害)を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として,原告の利益相当額604万5500円(附帯請求として内金134万3000円〔CM原版5本65万円及びプリント42本69万3000円〕に対する訴状送達の日の翌日である平成20年11月1日から,内金470万2500円〔プリント285本470万2500円〕に対する訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成21年1月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めるとともに,<イ>原告が制作したブルボンの商品告知のテレビCM原版について,被告アドックが無断でそのプリントを作成した旨主張し,著作権侵害(当該テレビCM原版の複製権侵害)を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として,原告の利益相当額300万3000円(附帯請求として訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成21年1月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求め(第1事件),(2)原告の取締役であった被告Aに対し,上記,涼作権侵害を被告アドックと共同して行ったなどと主張して,不法行為又は債務不履行(取締役としての善管注意義務・忠実義務違反)に基づく損害賠償請求として,904万8500円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成21年11月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた(第2事件)事案』(2頁以下)

<経緯>

H17.5 Bがケーズデンキに対してプレゼン。原告、被告会社がプレゼン案に関与
H17.11BがブルボンCMについて、撮影、編集等に原告を選定
H18   Bが代理店とのオリエンテーションに参加。代理店がケーズデンキCM制作受注
H18.6 ケーズデンキテレビCM原版(本件ケーズCM原版)制作
H19.6 ブルボンテレビCM原版(本件ブルボンCM原版)制作
H20.3 被告Aが原告会社の取締役を退任

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■判決内容

<争点>

1 本件各CM原版の著作権の帰属

裁判所はまず、テレビCM原版の制作の特徴として、広告主の意向を把握した上で原版制作作業を指揮できる立場にある者の役割の重要性について言及しています(18頁以下)。そして、大手広告代理店を退職し被告広告代理店の監査役に就任していたBがCM制作を総合的に指揮していたと判断しています。

(1)本件ケーズCM原版について

裁判所は、本件ケーズCM原版が映画の著作物(2条3項)であるとした上で、本件ケーズCM原版の著作者については、Bが本件ケーズCM原版においてその全制作過程に関与し、CMのコンセプトを定め、出演タレントを決定するとともに、CM全体の予算を策定し、撮影・編集作業の指示を行っていたとして、映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者(16条本文)にあたるとして、本件ケーズCM原版の著作者と認めるのが相当であると判断しています。

次に、本件ケーズCM原版の著作権の帰属について、裁判所は、映画の著作物の著作権の帰属に関する29条1項の趣旨や映画製作者の意義(2条1項10号)から、本件ケーズCM原版では、その製作する意思を有する(発意)主体としては、広告代理店(訴外)である電通か、広告主であるケーズデンキであると判断。原告の映画製作者性を否定しています(25頁以下)。

(2)本件ブルボンCM原版について

本件ブルボンCM原版も映画の著作物(2条3項)であるとした上で、本件ブルボンCM原版の著作者については、Bが電通に勤務していた平成7年からブルボンのCM制作を担当し、撮影、編集等を担当する制作会社の選定を行い、本件ブルボンCM原版についても企画・制作を指揮していたとして、映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者(著作権法16条本文)にあたるとして、本件ブルボンCM原版の著作者と認めるのが相当であると判断しています(26頁以下)。

次に、本件ブルボンCM原版の著作権について、その製作する意思を有する(発意)主体としては、広告代理店である電通か、広告主であるブルボンであると判断。原告の映画製作者性を否定しています。

結論として、原告はいずれのCM原版についても著作権を有するとは認められていません。

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2 被告らの損害賠償責任の成否

原告が本件各CM原版の著作権を有しておらず、被告広告代理店に対する不法行為に基づく損害賠償請求は認められていません(28頁)。
また、被告A(原告の元取締役)についても、不法行為及び債務不履行に基づく損害賠償請求のいずれも認められていません(28頁以下)。

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■コメント

原告の元取締役であったAに対する債務不履行(取締役としての善管注意義務、忠実義務違反)の主張内容からすると、原告が受注を見越していたCM制作やプリントの作成を受注できなかった点が紛争のきっかけかと思われますが、判決文を読む限り、その期待が法的に保護されるだけの契約関係等の裏付けがあったのか、論拠が弱い印象です。

テレビCMの著作権関係については、制作会社、広告代理店、広告主の共同著作物(65条)として捉えることも可能であると思われますが、マルチユースを予定しないテレビCM原版については著作権を議論する必要性が現場では低いのかもしれません。
たとえば社団法人全日本シーエム放送連盟著作権委員会編「CM著作権 昨日・今日・明日」(2003)194頁以下を拝見しますと、本件でも行われているプリ・プロダクション・ミーティング(事前全体確認会議)で著作権の帰属といった細かい部分での合意形成までは議論されていない状況が今日でもあるのではないかと思われます。


■追記(2012.11.08)

控訴審記事
written by ootsukahoumu at 06:56│TrackBack(0)知財判決速報2011 

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