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2012年01月05日

吹きゴマ折り図事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

吹きゴマ折り図事件(控訴審)

知財高裁平成23.12.26平成23(ネ)10038損害賠償等請求控訴事件PDF
別紙1から3(原審別紙資料)

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      池下 朗
裁判官      武宮英子

*裁判所サイト公表 2011.12.27
*キーワード:著作物性、アイデア表現二分論、複製権、翻案権、公衆送信権、著作者人格権、一般不法行為論

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■事案

折り紙作家の「吹きゴマ」折り図を無断でTV局の番組ウェブサイトに改変掲載されたとして、折り図の著作物性や複製権、翻案権侵害性が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人) :創作折り紙作家
被告(被控訴人):株式会社TBSテレビ

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、23条、19条、20条、民法709条

1 著作権侵害の有無
2 著作者人格権侵害の有無
3 法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成否等

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■事案の概要

『折り紙作家である原告は被告に対し,被告の制作に係るテレビドラマ「ぼくの妹」の番組ホームページ(「http://www.tbs.co.jp/bokunoimouto/news.html」。本件ホームページ)に被告折り図(原判決の別紙2記載の「吹きゴマ」の折り図。説明文を含む。)を掲載した被告の行為について,主位的に,被告折り図は,「1枚のかみでおる おりがみ おって遊ぶ −アクションおりがみ−」と題する原告書籍に掲載された本件折り図(原判決の別紙1記載の「へんしんふきごま」の折り図。説明文を含む。)を複製又は翻案したものであり,被告による被告折り図の作成及び本件ホームページへの掲載行為は,原告の著作物である本件折り図について原告の有する著作権(複製権ないし翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)の侵害に当たる旨主張し,著作権侵害及び著作権人格権侵害の不法行為による損害賠償として285万円及び遅延損害金の支払と著作権法115条に基づき被告の運営するホームページに別紙謝罪文目録1記載の謝罪文の掲載を求め,予備的に,仮に被告の上記行為が著作権侵害及び著作権人格権侵害に当たらないとしても,原告の有する法的保護に値する利益の侵害に当たる旨主張し,上記利益の侵害の不法行為による同額の損害賠償及び遅延損害金の支払と民法723条に基づき上記ホームページに別紙謝罪文目録2記載の謝罪文の掲載を求めた。』

『原判決は,本件折り図の著作物性を認めたが,被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴部分を直接感得することができないとして,被告による被告折り図の作成及び本件ホームページへの掲載行為は,原告の複製権ないし翻案権及び公衆送信権のいずれの侵害にも当たらない,同一性保持権及び氏名表示権のいずれの侵害にも当たらないと判断し,原告の主位的請求は理由がないとした。また,被告の一連の行為が原告の法的保護に値する利益を侵害する違法なものとして不法行為を構成するとは認められないとして,原告の予備的請求も理由がないとした』事案(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の有無

控訴審は、原判決の判断を是認した上で、控訴審での当事者の補足的主張について判断しています。
被告折り図と本件折り図との対比について、

【共通点】
(1)32の折り工程からなる「へんしんふきごま」(吹きゴマ)の折り方について、10個の図面(説明図)及び完成形を示した図面(説明図)によって説明している
(2)各説明図でまとめて選択した折り工程の内容
(3)各説明図は、紙の上下左右の向きを一定方向に固定し、折り筋を付ける箇所を点線で、付けられた折り筋を実線で、折り筋を付ける手順を矢印で示している等

【相違点】
(1)本件折り図
折り方の折り工程のうち矢印、点線等のみでは読み手が分かりにくいと考えた箇所について説明文及び写真を用いて折り方を補充して説明する表現方法を採っている。また、写真を用いた説明箇所がある。
(2)被告折り図
折り工程の順番を丸付き数字で示した上で,折り工程の大部分について説明文を付したものであって、説明文の位置付けは補充的な説明にとどまるものではなく、読み手がこれらの説明文と説明図に示された点線、実線及び矢印等から折り方を理解することができるような表現方法を採っている。
また、色分けをしていない点、本件折り図における「工夫のヒント」の記載内容と被告折り図における「完成!」の記載内容が異なる。

以上の諸点から、被告折り図と本件折り図とは、折り図としての見やすさの印象が大きく異なり、分かりやすさの程度においても差異があるとして、被告折り図は本件折り図の有形的な再製には当たらず、また、被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるともいえないと判断。
被告が被告折り図を作成する行為は、本件折り図について有する原告の複製権ないし翻案権を侵害しないと判断しています(7頁以下)。

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2 著作者人格権侵害の有無

被告による被告折り図の作成及び本件ホームページへの掲載行為が、原告が保有する本件折り図についての同一性保持権及び氏名表示権を侵害するかどうかについて、被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できないことから、著作者人格権侵害性も否定されています(9頁)。

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3 法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成否等

原告は、折り紙作品のテレビ無断放映と本件折り図のホームページ無断掲載などについて不法行為を構成する旨主張しましたが、いずれも裁判所に認められていません(9頁以下)。

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■コメント

控訴審でも原審の判断が維持されています。
別紙1と2_ページ_1
(別紙1本件折り図)
別紙1と2_ページ_2
(別紙2被告折り図)
別紙3_ページ_1

別紙3_ページ_2
(別紙3対比表)

被告折り図と本件折り図の共通点である32の工程を10個の図面で説明する手法といった説明手法自体は、読者に対してわかりやすく説明するための手法であって具体的表現ではない(9頁)として、アイデアと表現の区別について、控訴審でも原審同様の判断となっています。
原告側としても、32の工程を10個の図面を用いた構成とすること自体がアイデアの範疇に属することは認識した上で、折り工程の選択によるその具体的表現を問題としているわけですが(4頁)、どの工程を選択していくつの工程でまとめてそれを具体的にどのように表現していくかということは、連続しているので(アイデアと表現の連続性)、その区別の判断は難しい部分です(たとえば、最近では箱根富士屋ホテル物語事件で、原審と控訴審で著作物性の判断が分かれました)。
一方では、折り紙の折り図の著作物性についてみれば、その作品の折り図を分かり易く表現する場合の表現方法は選択の幅が狭くなり、デッドコピーのような場合以外は創作作家さんに折り図の独占を認めるべきではない、という価値判断が強く働く種類の著作物となりますので、保護の範囲も狭くなると思われるところです。
いずれにしても、折り紙の折り図の著作物性(2条1項1号)が肯定され得ること、また、どの程度違う内容であれば、工程が似通っていても非侵害となるかという知財高裁レベルでの事例判断として参考になる事案です。

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■過去のブログ記事

2011年5月25日記事
吹きゴマ折り図事件

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■追記(2012.01.08)

企業法務戦士の雑感
踏んだり蹴ったりのTBS

written by ootsukahoumu at 09:14│TrackBack(0)知財判決速報2011 

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