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2011年12月31日

SARVH対東芝私的録画補償金事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

SARVH対東芝私的録画補償金事件(控訴審)

知財高裁平成23.12.22平成23(ネ)10008損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官      真辺朋子
裁判官      田邉 実

*裁判所サイト公表 2011.12.26
*キーワード:私的録画補償金、特定機器、協力義務、法律の委任

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■事案

私的録画補償金徴収の対象となる機器の特定と製造業者の協力義務の内容が争点となった事案の控訴審

控訴人 :私的録画補償金管理協会(SARVH)
被控訴人:株式会社東芝

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法30条2項、施行令1条2項3号、104条の5、民法709条

1 協力義務の法的意義
2 特定機器該当性
3 不法行為の成否


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■事案の概要

『被控訴人は,アナログチューナーを搭載しない原判決別紙製品目録1ないし5記載のDVD録画機器(「被控訴人製品」)を製造,販売するが,著作権法104条の2第1項2号の指定管理団体である控訴人は,被控訴人製品が著作権法30条2項所定のデジタル方式の録音又は録画の機能を有する「政令で定める機器」(特定機器)に該当するとの主張を前提にし,被控訴人においては著作権法104条の5所定の製造業者等の協力義務として,その購入者から被控訴人製品に係る私的録画補償金相当額を徴収して控訴人に支払うべき法律上の義務があるなどと主張し,控訴の趣旨のとおり私的録画補償金相当額の支払を求めている。』

『原審は,被控訴人製品はデジタルチューナーを搭載するだけでアナログチューナーを搭載しないが,それでも特定機器に該当すると判断しつつも,著作権法104条の5が規定する特定機器の製造業者等が負う協力義務は,控訴人の主張するような法律上の具体的な義務ではなく,法的強制力を伴わない抽象的な義務であると解されるから,被控訴人がその協力義務として被控訴人製品に係る私的録画補償金相当額の金銭を支払う義務を負うものと認めることはできず,控訴人主張の不法行為の成立も認められないとして,控訴人の請求を棄却した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 協力義務の法的意義

(1)「上乗せ徴収・納付」方式の法文上の不明確性

著作権法改正の経緯から、特定機器の製造業者等による法104条の5に基づく「協力」の内容として具体的に想定されていたのは、「特定機器の出荷価格に私的録画補償金相当額を上乗せして出荷し、利用者から当該補償金を徴収して、指定管理団体に対し当該補償金相当額の金銭を納付すること」(「上乗せ徴収・納付」方式)であったとした上で、上乗せ額を被控訴人に請求することができるとすべき根拠は法文上一義的に明確ではないと判断しています(24頁以下)。

(2)協力義務違反の可能性

もっとも、法は、補償金制度の実効性確保のため、録音・録画機器の提供を行っている製造業者等が、公平の観念上、権利者の報酬取得の実現について協力することを要請しており、特定機器の製造業者等は、「補償金の支払の請求及びその受領に関し」協力しなければならないとされたものであると控訴審は判断。
製造業者等が協力義務に違反したときに、指定管理団体(本件では控訴人)に対する直截の債務とはならないとしても、その違反に至った経緯や違反の態様によってはそれについて指定管理団体が被った損害を賠償しなければならない場合も想定されるとして、法104条の5違反ないし争点3(被控訴人による不法行為の成否)における控訴人主張を前提とする請求が成り立つ可能性があるとしています。

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2 特定機器該当性

著作権法施行令1条2項3号所定の「アナログデジタル変換によって行われた」影像を連続して固定する機能を有する機器との要件は、アナログ放送をデジタル変換して録画が行われることを規定したものであり、しかも、この変換は、DVD録画機器に搭載されるアナログチューナーからのアナログ信号を対象にするものであるとした上で、当該機器においてアナログチューナーを搭載しないDVD録画機器については、アナログデジタル変換が行われず、施行令1条2項3号該当性は否定されると判断。
被控訴人製品についてもデジタルチューナーのみを搭載する機器であるとして、被控訴人には法104条の5の義務違反があると認めることはできないと認定しています(27頁以下)。

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3 不法行為の成否

不法行為についても特定機器該当性を前提とする主張であるとして、その成立が否定されています(44頁)。

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■コメント

原審では、協力義務が抽象的な義務にすぎず、ただ、特定機器該当性は肯定するとしていましたが、控訴審では、協力義務の具体的義務の可能性を実態を踏まえて肯定した上で、ただ、特定機器該当性は否定するとして、結論としては、原審、控訴審いずれも原告サーブ敗訴の結果の判断となっています。

著作権法改正の経緯の詳細な検討を踏まえた上での判断ですが、技術の進展や利害関係の調整から曖昧な規定になったとすれば、立法技術としてその規定振りについては、今後より一層の配慮が求められるかもしれません。
著作権法では、規定の曖昧さが問題となった昭和28年問題(「シェーン」格安DVD事件 最高裁平成19.12.18など)がありましたが、2012年は、震災を契機にほぼ1年ストップしてしまった権利制限一般規定法案にも注目したいと思います。

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■過去のブログ記事

2011年01月24日記事
SARVH対東芝私的録画補償金事件

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■参考サイト

企業法務戦士の雑感(2011−12−23)
[企業法務][知財]「抜かずの宝刀」を抜いたツケ
(2011−12−29)
[企業法務][知財]手放しで喜べない知財高裁判決の危うさ〜私的録画補償金判決をめぐって

金子寛人(日経パソコン 2011/12/27)
SARVH対東芝、知財高裁の判決のポイントをひもとく−ニュース:ITpro

小寺信良「金曜ランチボックス」(有料配信メルマガ 2011年12月23日配信)
金曜ランチボックス Vol.008 <補償金裁判特別号>

written by ootsukahoumu at 10:46│TrackBack(0)知財判決速報2011 

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