最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

月光仮面DVD事件

東京地裁平成23.11.29平成23(ワ)17393著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      山門 優
裁判官      志賀 勝

*裁判所サイト公表 2011.12.12
*キーワード:映画の著作物、複製、頒布、サブライセンス契約

   --------------------

■事案

テレビ映画作品「月光仮面」「快傑ハリマオ」のDVD製造販売サブライセンス契約上の再許諾権付与の有無が争点となった事案

原告:テレビ映画著作権管理会社
被告:CD・DVD製造販売会社

本件両作品:

1 「月光仮面」第1部「どくろ仮面」篇(全71回)
2 「快傑ハリマオ」第5部「風雲のパゴダ」篇(全13回)

   --------------------

■結論

請求一部認容

   --------------------

■争点

条文 著作権法21条、26条、114条3項

1 被告はアートステーションから本件両作品の複製及び頒布に係る利用権を得たか
2 被告の故意・過失
3 損害論

   --------------------

■事案の概要

『テレビ映画の企画,製作及び販売並びに映像著作物の版権管理及び利用開発等を業とする原告が,CD・DVDの製造販売等を業とする被告において,故意又は過失により,原告から許諾を得ることなく,原告が著作権を有するテレビ映画作品「月光仮面」及び「快傑ハリマオ」をDVDに複製するとともに頒布することで原告の複製権及び頒布権を侵害したとして,被告に対し,著作権法112条1項に基づきDVD商品の複製及び頒布の差止めを求めるとともに,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求める事案』(2頁)

<経緯>

H18.12 原告とアートステーションがライセンス契約締結
        アートステーションが株式会社サイドエーにDVD製造を依頼
        アートステーションがDVDを被告に販売
        サイドエーが倒産、アートステーションが被告にDVD製造を依頼
        被告が製造費回収のためDVDを販売
H20.6  被告が本件両作品をDVDに複製、販売

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 被告はアートステーションから本件両作品の複製及び頒布に係る利用権を得たか

被告は、アートステーションに対して本件両作品を4万5000枚のDVDに複製して頒布する対価として、1枚当たり50円(消費税別)のロイヤリティを支払い、アートステーションから本件両作品のDVDへの複製とその頒布の許諾を得たのであって、アートステーションから本件両作品の複製及び頒布に係る利用権を得ていたと反論しました。
しかし、裁判所は、アートステーションと原告との間のライセンス契約(本件契約)3条1項により、本件両作品の複製及び頒布の再許諾を禁じられていたことから、被告がアートステーションとの間で締結したライセンス契約によっては本件両作品の複製及び頒布に係る利用権を得ていないと判断しています(7頁以下)。

   ------------------------------------

2 被告の故意・過失

原告が本件両作品について有する著作権(複製権及び頒布権)を侵害したことに関する被告の過失について、裁判所は、DVDの製造販売業界では、再許諾を認めるとライセンス対象物の管理や広告宣伝、パッケージの表示内容、品質管理が困難となるため、再許諾を禁じるのが通常であること、また、アートステーションは、被告との間でライセンス契約を締結した当時、資金繰りに窮しており、被告への製造費も支払えなかったという事実があることを前提に判断。
被告がDVDの製造販売業者としてライセンサーである原告に対してアートステーションへの再許諾権付与の有無を問い合わせたり、アートステーションに対してライセンス契約書を提示させたりしてアートステーションが再許諾権を有しているか確認すべき注意義務を負っていたものの、被告は問い合わせや提示をさせるといったことをしていないとして、被告の過失を認定しています(8頁以下)。

   ------------------------------------

3 損害論

(1)著作権法114条3項による損害額

52.5円(一枚当たりの利用料相当額)×1万4000枚=73万5000円

(2)弁護士費用 7万3500円

合計80万8500円の損害額が認定されています(9頁以下)。

結論として、損害賠償とともに本件各商品の複製及び頒布の差止めを認めています。

   --------------------

■コメント

テレビ映画作品「月光仮面」「快傑ハリマオ」のDVD製造販売サブライセンス契約に基づいサブライセンシーは製造販売したものの、実はそのサブライセンス契約上の再許諾権が裏付けのないものであったという事案です。
映像著作物のDVDパッケージ製造・販売の苦戦の様子が判決文から伺え、資金繰りの厳しさが伝わります。