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2011年09月24日

「中国の世界遺産」DVD事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「中国の世界遺産」DVD事件

東京地裁平成23.7.11平成21(ワ)10932損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      森川さつき

*裁判所サイト公表 2011.9.7
*キーワード:原版供給契約、映像利用許諾代理店契約、出版社、過失、翻案、消滅時効

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■事案

映像原版供給契約の前提となる利用許諾関係が欠けるとしてDVD制作販売に関して出版社の過失が肯定された事案

原告:中国中央電視台グループ映像制作会社(中国法人)
被告:出版社(日本法人)

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法27条、114条3項、民法709条、724条

1 本件各原版の著作権の帰属
2 本件各原版の利用許諾の有無
3 被告の過失の有無
4 消滅時効の成否
5 原告の損害額

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■事案の概要

『中国中央電視台(中華人民共和国の国営放送である。以下「CCTV」という。)のグループ会社で中華人民共和国法人である原告が,CCTVの放送用として製作された「中国世界自然文化遺産」と題する記録映画の著作権を有するとして,被告の製作・販売に係る「中国の世界遺産」と題するDVDが当該記録映画を複製又は翻案したものである旨主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として2500万円(附帯請求として不法行為開始月の翌月初日である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案』(2頁)

<経緯>

H12   原告と卓倫社が本件委託協議書締結
H14   「中国世界自然文化遺産」記録映画(本件原版)制作
H15.6 原告と卓倫社が本件基本個別協議書締結
      番組代理発行販売に関する意向協議書をGMG、卓倫社及び新天社が締結
H15.8 GMGと卓倫社が本件意向協議書を合意解除
H16.3 被告とプレシャス社(GMG代理)が原版供給契約締結
H16.9 被告が「中国の世界遺産」DVD制作販売
H17.7 原告、GMG及び卓倫社が本件終了協議書締結
H18.2 原告が被告に告知書送付
H21.4 原告が本件訴訟提起

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■判決内容

<争点>

1 本件各原版の著作権の帰属

契約関係の準拠法などを検討した上で、全7巻の記録映画(本件各原版)の制作を原告が外部映像制作会社に発注していたことや発行元表示、クレジット表示、また原告と発注先との間の制作委託に関する本件委託協議書の真正性などから、本件各原版の著作権の原告への帰属性について被告は反論をしましたが、結論としては、映画製作者としての原告への本件各原版の著作権の帰属が肯定されています(19頁以下)。

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2 本件各原版の利用許諾の有無

本件各原版の利用許諾関係について、裁判所は、原告が卓倫社に対して本件基本個別協議書により本件各原版の利用許諾の代理権限を授与しており、本件意向協議書によれば卓倫社は、GMGに対して本件各原版の利用許諾をするとともに本件マスターテープの利用権限を授与したと認めています。その上で平成15年8月12日に本件意向協議書が卓倫社とGMGとの間で合意解除され、GMGは原告に対してその旨通知しているとして、卓倫社が原告を代理して行ったGMGに対する本件各原版の利用許諾の効果は消滅したと判断。
結論として、GMGを代理したプレシャス社と被告は平成16年3月15日に本件原版供給契約を締結しましたが、その当時すでにGMGに本件各原版の利用権限がなかったとして被告の利用許諾権限取得を否定しています(22頁以下)。

結果として、被告各DVDは本件各原版を無権限で翻案したものとなり、被告は本件各原版の翻案権(著作権法27条)を侵害していると判断されています。

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3 被告の過失の有無

被告の過失について、裁判所は、被告が原告又は中国中央電視台に対してGMGやプレシャス社の利用許諾権限の確認などを行っていなかったとしてこれを肯定しています(29頁以下)。

この点、被告は、(1)DVD製作・編集作業に中国中央電視台の名刺を有しているDが立ち会っている、(2)利用許諾関係について逐一完全に確認しなければならないとなれば、円滑な著作物の利用を実現することは困難となる、(3)マスターテープを所持していること自体、権利者又は権利者から許諾を受けた者であることを示す重要な事実である、と反論しました。
しかし、(1)及び(3)の事実からはGMG又はプレシャス社の利用許諾権限が直ちに推認されるものではなく、(2)については、確認の為に取引コストの増大があったとしても甘受しなければならない事柄であるとして裁判所は被告の主張を容れていません。

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4 消滅時効の成否

裁判所は、原告が被告に通知した平成18年2月21日付け本件告知書の存在から、原告は遅くとも同日までには被告に対する賠償請求が事実上可能な状況の下にその可能な程度に損害及び加害者を知ったとした上で、消滅時効の成否を検討。平成16年から平成17年にかけての販売分については被告の消滅時効の抗弁を認め、平成18年8月17日被告第2巻100部販売についてのみ損害賠償請求を認めています(31頁以下)。

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5 原告の損害額

被告第2巻100部販売について、著作権法114条3項の利用料相当額として、

小売価格(税抜き)3800円×100本×25%=9万5000円

弁護士費用相当額1万円の合計10万5000円を損害額としています(33頁以下)。

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■コメント

映像の再販売代理店が、代理店契約が合意解除されたのに日本国内での再販売許諾をしてしまったという事実関係で、どうしてそんなことになってしまったのか、そのあたりの経緯は不明な部分です。

原告(著作権者)
 ↓
卓倫社(制作/販売代理店 中国法人)
 ↓
GMG(販売代理店 米国法人)ら
 ↓
プレシャス社(GMGの窓口日本法人)
 ↓
被告

被告出版社としては、「梯子をハズされた(ていた)」状況で、代理店側(GMGやプレシャス社)の責任といえばそれまでですが、訴訟の当事者となった場合、供給元との代理店契約についてもサブライセンシーの法務として許諾関係を契約書面や支払証票類で確認するなどしておかないと裁判所の過失判断からすると免責されないということになります。

written by ootsukahoumu at 09:38│TrackBack(0)知財判決速報2011 

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