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2011年03月22日

「生命の實相」書籍著作権事件−著作権 損害賠償等請求事件判決等(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「生命の實相」書籍著作権事件

東京地裁平成23.3.4平成21(ワ)6368損害賠償等請求事件等PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      大西勝滋
裁判官      上田真史

*裁判所サイト公表 2011.3.14
*キーワード:著作権譲渡、出版契約、印税、著作権表示、著作権登録、消滅時効、権利の濫用、死後の人格的利益の保護

平成21年(ワ)6368損害賠償等請求事件(第1事件)
平成21年(ワ)17073著作権侵害差止等請求事件(第2事件)
平成21年(ワ)41398出版権確認等請求事件(第3事件)

平成21年(ヨ)22079著作権仮処分命令申立事件(東京地裁平成23年3月4日決定)

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■事案

生長の家創始者谷口雅春氏(故人)の著作「生命の實相」に関する著作権の帰属や出版契約等を巡って争われた事案

第1事件原告・第2事件被告・第3事件被告:社会事業団
第1事件被告・第3事件原告:出版社
第2事件原告          :宗教法人
第2事件原告          :創始者実娘X
第2事件被告・第3事件被告:出版社

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■結論

請求一部認容(第1事件)、請求棄却(第2事件、第3事件)

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■争点

条文 著作権法61条、60条、79条、63条、民法723条

第1事件
1 原告社会事業団の設立による本件(1)の各書籍の著作権の移転の有無
2 本件(1)の各書籍についての著作権使用(出版)契約に基づく印税請求権の発生の有無
3 印税請求権の消滅時効の成否
4 謝罪広告掲載請求の可否等

第2事件
1 原告生長の家による本件(1)の書籍1及び本件(2)の書籍1の著作権の取得の有無等
2 亡Aの死後の人格的利益の侵害行為の有無
3 謝罪広告掲載請求の可否
4 本件(2)の各書籍2の著作権についての管理合意の有無

第3事件
1 本件(3)の各書籍についての出版権の設定の有無
2 解約の成否

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■事案の概要

[第1事件]
『財団法人である原告社会事業団が,(1)亡Aが戦前に創作した多数の著作物の集合体としての「生命の實相」の著作権は,亡Aが原告社会事業団の設立者として行った寄附行為の寄附財産であって,原告社会事業団に帰属しているところ,上記「生命の實相」に属する書籍をそれぞれ復刻した復刻版である別紙第1書籍目録1記載の書籍(以下「本件(1)の書籍1」という。)及び同目録2記載の書籍(以下「本件(1)の書籍2」といい,これと本件(1)の書籍1を併せて「本件(1)の各書籍」という。)について,被告日本教文社との間で著作権使用(出版)契約を締結したが,印税(著作権使用料)に未払がある,(2)本件(1)の書籍1の著作権者は原告社会事業団であるのに,被告日本教文社が原告社会事業団に無断で本件(1)の書籍1に真実と異なる著作権表示を行ったことが不法行為を構成するなどと主張して,被告日本教文社に対し,著作権使用(出版)契約に基づき,印税の支払を求めるとともに,民法723条に基づき,謝罪広告の掲載を求めた事案』

[第2事件]
『宗教法人である原告生長の家及び亡Aの遺族である原告Xが,(1)亡Aが戦前に創作した著作物である「生命の實相<黒布表紙版>」(全20巻)及び本件(1)の書籍1について,原告生長の家が,亡Aを相続した共同相続人から著作権(共有持分)の遺贈及び売買による譲渡を受けたから,当該著作権は原告生長の家に帰属する,(2)別紙第2書籍目録1記載の書籍(以下「本件(2)の書籍1」という。)は,第2事件被告ら(原告社会事業団及び被告光明思想社)が「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻として出版された「神道篇日本国の世界的使命」から「第1章古事記講義」を抜き出し,別の題号を付して共同で出版したものであるところ,第16巻は戦後に「生命の實相」として出版された書籍から亡Aによって削除されているから,第2事件被告らによる本件(2)の書籍1の出版は,原告生長の家の著作権(複製権)を侵害するとともに,亡Aが存命であればその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為(著作権法60条)に該当し,これにより亡Aの声望が害された,(3)原告生長の家と原告社会事業団は,別紙第2書籍目録2記載の各書籍(以下「本件(2)の各書籍2」と総称し,同目録2記載のそれぞれの書籍については,同目録2記載(1)の書籍を「本件(2)の書籍2(1)」,同目録2記載(2)の書籍を「本件(2)の書籍2(2)」などという。)について,原告生長の家がこれらの出版その他の利用の管理を決定する旨の合意をしたなどと主張し,原告生長の家及び原告Xにおいて原告社会事業団及び被告光明思想社に対し,著作権法112条1項,2項(原告Xにつき更に同法116条1項)に基づき,本件(2)の書籍1の出版等の差止め及び廃棄を,民法723条又は著作権法115条及び116条1項に基づき,別紙謝罪広告目録2記載の謝罪広告の掲載を,原告生長の家において原告社会事業団及び被告光明思想社に対し,不法行為に基づく損害賠償を,原告生長の家において原告社会事業団に対し,原告生長の家が本件(1)の書籍1の著作権を有することの確認を,上記合意に基づき,本件(2)の各書籍2について原告生長の家の承諾なく,その出版権の設定及び消滅を行うことの禁止を求めた事案』

[第3事件]
『被告日本教文社が,別紙第3書籍目録記載の各書籍(以下「本件(3)の各書籍」と総称し,同目録記載のそれぞれの書籍については,同目録1記載の書籍を「本件(3)の書籍1」,同目録2記載の書籍を「本件(3)の書籍2」などという。)について,原告社会事業団との間の出版契約に基づいて出版権の設定を受けたのに,原告社会事業団及び被告光明思想社が,被告日本教文社に無断で,本件(3)の書籍31ないし34について出版及び販売を行い,本件(3)の書籍1ないし15について出版を行うおそれがあるなどと主張して,原告社会事業団に対し,被告日本教文社が本件(3)の各書籍の出版権を有することの確認を,原告社会事業団及び被告光明思想社に対し,著作権法112条1項に基づき,本件(3)の書籍1ないし15,31ないし34の出版等の差止めを求めた事案』

<経緯>

S7  創始者Aが「生命の實相」初版刊行
S21 原告社会事業財団設立
S49 原告社会事業財団と被告出版社との間で出版契約締結
S57 被告出版社が復刻版刊行
S60 Aが死去
S63 亡Aから原告社会事業財団への著作権譲渡登録(第13279号)
H21 原告社会事業財団が被告出版社に対して出版契約解約の通知

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■判決内容

<争点>

[第1事件]

1 原告社会事業団の設立による本件(1)の各書籍の著作権の移転の有無

原告社会事業団と被告出版社(第2事件原告宗教法人の関連会社)との間の(題号)「生命の實相」に関する出版契約に基づく印税の未払い分の請求などの前提として、まず社会事業団に書籍の著作権が帰属しているかどうかが争点となっています(43頁以下)。

この点について裁判所は、著作者である創始者Aが社会事業団の設立者として寄附行為を行い、本書の著作権が基本資産とされていることなどから、Aから社会事業団に本書の著作権が移転していると認めています。

なお、基本資産となった「生命の實相」の著作権の対象範囲は、各種復刻版10書籍が含まれると判断されています(46頁以下)。

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2 本件(1)の各書籍についての著作権使用(出版)契約に基づく印税請求権の発生の有無

昭和49年に原告社会事業団と被告出版社との間で締結した本書を出版するための独占的排他的使用権設定契約(著作権使用(出版)契約。定価の10%を印税とする)に基づき、被告出版社は原告社会事業団に対して印税の支払い義務を負っていると判断されています(55頁以下)。
未払額合計2740万円のうち、2690万円について消滅時効の予備的主張があり、さらに進んで判断がされています。

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3 印税請求権の消滅時効の成否

印税の支払い請求権が商事債権にあたることから(商法502条6号)、その消滅時効期間である5年(522条)が経過したものについては、被告出版社により消滅時効が援用されています(60頁以下)。
結論として、未払額2740万円のうち、消滅時効援用部分2690万円は時効により消滅したものとして、印税請求は50万円の限度で認められています。

なお、原告社会事業団は、被告出版社による消滅時効の援用は信義則に反し、権利の濫用にあたり許されないと反論しましたが、認められていません。

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4 謝罪広告掲載請求の可否等

被告出版社が奥付の著作権表示を原告社会事業団に無断で社会事業団からXらに変更した点について、原告社会事業団は被告出版社の行為は不法行為を構成するとして謝罪広告の掲載を求めました(62頁以下)。

この点について、裁判所は、出版社は著作権者の表示につき正しい表示をすべき注意義務が出版契約における契約上の付随的な義務として生じることなどから被告出版社の行為は債務不履行を構成するとともに、原告社会事業団の法律上保護に値する利益を侵害する不法行為を構成すると判断しています。
もっとも、著作権表示が正しくされていないことが、直ちに著作権者の社会的評価を低下するものとはいえないとして、結論としては民法723条に基づく謝罪広告掲載請求は認められていません。

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[第2事件]

1 原告生長の家による本件(1)の書籍1及び本件(2)の書籍1の著作権の取得の有無等

第2事件では、原告宗教法人は、亡Aの死亡に伴う相続により本書の著作権を取得した亡Aの相続人から遺贈及び売買によりこれらの著作権を取得したと主張しました。
結論として、原告宗教法人の主張は、認められていません(65頁以下)。

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2 亡Aの死後の人格的利益の侵害行為の有無

亡Aの実娘である原告Xは、原告社会事業団らが亡Aの死亡後、原告社会事業団らが亡Aの著書「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻として出版された「神道篇日本国の世界的使命」から「第1章古事記講義」を抜き出し、別の題号である「古事記と日本国の世界的使命−甦る『生命の實相』神道篇」を付して共同で出版した点について、第16巻は戦後に「生命の實相」として出版された書籍から亡Aによって削除され、その出版を許さなかった著作物であるから原告社会事業団らによる本件(2)の書籍1の出版は著作者である亡Aが存命であればその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に該当し、亡Aの意を害するものであるとして著作権法60条に違反する旨主張しました(66頁以下)。

結論としては、亡Aの意を害しない(著作権法60条但書)ものとして、Xの主張は容れられていません。

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3 謝罪広告掲載請求の可否

争点2で出版行為が亡Aの意を害しないことなどから、それらの点に関する謝罪広告掲載請求は認められていません(69頁以下)。

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4 本件(2)の各書籍2の著作権についての管理合意の有無

別紙第2書籍目録2にある37点の書籍の利用管理に関する合意が昭和63年に原告宗教法人と原告社会事業団の間にあったと原告宗教法人より主張されましたが、裁判所に容れられていません(70頁以下)。

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[第3事件]

1 本件(3)の各書籍についての出版権の設定の有無

別紙第3書籍目録中の書籍について、原告宗教法人が一元的に管理し、被告出版社がその指示の下にその出版を行うことなどが原告社会事業団と合意されていたこと、そして当該合意に基づき独占的排他的な出版権設定契約(昭和63年以降の本件各出版使用許諾契約)が締結されていることを理由に被告出版社は、出版権の確認と原告社会事業団側出版社らに対して出版等の差止めを求めました(75頁)。

結論としては、上記合意の存在は認められず、また本件各出版使用許諾契約は著作権法79条に基づく出版権設定契約ではなく、63条に基づく利用許諾契約にすぎず独占的排他的なものであるとはいえないとして、出版権確認請求及び出版等の差止請求は認められないと判断しています。

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2 解約の成否

著作権使用(出版)契約書(昭和49年契約書)に基づく原告社会事業団による解約について、昭和49年契約の被告出版社の印税未払いの債務不履行による原告社会事業団の解約が認められおり、被告出版社による昭和49年契約に基づく出版権確認請求等は認められていません(77頁以下)。

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■コメント

生長の家創始者である谷口雅春氏(故人)の著作「生命の實相」などの著作権が、谷口氏が設立に関与した社会事業団に帰属するのか、宗教法人に帰属するのかが争われていて、原被告のサイトを拝見すると宗教団体の内紛の様相を呈していることが分かります。
聖典は総裁の意向を尊重して取り扱われていたという経緯は十分理解できるところですが(74頁)、法的な管理権限を突き詰めていくと、教団の聖典となる著作物の著作権が現総裁や教団側のコントロール下にない結果となり、重大な事態となっています。

なお、文化庁の登録状況検索では、著作者谷口雅春氏の名前で検索をすると、昭和63年の4月と5月に行われた35件の登録が確認できます。

文化庁登録検索 検索

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■参考サイト

宗教法人生長の家(平成23年3月15日リリース)
生長の家社会事業団等との訴訟について - ニュースリリース - 生長の家

日本教文社(平成23年3月16日リリース)
生長の家社会事業団等との訴訟について

生長の家社会事業団
生長の家社会事業団の護法の運動

株式会社光明思想社(平成23年3月13日リリース)
光明思想社全面勝訴のお知らせ

仮処分(東京地裁平成23年3月4日決定)
平成21年(ヨ)22079著作権仮処分命令申立事件

written by ootsukahoumu at 09:53│TrackBack(0)知財判決速報2011 

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