Tweet

2010年11月15日

「SL世界の車窓」DVD事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「SL世界の車窓」DVD事件(控訴審)

知財高裁平成22.11.10平成22(ネ)10046損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      本多知成
裁判官      荒井章光

*裁判所サイト公表 2010.11.11
*キーワード:複製権、著作者人格権、損害論

   --------------------

■事案

百円ショップで販売されたSL鉄道映像のDVD販売等の著作権侵害性が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人)     :写真家
被告(被控訴人)   :百円ショップ流通業者
被控訴人補助参加人:テレビ番組映像制作会社

   --------------------

■結論

一部変更

   --------------------

■争点

条文 著作権法21条、18条、19条、20条、114条3項、民法722条

1 控訴人から補助参加人に対する本件映像の著作権の譲渡又は本件映像の利用許諾等の有無
2 被控訴人の故意又は過失の有無
3 過失相殺
4 控訴人の損害の発生及びその額

   --------------------

■事案の概要

『世界各地の蒸気機関車(SL)の映像を本件DVテープに撮影した本件映像の著作権者である控訴人が,被控訴人において,オスカ企画が控訴人に無断で本件映像を編集して作成した本件作品1及び2について,被控訴人補助参加人(以下,単に「補助参加人」といい,被控訴人と併せて,「被控訴人等」ということがある。)との間でDVD化に関する契約を締結した博美堂から,本件DVDを買い受けてこれを販売したことにつき,被控訴人に対し,(1)本件映像についての著作者人格権(同一性保持権)の侵害を理由とする,著作権法112条に基づく本件DVDの頒布等の差止め及び廃棄,(2)本件映像についての著作権(複製権)及び著作者人格権(公表権,氏名表示権及び同一性保持権)の侵害を理由とする,財産的損害4000万円(主位的には,逸失利益相当額。予備的には,著作権法114条3項に基づく損害額),精神的損害500万円及び弁護士費用450万円,以上合計4950万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年12月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁以下)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 控訴人から補助参加人に対する本件映像の著作権の譲渡又は本件映像の利用許諾等の有無

原審では、原告(控訴人)が本件映像の著作権を放棄したり、若しくは映像制作会社に著作権を譲渡することについて黙示的に合意したり、又は本件映像を利用することを黙示的に許諾していたとは認められないと判断。結論として、映像制作会社(被控訴人補助参加人)の本件DVDの作成や百円ショップ小売業者(被控訴人)の販売行為は、複製権(著作権法21条)、公表権(18条)、氏名表示権(19条)、同一性保持権(20条)を侵害に当たるとしていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています(16頁)。

   --------------------

2 被控訴人の故意又は過失の有無

百円ショップ小売業者である被告(被控訴人)において、本件DVDに関する著作権の帰属やその処理について確認した形跡が認められないとして、本件映像の著作権及び著作者人格権侵害について被告の過失が認められた原審の判断が維持されています(16頁以下)。

   --------------------

3 過失相殺

原審では、放送番組制作企画段階での原告の対応(本件DVテープを保管させたまま特段の連絡等もしなかった)について、原告の過失が認められ、過失相殺として原告の損害額の1割が減じられていました。
控訴審では、原告の対応について「いささか常識に欠けるものであった」と認めたものの、原告の許諾を得ないままに本件DVDを制作したことが是認される余地はないとして、原審に反して過失相殺に関する被控訴人等の主張は採用されていません(17頁以下)。

   --------------------

4 控訴人の損害の発生及びその額

(1)財産的損害

主位的主張となる逸失利益について、原告は本件映像に関する別のDVD制作販売会社とのライセンス交渉の経緯を踏まえて損害額を算定しましたが、原審では原告主張の著作権料の合意がこの会社と具体的に成立していたとは認めることはできないと判断。こうした合意の成立を前提とする原告の逸失利益の主張を容れていませんでしたが、控訴審でも同様の結論となっています(19頁以下)。

著作権法114条3項(使用料相当額)に基づく予備的主張については、DVD1枚の販売価格の点は低廉な価格(315円)ではなく、4000円と判断しており原審と同様ですが、著作権料相当額は8%から5%に低下。もっとも、枚数は販売枚数ではなく、複製権侵害が生じている納品枚数であるとして増加して算定されています。

【原審】
4000円(1枚の販売価格)×6581枚(販売枚数)×8%(著作権料率)=210万5920円

【控訴審】
4000円(1枚の販売価格)×9984枚(納品枚数)×5%(著作権料率)=199万6800円

(2)精神的損害

原審と同様、著作者人格権を侵害したことに対する慰謝料として、100万円が認められています(24頁以下)

(3)弁護士費用

認定された著作権料相当額及び慰謝料の約1割に相当する30万円が相当であると判断されています(26頁)。

以上、合計で329万6800円となっています。

   --------------------

■コメント

損害論について、控訴審では原審とは異なり過失相殺が認められず、また著作権料率や算定の基礎となるDVD枚数の判断に違いがあります。結局、原審では損害額は合計して307万5328円でしたので、控訴審で僅かに増額したにとどまりました。

   --------------------

■過去のブログ記事

2010.5.14記事(原審)
「SL世界の車窓」DVD事件

  --------------------

■参考文献

寒河江孝允監修、永野周志・矢野敏樹編『知的財産権訴訟における損害賠償額算定の実務』(2008)179頁以下、327頁以下
written by ootsukahoumu at 08:23│TrackBack(1)知財判決速報2010 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

  ★ スペシャル特典1   メールサポート3回分   「信頼して相談できるか...