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2010年11月09日

ペ・ヨンジュン雑誌出版事件−パブリシティ権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ペ・ヨンジュン雑誌出版事件

東京地裁平成22.10.21平成21(ワ)4331損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      山門優
裁判官      小川卓逸

*裁判所サイト公表 2010.11.4
*キーワード: パブリシティ権、肖像権、出版、包括許諾

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■事案

ペ・ヨンジュンの氏名や写真等を利用した雑誌出版のパブリシティ権侵害性が争点となった事案

原告:ペ・ヨンジュン
被告:出版社ら

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 民法709条、719条、著作権法114条2項、3項

1 原告のパブリシティ権侵害の有無
2 原告の許諾の有無
3 原告の損害

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■事案の概要

『著名な韓国人俳優である原告が,後記本件雑誌(『ぺ・ヨンジュン来日特報It’s KOREAL 7月号増刊』)の,それぞれ,出版社,編集発行人(出版社の代表取締役)及び編集者である被告らに対し,原告の写真等が多数掲載された本件雑誌を出版,販売した被告らの行為は原告のいわゆる「パブリシティ権」を侵害するものであると主張して,不法行為に基づく損害賠償金及びその遅延損害金の支払を求めた事案』(2頁)

<経緯>

H15   日本で「冬のソナタ」がテレビ放映
H17   被告会社が雑誌「It’s KOREAL」刊行
H20.5 原告が来日
H20.6 被告会社が本件雑誌(7月号増刊)を刊行
H21.2 本訴提起

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■判決内容

<争点>

1 原告のパブリシティ権侵害の有無

(1)パブリシティ権の意義

パブリシティ権の意義について裁判所は、

『著名人の氏名,肖像は,顧客誘引力を有し,経済的利益,価値を生み出すものであるということができるのであり,著名人は,人格権に由来する権利として,このような経済的利益,価値を排他的に支配する権利(以下「パブリシティ権」という。)を有すると解するのが相当である』(15頁以下)

としてパブリシティ権の保護を認めたうえで、言論、出版、報道等の表現の自由との比較衡量から、

『著名人の氏名,肖像を使用する行為が当該著名人のパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該著名人の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断するのが相当である』

と説示しています。

(2)原告のパブリシティ権

原告は「ヨン様」ブームとして一種の社会現象と化しているほど絶大な人気があり、各種商品に肖像が使用されているとして、原告の氏名、肖像は強い顧客誘引力を有しており、原告はパブリシティ権を有すると裁判所は判断しています(16頁以下)。

(3)本件雑誌における原告写真の掲載態様

・全体的な構成:原告の来日の際の活動を紹介を中心とし、そのすべてを原告の氏名、写真、関連記事、関連広告で占めている体裁
・表表紙及び裏表紙:いずれにも原告の写真が使用、表表紙には原告の氏名大書
・本文部分:グラビア部分と記事の分量
・広告部分:原告関連番組及び原告関連商品の広告が掲載

(4)本件へのあてはめ

本件雑誌は、原告の氏名及び肖像写真を利用して購入者の視覚に訴える構成となっており、また、多くの頁で原告の肖像を独立して鑑賞の対象とすることができること、さらに、上質の光沢紙を使用したカラーグラビア印刷の雑誌であることも踏まえ、原告写真の利用態様は、原告の顧客誘引力に着目して専らその利用を目的とするものであるとして、パブリシティ権侵害が認められています(21頁以下)。

なお、本件雑誌の編集発行人である被告代表取締役Bと編集人である被告Cも原告に対して共同不法行為責任(民法719条)を負うと判断されています(23頁)。

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2 原告の許諾の有無

本件雑誌編集人Cが平成20年5月に日本における原告のマネジメント業務を遂行しているビーオーエフインターナショナル株式会社
の担当者Dに対して本件雑誌の企画書を送り検討を依頼していました。
被告側は、Dとの電話での応答により原告から写真の利用について包括的な許諾を得た旨主張しましたが、裁判所は認めていません(23頁以下)。

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3 原告の損害

本件雑誌は、単価580円で販売部数は4万1275冊、他社とのカレンダー商品でのライセンス契約許諾料などを総合的に考慮して400万円の損害額が認定されています(24頁以下)。そのほか、弁護士費用として40万円が認められていますが、慰謝料は認められていません。

なお、原告は、損害額の立証について著作権法114条2項(被告の得た利益)ないし3項(使用料相当額)の類推適用を主張しましたが、パブリシティ権と著作財産権との異質性から裁判所に容れられていません。

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■コメント

平成20年にドラマ「太王四神記」のプロモーション活動で来日した際にペ・ヨンジュン特集号として刊行されたカラーグラビア雑誌が問題となりました。

1162607-086

表紙を見てみると、「独占!どこよりも早い!! 3年ぶりの来日に密着」「ペ・ヨンジュン 来日特報」「完全追跡 大阪・名古屋・東京・横浜」となっていてまさにペ・ヨンジュンをウリにした雑誌となっています。

パブリシティ権侵害の判断基準については、「専ら」(キング・クリムゾン事件控訴審、中田英寿事件一審、ブブカスペシャル7事件一審)とか「商業的利用」(ブブカスペシャル7事件控訴審)、また、「(相関関係的)利益較量」(ピンクレディーダイエット事件控訴審)などのキーワードが用いられていますが(後掲斉藤資料参照)、本件では「専ら」基準を用いながら、ただ、「専ら」の意味合いについても触れられている点(ピンクレディー事件でも触れられていますが)が裁判例として参考になります(16頁)。

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■過去のブログ記事

2009年8月29日
ピンク・レディーパブリシティ権侵害事件(控訴審)

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■参考文献

斉藤浩貴「書籍・雑誌の出版とパブリシティ権―「ピンク・レディー」ダイエット事件―」(2010年10月29日著作権法学会判例研究会資料)
北村二朗 「芸能人の肖像写真が雑誌の記事に利用された場合のパブリシティ権 侵害の成否−ピンクレディー・パブリシティ事件−」『知的財産法政策学研究』25号(2009)301頁以下
多元分散型統御を目指す新世代法政策学:知的財産法政策学研究25号
内藤 篤「パブリシティ権の侵害判断 ブブカスペシャル7事件:控訴審」『著作権判例百選第4版』(2009)180頁以下
大家重夫『肖像権新版』(2007)168頁以下

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■参考サイト

国内マネジメント会社 プレスリリースPDF(2009年4月2日)
ビーオーエフインターナショナル株式会社「株式会社オークラ出版等に対する訴訟提起について」

written by ootsukahoumu at 07:46│TrackBack(0)知財判決速報2010 

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