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2010年08月05日

女子プロレスCS放送事件−著作権 報酬金請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

女子プロレスCS放送事件

東京地裁平成22.7.30平成20(ワ)34464報酬金請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      大西勝滋
裁判官      石神有吾

*裁判所サイト公表 2010.8.3
*キーワード:実演家報酬請求権、ライセンス契約

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■事案

女子プロレスの映像素材の利用について無償提供の合意があったかどうかが争点となった事案

原告:写真集制作業者
被告:フジテレビ、スカパー

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法94条2項、民法423条1項

1 本件各映像素材の無償の放送利用の合意の成否

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■事案の概要

『全日本女子プロレス興業株式会社(以下「全女」という。)に対して前払金返還請求権を有する債権者である原告が,全女との間の放送契約に基づき,全女が主催した女子プロレス興行を中継するテレビ番組を制作し,これを地上波で放送した被告株式会社フジテレビジョン(以下「被告フジテレビ」という。)及び上記番組を収録した映像素材(録画物)を編集して通信衛星デジタル放送(通信衛星(CS)を利用したデジタル放送。以下「CS放送」という。)をした被告株式会社スカパー・ブロードキャスティング(以下「被告スカパー」という。)に対し,(1)全女は被告フジテレビとの間の放送契約において上記女子プロレス興行を地上波で放送することを許諾したが,CS放送することについては許諾していない,(2)女子プロレス興行は女子レスラーによる実演(著作権法2条1項3号)に当たり,全女は実演家である女子レスラーから実演家の放送権(著作権法92条1項)及び報酬請求権の包括的譲渡を受けていたところ,被告スカパーによる上記番組のCS放送は,実演を地上波で放送することの許諾を得た被告フジテレビから録画物の提供を受けてする放送(著作権法94条1項2号)に当たるから,当該実演がCS放送されたことに基づいて実演家の被告フジテレビに対する著作権法94条2項所定の相当な額の報酬請求権が発生し,これが全女に帰属するなどと主張し,民法423条1項の債権者代位権に基づき,全女に代位して,被告らに対し,女子レスラーの実演がCS放送されたことに基づく著作権法94条2項所定の相当な額の報酬請求(被告スカパーに対しては被告フジテレビの報酬支払債務の併存的債務引受に基づく。)又は全女が有する女子プロレス興行の興行権の内容を構成する「放送許諾権」侵害の共同不法行為による損害賠償(被告フジテレビにおいては放送契約の債務不履行に基づく損害賠償を含む。)として160万円及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案』(2頁以下)

<経緯>

H14.3 フジテレビでの女子プロレス興行の地上波放送終了
H14.3 全女とサムライTVがCS放送に関する基本契約締結
H15.4 サムライTVがフジテレビの映像素材をCS放送
H17.1 全女と原告が写真集及びDVD出演契約締結、前払金160万円を全女に支払い
H17.4 全女が興行活動停止
H20.8 原告が全女に対して債務不履行解除
H20.10スカパーがサムライTVを吸収合併
       原告が全女に返還請求訴訟提訴、請求認容

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■判決内容

<争点>

1 本件各映像素材の無償の放送利用の合意の成否

女子プロレスラーBの写真集やDVDへの出演契約が不履行解除され、また全日本女子プロレス興行(全女)が無資力となったことから、写真集制作業者(原告)は全女に対する前払金160万円の返還請求権を被保全債権として、全女の放送会社に対する報酬請求権に代位して放送会社らに請求しました。
原告は、全女は被告フジテレビとの間の放送契約において女子プロレス興行を地上波で放送することを許諾したものの、CS放送することについては許諾していないなどとして、全女保有の女子プロレスラーの実演家報酬請求権(著作権法94条2項)の存在を根拠に代位請求を行いました(17頁以下)。

これに対し、被告らは、被告フジテレビが保管している全女主催の過去の女子プロレス興行を中継した映像素材(テープ)を利用してCS放送することについて、全女側と無償とする旨の合意があったと反論しました。

無償提供の合意の成否について、裁判所は、契約書その他の書面がないものの、証人(全女の渉外業務担当者)の供述から、
(1)女子プロレスの人気が低迷しており、過去作品を放送することで人気回復につながる
(2)テープの維持費や保管費等は放送会社側で負担する
という無償での提供の交渉内容、また、
(3)CS放送後、全女から何らかの異議が述べられるなどしたという経緯が認められない

ということから、全女と放送会社との間で映像素材の無償提供の合意があったと認定しています。

結論として、実演家(女子プロレスラー)の報酬請求権は発生せず、また、被告らの行為が不法行為等にあたることもないとして原告の主張を否定しています。

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■コメント

平成17年に解散興行を後楽園ホールで行って興行活動を停止した全日本女子プロレス興行(全女)は無資力であったことから、写真集制作業者は契約前払金160万円の返還請求権を被保全債権として、全女の権利に代位して放送会社らに請求しましたが、この代位債権の成立自体が認められなかった事案です。

ビューティ・ペア(ジャッキー佐藤、マキ上田)など懐かしい名前も出てきて(18頁)、当時の女子プロレスブームを思い出します。

written by ootsukahoumu at 10:19│TrackBack(0)知財判決速報2010 

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