最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
電話占い営業秘密事件
大阪地裁平成22.6.8平成20(ワ)7756等不正競争行為差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 北岡裕章
裁判官 山下隼人
*裁判所サイト公表 2010.6.23
*キーワード:営業秘密、不正取得行為、占い、業務請負契約
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■事案
電話占い業における顧客名簿の営業秘密性や持ち出し行為の不正競争行為性が争点となった事案
原告:電話占い業会社
被告:占い鑑定者ら
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■結論
第1事件:請求棄却/第2事件:一部認容
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■争点
条文 不正競争防止法2条6項、2条1項5号、6号、8号、9号
1 本件顧客情報が営業秘密に該当するか
2 HER−BER−SUらによる不正競争行為の有無
3 被告らによる不正競争行為の有無
4 原被告間の業務請負契約の成否及びその内容
5 被告らの契約違反の有無
6 原告の被告Aに対する鑑定料の未払額
7 被告Aが原告に自己の写真の返還を求められるか
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■事案の概要
第1事件
「第1事件は,電話占い業を営む原告が,(1)原告の受付業務等に従事していた分離前第1事件被告E及び原告と業務請負契約を締結して原告の顧客に対して電話による占い鑑定をしていた被告らが共謀して,Eにおいて不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」に該当する原告の顧客情報(別紙営業秘密目録記載の情報,以下「本件顧客情報」という。)を持ち出した上,Eが代表を務める分離前第1事件被告HER−BER−SU合同会社(以下「HER−BER−SU」という。)が本件顧客情報を用いて電話占い業を営み,被告らもHER−BER−SUと業務請負契約を締結してHER−BERSUの顧客に対して電話による占い鑑定をしているとして,被告らに対し,不正競争防止法3条(2条1項5号,6号,8号又は9号)に基づき,本件顧客情報を用いた営業の差止め及び本件顧客情報が記録された記録媒体等の廃棄を求め,(2)被告らが原告との間の業務請負契約上の顧客接触・顧客情報漏洩禁止義務,相互連絡禁止義務及び引抜禁止義務に違反したとして,被告らに対し,業務請負契約で定められた違約金各200万円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日(被告A及び被告Bは平成20年6月30日,被告C及び被告Dは平成20年7月2日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに,被告Aに対し,予備的に,200万円の違約金請求債権と第2事件における被告Aの原告に対する16万9860円の未払鑑定料請求債権とを相殺した残額である183万0140円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日である平成20年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案」
第2事件
「第2事件は,原告と電話占い鑑定に関する業務請負契約を締結していた被告Aが,原告に対し,(1)業務請負契約に基づき,未払鑑定料16万9860円及びこれに対する第2事件の訴状送達の日の翌日である平成20年3月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)原告との業務請負契約が終了したとして,ホームページ掲載用に原告に交付した写真の返還を求める事案」(3頁以下)
<経緯>
H12 原告代表者が「フリーダム」で電話占い業開始
H13 被告B、Cがフリーダムの顧客の鑑定に従事
H14 原告会社設立
H14 被告Dが原告の顧客の占い鑑定に従事
H18 被告Aが原告の顧客の占い鑑定に従事
H19 HER−BER−SU合同会社設立
H19 被告らがHER−BER−SUの顧客の鑑定に従事
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■判決内容
<争点>
1 本件顧客情報が営業秘密に該当するか
原告は、顧客情報を専用の顧客情報管理ソフトを導入して管理していました。本件顧客情報の営業秘密性(2条6項)について、
(1)秘密管理性
・スタッフが閲覧すること自体は制限されず
・閲覧できたスタッフは6名程度
・ソフトを起動するためのPWは一部のスタッフのみ
・データのコピーやプリントアウトは困難
・DM用のタックシールの管理も施錠、ノート記載管理
・情報流出の際の高額の違約金規定がある業務請負契約の締結
以上の事情から、スタッフあるいは占い師は、原告が顧客情報を他の情報とは区別して秘密として管理していたと十分に認識することができたとして、秘密管理性を肯定しています(15頁以下)。
(2)有用性
(3)非公知性
秘密管理性の他、有用性、非公知性も肯定され、本件顧客情報の「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)該当性が認められています。
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2 HER−BER−SUらによる不正競争行為の有無
原告会社を退社したE(分離前被告)は、HER−BER−SU社(分離前被告)を立ち上げ、競業関係になる電話占い業を行っていました。
Eが、DM作成作業等に従事していたこと、HER−BER−SU社の顧客89名のうち、61名が原告顧客と一致すること、会社立ち上げの時期などから、Eの行為は、保有営業秘密の不正開示行為(2条1項7号)に該当していると判断。また、Eから顧客情報を開示されたHER−BER−SU社の勧誘等の行為は、不正開示行為の悪意者の使用行為(同項8号)に該当するとしています(20頁以下)。
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3 被告らによる不正競争行為の有無
原告は、被告らがEと共謀してHER−BER−SU社を立ち上げ、顧客情報を無断持ち出しして利用していると主張しました(23頁以下)。
しかし、被告らとEとの共謀の事実が認められず、また、DMの送付はHER−BER−SU社が行っており、被告らは占い鑑定をしているだけであって、HER−BER−SU社と被告らを一体として捉えて被告らが顧客情報を使用しているとするのは相当でないと裁判所は判断。
結論として、被告らの不正競争行為性(2条1項5号、6号、8号、9号)を否定してます。
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4 原被告間の業務請負契約の成否及びその内容
原告と被告との間での業務請負契約の成否とその内容について一部疑義がありましたが、契約の成立等が認められています(26頁以下)。
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5 被告らの契約違反の有無
請負業務契約上、以下の4つの義務が規定されていました。
(1)顧客接触禁止義務
(2)情報漏洩禁止義務
(3)相互連絡禁止義務
(4)引抜禁止義務
裁判所は、違約金の対象は、(1)(2)(4)の義務についてであるとしたうえで、各義務違反の有無を検討。
結論としては、被告らに義務違反はないと判断されています(30頁以下)。
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6 原告の被告Aに対する鑑定料の未払額
第2事件について、原告の被告Aに対する鑑定料の未払い金16万9860円を認定しています(38頁以下)。
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7 被告Aが原告に自己の写真の返還を求められるか
請負業務契約終了に伴うHP掲載用の写真の返還について、写真の所有権などに関する主張立証が尽くされていないとして、被告Aの返還請求は認められていません(39頁)。
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■コメント
占いの市場はそこそこ動いている印象で、わたしも占い業者の契約書や利用規約(モバイルコンテンツ、ゲーム、占い流派フランチャイズ契約など)を取扱うことがあります。
占い師の移籍や顧客への私的接触など、会社としては課題山積のようですが、現実問題として対応が難しいものがあります。
電話占い営業秘密事件
大阪地裁平成22.6.8平成20(ワ)7756等不正競争行為差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 北岡裕章
裁判官 山下隼人
*裁判所サイト公表 2010.6.23
*キーワード:営業秘密、不正取得行為、占い、業務請負契約
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■事案
電話占い業における顧客名簿の営業秘密性や持ち出し行為の不正競争行為性が争点となった事案
原告:電話占い業会社
被告:占い鑑定者ら
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■結論
第1事件:請求棄却/第2事件:一部認容
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■争点
条文 不正競争防止法2条6項、2条1項5号、6号、8号、9号
1 本件顧客情報が営業秘密に該当するか
2 HER−BER−SUらによる不正競争行為の有無
3 被告らによる不正競争行為の有無
4 原被告間の業務請負契約の成否及びその内容
5 被告らの契約違反の有無
6 原告の被告Aに対する鑑定料の未払額
7 被告Aが原告に自己の写真の返還を求められるか
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■事案の概要
第1事件
「第1事件は,電話占い業を営む原告が,(1)原告の受付業務等に従事していた分離前第1事件被告E及び原告と業務請負契約を締結して原告の顧客に対して電話による占い鑑定をしていた被告らが共謀して,Eにおいて不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」に該当する原告の顧客情報(別紙営業秘密目録記載の情報,以下「本件顧客情報」という。)を持ち出した上,Eが代表を務める分離前第1事件被告HER−BER−SU合同会社(以下「HER−BER−SU」という。)が本件顧客情報を用いて電話占い業を営み,被告らもHER−BER−SUと業務請負契約を締結してHER−BERSUの顧客に対して電話による占い鑑定をしているとして,被告らに対し,不正競争防止法3条(2条1項5号,6号,8号又は9号)に基づき,本件顧客情報を用いた営業の差止め及び本件顧客情報が記録された記録媒体等の廃棄を求め,(2)被告らが原告との間の業務請負契約上の顧客接触・顧客情報漏洩禁止義務,相互連絡禁止義務及び引抜禁止義務に違反したとして,被告らに対し,業務請負契約で定められた違約金各200万円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日(被告A及び被告Bは平成20年6月30日,被告C及び被告Dは平成20年7月2日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに,被告Aに対し,予備的に,200万円の違約金請求債権と第2事件における被告Aの原告に対する16万9860円の未払鑑定料請求債権とを相殺した残額である183万0140円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日である平成20年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案」
第2事件
「第2事件は,原告と電話占い鑑定に関する業務請負契約を締結していた被告Aが,原告に対し,(1)業務請負契約に基づき,未払鑑定料16万9860円及びこれに対する第2事件の訴状送達の日の翌日である平成20年3月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)原告との業務請負契約が終了したとして,ホームページ掲載用に原告に交付した写真の返還を求める事案」(3頁以下)
<経緯>
H12 原告代表者が「フリーダム」で電話占い業開始
H13 被告B、Cがフリーダムの顧客の鑑定に従事
H14 原告会社設立
H14 被告Dが原告の顧客の占い鑑定に従事
H18 被告Aが原告の顧客の占い鑑定に従事
H19 HER−BER−SU合同会社設立
H19 被告らがHER−BER−SUの顧客の鑑定に従事
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■判決内容
<争点>
1 本件顧客情報が営業秘密に該当するか
原告は、顧客情報を専用の顧客情報管理ソフトを導入して管理していました。本件顧客情報の営業秘密性(2条6項)について、
(1)秘密管理性
・スタッフが閲覧すること自体は制限されず
・閲覧できたスタッフは6名程度
・ソフトを起動するためのPWは一部のスタッフのみ
・データのコピーやプリントアウトは困難
・DM用のタックシールの管理も施錠、ノート記載管理
・情報流出の際の高額の違約金規定がある業務請負契約の締結
以上の事情から、スタッフあるいは占い師は、原告が顧客情報を他の情報とは区別して秘密として管理していたと十分に認識することができたとして、秘密管理性を肯定しています(15頁以下)。
(2)有用性
(3)非公知性
秘密管理性の他、有用性、非公知性も肯定され、本件顧客情報の「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)該当性が認められています。
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2 HER−BER−SUらによる不正競争行為の有無
原告会社を退社したE(分離前被告)は、HER−BER−SU社(分離前被告)を立ち上げ、競業関係になる電話占い業を行っていました。
Eが、DM作成作業等に従事していたこと、HER−BER−SU社の顧客89名のうち、61名が原告顧客と一致すること、会社立ち上げの時期などから、Eの行為は、保有営業秘密の不正開示行為(2条1項7号)に該当していると判断。また、Eから顧客情報を開示されたHER−BER−SU社の勧誘等の行為は、不正開示行為の悪意者の使用行為(同項8号)に該当するとしています(20頁以下)。
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3 被告らによる不正競争行為の有無
原告は、被告らがEと共謀してHER−BER−SU社を立ち上げ、顧客情報を無断持ち出しして利用していると主張しました(23頁以下)。
しかし、被告らとEとの共謀の事実が認められず、また、DMの送付はHER−BER−SU社が行っており、被告らは占い鑑定をしているだけであって、HER−BER−SU社と被告らを一体として捉えて被告らが顧客情報を使用しているとするのは相当でないと裁判所は判断。
結論として、被告らの不正競争行為性(2条1項5号、6号、8号、9号)を否定してます。
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4 原被告間の業務請負契約の成否及びその内容
原告と被告との間での業務請負契約の成否とその内容について一部疑義がありましたが、契約の成立等が認められています(26頁以下)。
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5 被告らの契約違反の有無
請負業務契約上、以下の4つの義務が規定されていました。
(1)顧客接触禁止義務
(2)情報漏洩禁止義務
(3)相互連絡禁止義務
(4)引抜禁止義務
裁判所は、違約金の対象は、(1)(2)(4)の義務についてであるとしたうえで、各義務違反の有無を検討。
結論としては、被告らに義務違反はないと判断されています(30頁以下)。
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6 原告の被告Aに対する鑑定料の未払額
第2事件について、原告の被告Aに対する鑑定料の未払い金16万9860円を認定しています(38頁以下)。
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7 被告Aが原告に自己の写真の返還を求められるか
請負業務契約終了に伴うHP掲載用の写真の返還について、写真の所有権などに関する主張立証が尽くされていないとして、被告Aの返還請求は認められていません(39頁)。
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■コメント
占いの市場はそこそこ動いている印象で、わたしも占い業者の契約書や利用規約(モバイルコンテンツ、ゲーム、占い流派フランチャイズ契約など)を取扱うことがあります。
占い師の移籍や顧客への私的接触など、会社としては課題山積のようですが、現実問題として対応が難しいものがあります。