最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

日本拳法名称事件

大阪地裁平成22.6.17平成21(ワ)2948不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官      北岡裕章
裁判官      山下隼人

*裁判所サイト公表 2010.6.23
*キーワード:周知性、誤認混同行為性

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■事案

「日本拳法」などの表示の営業表示としての周知性の有無が争点となった事案

原告:NPO日本拳法会、日本拳法会全国連盟
被告:公益財団法人全日本拳法連盟、代表理事A

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 原告各表示の営業表示性及び周知性の有無
2 被告らの不正競争行為の有無

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■事案の概要

『(1)拳法の普及等の活動をしている原告らが,「日本拳法」との名称が原告らの営業を表示するものとして,「日本拳法会」との名称が原告特定非営利活動法人日本拳法会の営業表示として,「日本拳法全国連盟」との名称が原告日本拳法全国連盟の営業表示としてそれぞれ周知性を獲得しているから,「日本拳法」の名称を使用して拳法の普及活動等を行う被告らの行為及び被告公益財団法人全日本拳法連盟が「全日本拳法連盟」との名称を使用する行為は不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するとして,被告らに対し,同法3条に基づき,拳法の普及活動等において「日本拳法」の名称を使用することの差止め及び「日本拳法」の文字を使用した允許状用紙等の廃棄を求め,被告公益財団法人全日本拳法連盟に対し,同法3条に基づき,「全日本拳法連盟」の名称の使用の差止め及び同名称の登記の抹消登記手続を求め,被告Aに対し,同法14条に基づき,信用回復の措置として,別紙記載の通知文の送付を求め,(2)原告日本拳法全国連盟が,被告Aが「日本拳法」の名称を使用して允許活動をしたことによって損害を受けたとして,被告Aに対し,同法4条に基づき,損害金36万円及びこれに対する不正競争行為の後の日である平成21年3月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁以下)

<経緯>

S7   Bが「大日本拳法」考案、「大日本拳法会」設立
S22  「日本拳法会」に改称
S28  Cが派遣され東京に支部が設立
S30  Cが「日本拳法協会」設立
H1   日本拳法会、日本拳法連盟、中部支部で「日本拳法全国連盟」設立
H21  被告Aらが「全日本拳法連盟」設立

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■判決内容

<争点>

1 原告各表示の営業表示性及び周知性の有無

被告Aらが設立した「全日本拳法連盟」での「日本拳法」名称の使用が、原告「日本拳法会」らの営業主体の誤認混同行為(不正競争防止法2条1項1号)となるかどうかが争点となっています。

結論としては、「日本拳法」の名称の周知性は肯定されたものの、原告ら(そのグループも含め)の営業表示として周知性を獲得しているとは認められていません(20頁以下)。

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2 被告らの不正競争行為の有無

原告の「日本拳法会」、「日本拳法会全国連盟」の各名称については、全体が不可分のものとして使用されることにより識別性を有し、原告らの営業表示として周知性を獲得するに至っていると判断されたものの、被告が「全日本拳法連盟」の名称を使用する行為については、「日本拳法」部分に識別力がないこと、外観及び称呼において相違があるして原被告の名称は非類似として不正競争行為性を否定しています(25頁以下)。

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■コメント

技芸の家元・流派の名称を巡る紛争は散見されるところで、日本舞踊(音羽流事件、花柳流事件)や尺八(都山流尺八楽会事件)、華道(華道専正池坊事件)、武道では少林寺や極真空手、沖縄古武道(日本躰道協会関連)などが思い浮かびます。

それぞれに歴史的な経緯があって複雑な事情があるため、単純なフランチャイズ関係では割り切れない部分があるところです。

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■過去のブログ記事

「華道専正池坊家元」事件
武道と商標権