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2010年07月06日

「弁護士のくず」事件(控訴審)−著作権 著作権翻案物発行禁止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「弁護士のくず」事件(控訴審)

知財高裁平成22.6.29平成22(ネ)10008著作権翻案物発行禁止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      齊木教朗
裁判官      武宮英子

*裁判所サイト公表 2010.6.30
*キーワード:翻案権、創作性、アイデア表現二分論、著作者人格権、一般不法行為性

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■事案

ノンフィクション小説を参考に執筆された漫画の翻案権侵害性が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人) :弁護士
被告(被控訴人):出版社
            漫画家

原告書籍:「懲戒除名 ”非行”弁護士を撃て」
被告書籍:「弁護士のくず」『蚕食弁護士』

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法27条、20条、2条1項1号、民法709条

1 翻案権侵害の有無
2 著作者人格権侵害の有無
3 一般不法行為の成否

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■事案の概要

『原告は,(1)被控訴人株式会社小学館(1審被告)発行の雑誌「ビッグコミックオリジナル」に掲載され,被告Yにより執筆された漫画「弁護士のくず『蚕食弁護士』」(以下「被告書籍」という。)を出版し,頒布する行為は,原告執筆のノンフィクション小説「懲戒除名“非行”弁護士を撃て」(以下「原告書籍」という。)について原告が有する著作権(翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権,著作者の名誉声望)を侵害する,又は,(2)被告書籍は,原告書籍を無断で利用して作成されたものであり,被告書籍を出版し,頒布する行為は,社会的な許容限度を超えた違法な行為であるから,民法上の一般不法行為(709条)が成立すると主張して,被告らに対し,著作権及び著作者人格権侵害の停止又は予防として被告書籍の出版等の差止めを求めるとともに,著作権及び著作者人格権侵害の不法行為損害賠償請求権(主位的請求原因)又は民法上の不法行為損害賠償請求権(予備的請求原因)に基づき,損害金500万円及びその遅延損害金の支払を求めた。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 翻案権侵害の有無
2 著作者人格権侵害の有無
3 一般不法行為の成否

結論としては、原審の判断を維持、各論点について原告の主張を否定しています(11頁以下)。

当裁判所は,(1)原告書籍各部分は,表現においてありふれたものであって創作性がないか,創作性があったとしても表現上の特徴はないこと,そして,被告書籍各部分と原告書籍各部分とは,取り上げられたエピソードやアイデアにおいて共通する部分があるものの,原告書籍各部分の表現上の本質的な特徴を直接感得するものとはいえないから,被告書籍各部分は,原告書籍各部分を翻案したものとはいえない,(2)被告書籍を出版,販売する行為は,原告の有する著作者人格権(同一性保持権等)を侵害するとはいえない,(3)被告書籍を出版,販売する行為は,不法行為を構成しない,と判断する。その理由は,次のとおり付加変更するほかは,原判決の「第3 当裁判所の判断」(原判決30頁1行目から44頁16行目まで)の記載と同じであるから,これを引用する。

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■コメント

被告側の代理人弁護士に福井健策先生が就いておいでで、控訴審の判決を受けて福井先生はTwitterで報道被害の回復についてコメントを寄せられています。

『「弁護士のくず」2審判決の報道は通信社・スポーツ紙。全国紙は「盗作疑惑」と書き立てた2年前とうって変わり、読売の速報を除いて皆無。』
『元が実話だという決定的な事実すら当初は報じられず、井浦さんは「盗作漫画家」となる。「疑惑」の時は書きたて、2年間の真剣な裁判で明らかになった「真相」は、一片も報じない。』
『判決は複雑?事件は風化した?なるほどそうだ。だが、本人はこの2年間苦しんで来たのだ。たとえ短信でも興味を持ってもらえるように書くのが、プロだろう。』
『私はこれまで、「メディアの公共性」という議論を支持して(少なくともその理念に期待して)来た。だが今日は、その話は少々色あせて見える。』(7月2日付)

マスコミの著作権関連事件の報道のありかたに一石を投じるものです。

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■過去のブログ記事

2010年3月3日記事
「弁護士のくず」事件(原審)

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■参考サイト

プレスリリース 平成22年6月29日 小学館広報室
<『弁護士のくず』訴訟の高裁判決について>
『弁護士のくず』訴訟、一審に続いて知財高裁でも全面勝訴! お知らせ 小学館
written by ootsukahoumu at 06:38│TrackBack(0)知財判決速報2010 

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