最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「月刊ネット販売」編集著作物事件(対著者)
東京地裁平成22.6.17平成21(ワ)27691損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 柵木澄子
裁判官 小川卓逸
*裁判所サイト公表 2010.6.25
*キーワード:編集著作物性、一般不法行為、信用毀損
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■事案
月刊誌に掲載された図表の編集著作物性や複製行為の一般不法行為性の成否が争点となった事案
原告:出版社
被告:執筆者
原告雑誌:月刊誌「月刊ネット販売」2007年9月号
被告執筆書籍:「図解入門業界研究 最新 通販業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法12条1項、21条、民法709条
1 著作権侵害の成否(編集著作物性)
2 財産権侵害の成否(一般不法行為性)
3 名誉・信用毀損の成否
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■事案の概要
『別紙対照表記載の原告図表1ないし9(以下,まとめて「各原告図表」という。)について著作権を有すると主張する原告が,別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)の執筆者である被告に対し,(1)本件書籍中に掲載された別紙対照表記載の被告図表1ないし9(以下,まとめて「各被告図表」という。)は各原告図表の複製物に当たり,被告が本件書籍中に各被告図表を掲載した行為は,各原告図表に係る原告の著作権(複製権)を侵害する行為であるか,あるいは,仮に,各原告図表が著作物であると認められないとしても,原告の財産権を侵害する行為であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,金250万円の支払を求めるとともに,(2)被告が,本件書籍の表題中に「カラクリ」という言葉を使用し,かつ,その著者の肩書きとして「株式会社通販新聞社,通販新聞・執行役編集長,月刊ネット販売・編集人」と,その経歴として「通販新聞社に入社し,記者を経て3年前から現職」と表記したことにより,原告の名誉・信用が毀損されたとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,金250万円の支払を求める事案』(1頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 著作権侵害の成否(編集著作物性)
被告が執筆した書籍に掲載された図表9点が、原告雑誌に掲載された図表の無断複製に該当するかどうかについて、そもそも原告図表に編集著作物性(著作権法12条1項)が成立しているかどうかが争点となっています。
原告各図表は、ネット通販での上位50社の売上高や増減率、取扱商品を表にしたものなどでしたが、裁判所は、各図表は素材の選択、配列いずれもありふれたものであり、創作性を有するものであるということはできないとして、編集著作物性を否定しています(9頁以下)。
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2 財産権侵害の成否(一般不法行為性)
原告各図表は、原告が膨大な費用を掛けてアンケートを実施するなどして作成した原告の財産であって、無断複製は原告の財産権を侵害する不法行為(民法709条)に該当すると原告は主張しました。
しかし、原告各図表の体裁をそのままに写したものではなく、また、出典元を掲載しており、掲載行為が図表の利用方法として相当性を欠くものではなく、違法な行為であるとはいえないと裁判所は判断。一般不法行為性の成立を否定しています(18頁)。
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3 名誉・信用毀損の成否
被告書籍表題において「カラクリ」という言葉を使用したことが、原告に対する信用を毀損しあるいは社会的信用を低下させたと原告は主張しました。
しかし、「カラクリ」が「しかけ」(広辞苑)といった意味として理解するものとして悪印象を与える意味に理解するとは認めることはできないとして、裁判所は原告の主張を容れていません(18頁以下)。
結論として、原告の主張はすべて棄却されています。
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■コメント
被告書籍については、被告書籍を出版した秀和システム社を被告とする別訴が2件あって、そのいずれでも原告各図表の編集著作物性は否定されていました。
編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護されますが(著作権法12条1項)、本件でも原告各図表はいずれの点においてもありふれたものと判断されています。
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■過去のブログ記事
対秀和システム事件
2010年2月12日記事
「月刊ネット販売」編集著作物事件
2010年3月15日記事
「週刊通販新聞」編集著作物事件
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■追記(2010.6.30)
被告が提訴していた解雇無効確認訴訟について、6月29日東京地裁(松田典浩裁判官)は解雇無効、謝罪広告、慰謝料200万円を発行元の通販新聞社に命じる判決を言い渡した。
「「カラクリ」執筆解雇は無効」朝日新聞6月30日付朝刊東京版13版37頁
「月刊ネット販売」編集著作物事件(対著者)
東京地裁平成22.6.17平成21(ワ)27691損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 柵木澄子
裁判官 小川卓逸
*裁判所サイト公表 2010.6.25
*キーワード:編集著作物性、一般不法行為、信用毀損
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■事案
月刊誌に掲載された図表の編集著作物性や複製行為の一般不法行為性の成否が争点となった事案
原告:出版社
被告:執筆者
原告雑誌:月刊誌「月刊ネット販売」2007年9月号
被告執筆書籍:「図解入門業界研究 最新 通販業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法12条1項、21条、民法709条
1 著作権侵害の成否(編集著作物性)
2 財産権侵害の成否(一般不法行為性)
3 名誉・信用毀損の成否
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■事案の概要
『別紙対照表記載の原告図表1ないし9(以下,まとめて「各原告図表」という。)について著作権を有すると主張する原告が,別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)の執筆者である被告に対し,(1)本件書籍中に掲載された別紙対照表記載の被告図表1ないし9(以下,まとめて「各被告図表」という。)は各原告図表の複製物に当たり,被告が本件書籍中に各被告図表を掲載した行為は,各原告図表に係る原告の著作権(複製権)を侵害する行為であるか,あるいは,仮に,各原告図表が著作物であると認められないとしても,原告の財産権を侵害する行為であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,金250万円の支払を求めるとともに,(2)被告が,本件書籍の表題中に「カラクリ」という言葉を使用し,かつ,その著者の肩書きとして「株式会社通販新聞社,通販新聞・執行役編集長,月刊ネット販売・編集人」と,その経歴として「通販新聞社に入社し,記者を経て3年前から現職」と表記したことにより,原告の名誉・信用が毀損されたとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,金250万円の支払を求める事案』(1頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 著作権侵害の成否(編集著作物性)
被告が執筆した書籍に掲載された図表9点が、原告雑誌に掲載された図表の無断複製に該当するかどうかについて、そもそも原告図表に編集著作物性(著作権法12条1項)が成立しているかどうかが争点となっています。
原告各図表は、ネット通販での上位50社の売上高や増減率、取扱商品を表にしたものなどでしたが、裁判所は、各図表は素材の選択、配列いずれもありふれたものであり、創作性を有するものであるということはできないとして、編集著作物性を否定しています(9頁以下)。
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2 財産権侵害の成否(一般不法行為性)
原告各図表は、原告が膨大な費用を掛けてアンケートを実施するなどして作成した原告の財産であって、無断複製は原告の財産権を侵害する不法行為(民法709条)に該当すると原告は主張しました。
しかし、原告各図表の体裁をそのままに写したものではなく、また、出典元を掲載しており、掲載行為が図表の利用方法として相当性を欠くものではなく、違法な行為であるとはいえないと裁判所は判断。一般不法行為性の成立を否定しています(18頁)。
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3 名誉・信用毀損の成否
被告書籍表題において「カラクリ」という言葉を使用したことが、原告に対する信用を毀損しあるいは社会的信用を低下させたと原告は主張しました。
しかし、「カラクリ」が「しかけ」(広辞苑)といった意味として理解するものとして悪印象を与える意味に理解するとは認めることはできないとして、裁判所は原告の主張を容れていません(18頁以下)。
結論として、原告の主張はすべて棄却されています。
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■コメント
被告書籍については、被告書籍を出版した秀和システム社を被告とする別訴が2件あって、そのいずれでも原告各図表の編集著作物性は否定されていました。
編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護されますが(著作権法12条1項)、本件でも原告各図表はいずれの点においてもありふれたものと判断されています。
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■過去のブログ記事
対秀和システム事件
2010年2月12日記事
「月刊ネット販売」編集著作物事件
2010年3月15日記事
「週刊通販新聞」編集著作物事件
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■追記(2010.6.30)
被告が提訴していた解雇無効確認訴訟について、6月29日東京地裁(松田典浩裁判官)は解雇無効、謝罪広告、慰謝料200万円を発行元の通販新聞社に命じる判決を言い渡した。
「「カラクリ」執筆解雇は無効」朝日新聞6月30日付朝刊東京版13版37頁