最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

三菱信販商号使用差止事件

東京地裁平成22.1.29平成21(ワ)9129商号使用禁止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官      鈴木和典
裁判官      坂本康博

*裁判所サイト公表 2010.3.25
*キーワード:著名表示冒用行為、

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■事案

「三菱」標章を会社の商号に使用した行為の著名表示冒用行為性が争点となった事案

原告:三菱商事株式会社
    三菱UFJ信託銀行株式会社
    株式会社三菱東京UFJ銀行
    三菱地所株式会社
被告:三菱信販株式会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、2号、商標法36条

1 著名表示冒用行為性(不正競争防止法2条1項2号)
2 不正競争防止法附則3条1号の適用関係
3 被告商号の使用に対する黙示の許諾の有無等

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■判決内容

<争点>

1 著名表示冒用行為性(不正競争防止法2条1項2号)

「三菱信販株式会社」を商号とする会社(昭和43年5月23日設立)に対して、三菱グループに属する4社が商号の使用差止、商号登記の抹消登記手続などを求めました。

被告会社の商号使用の著名表示冒用行為性(不正競争防止法2条1項2号)について、

(1)著名な商品等表示

原告らがそれぞれ社名の一部や営業表示として使用する「三菱」の標章は、遅くとも被告が設立された昭和43年までには著名性を獲得、現在も継続している。

(2)同一若しくは類似のもの

類否判断の要部は「三菱」であり、原告らの商品等表示と同一である。

として不正競争防止法2条1項2号の要件充足性を肯定。
さらに原告と被告の業務ではその重複ないし類似から営業の誤認混同のおそれもあると判断しています(12頁以下)。

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2 不正競争防止法附則3条1号の適用関係

被告は、2条1項2号改正前から継続的に商号を使用しているとして不正競争防止法附則3条1号により3条(差止請求権)の適用はないと反論していました。

しかし、裁判所は、不正競争防止法附則3条1号では、2条1項1号に該当する行為が除外されており、本件では改正前(平成6年5月1日)においても被告が被告商号を使用する行為は改正後の2条1項1号に掲げる行為に該当するものであったと判断。
結論として、不正競争防止法附則3条1号の適用はないとして、被告の主張は容れられていません(14頁以下)。

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3 被告商号の使用に対する黙示の許諾の有無等

被告は、被告商号の使用に対する黙示の許諾や権利失効の抗弁を主張しましたが、被告の存在や被告商号の使用の認識を原告が有していたとは認められず、容れられていません(15頁以下)。

結論として、被告商号の使用差止、商号登記の抹消登記手続が認められました(不正競争防止法3条)。

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■コメント

会社の商号に「三菱」標章が使われていても、例えば三菱鉛筆は三菱グループとは関係ない会社であることは、よく知られています。
今回の「三菱信販」の場合は、被告会社の設立が昭和43年で既に40年以上経過した現時点での提訴なので、どうして今まで気が付かなかったのか、という疑問が残りますが、昭和60年以降兼松通商グループの賃貸物件の家賃管理など、主にグループ会社内部の一部門として活動してきたという経緯(7頁)もあって、表面化しなかったのかもしれません。