最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「週刊通販新聞」編集著作物事件

東京地裁平成22.2.25平成20(ワ)32147損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官     山門優
裁判官     舟橋伸行

*裁判所サイト公表 2010/3/9
*キーワード:創作性、編集著作物性

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■事案

週刊新聞紙に掲載された図表の編集著作物性が争点となった事案

原告:出版社
被告:出版社

原告新聞:「週刊通販新聞」
被告書籍:「図解入門業界研究 最新 通販業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法12条、21条

1 原告図表は編集著作物か

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■判決内容

<争点>

1 原告図表は編集著作物か

被告書籍に掲載された図表1から12について、原告新聞に掲載された図表12点を一部抜粋又は全部を無断で掲載して出版、販売したとして原告の各図表の編集著作物に対する複製権侵害性(著作権法21条)などが争点となりました。なお、被告書籍の著者Aは、原告の元従業員で、被告書籍執筆当時は原告通販新聞の編集長でした。

原告図表1は、通販市場での過去25年間における各年度の売上高とその前年比増減率を棒グラフと折れ線グラフで示したものでした。
原告図表1について、裁判所は、こうした表現方法はありふれたものであり素材の選択又は配列によって創作性を有するということはできないと判断しています(29頁以下)。

その他の原告図表は、例えば、原告図表2は、テレマーケティング業界に属する企業2006年度上位5社に関する売上高等のデータ一覧表、原告図表9は、ネット通販業界の2007年の事件や事象を時系列に沿って配列したもの、原告図表10は、通販・通教実施企業2006年度上位80社の経常利益等のデータ一覧といった種類の図表でした。
結論として、裁判所は、原告図表のいずれも素材の選択又は配列によって創作性を有するということはできないと判断しています。

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■コメント

先日公表された月刊誌「月刊ネット販売」事件(東京地裁平成22.1.27判決(民事第29部清水節裁判長))と被告が同じ事案で、原告同士は同一系列会社です。
結論としては、今回の新聞紙掲載の原告図表の編集著作物性も47部(阿部正幸裁判長)において29部とほぼ同じ筋で否定されています。

週刊通販新聞は、「わが国唯一の通販市場の週刊専門紙」で紙面構成は8面建てとなっています(下記原告サイト参照)。
原告は『30年以上の長きにわたって,1年に2回,通販業界の主な会社を対象として,各社の業績(売上高,経常利益等)や業績の増減要因等についてアンケート調査』を行ってきており、素材収集に要した労力等を図表の編集著作物性の判断に当たって考慮すべきであると主張しましたが、「額に汗」論は認められていません(5頁以下、41頁以下)。

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■過去のブログ記事

2010年2月12日記事
「月刊ネット販売」編集著作物事件

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■参考判例

東京地裁平成22.1.27判決PDF

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■参考サイト

通販新聞