最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ワンルームマンション営業秘密事件
東京地裁平成21.11.27平成20(ワ)16126不正競争行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 中村恭
裁判官 鈴木和典
*裁判所サイト公表 09/12/16
*キーワード:秘密管理性、非公知性、不正取得行為、競業避止義務
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■事案
投資用ワンルームマンション買取業者情報などの秘密管理性が争点となった事案
原告:投資用中古ワンルームマンション売買仲介会社
被告:不動産仲介会社、原告元従業員ら
--------------------
■結論
請求棄却
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■争点
条文 不正競争防止法2条1項4号、7号、8号、2条6項、民法719条
1 本件買取業者情報の秘密管理性
2 本件書式の非公知性
3 本件所有者情報に関する不正競争の有無
4 職務過怠の有無
5 信義則上の義務違反の有無
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■判決内容
<経緯>
H18.3.1 原告とDST社が業務提携契約締結
H18.3 被告AがDSTから原告に出向
H18.10 被告Aが退職
H19.2 被告Aが被告会社に入社
H19.8 業務提携契約を合意解約
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<争点>
1 本件買取業者情報の秘密管理性
原告元従業員らによる原告保有の不動産所有者情報(本件所有者情報)や投資用ワンルームマンション買取業者情報(本件買取業者情報)、契約書類等の書式(本件書式)の不正取得行為の有無やそれら情報の秘密管理性(不正競争防止法2条6項)が争点となっています。
まず、本件買取業者情報について、
1.買取業者の名称などであった
2.インターネットでも公開されている情報であること
3.閲覧についてアクセス制限がなかった
4.自由にプリントアウトできる状況にあった
こうした点から、裁判所は、本件買取業者情報に接した者がこれを秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理している実体があるとはいえないとして、本件買取業者情報は秘密管理性の要件を欠くと判断しています(20頁以下)。
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2 本件書式の非公知性
実際の業務に使用される契約書類等の書式の非公知性について、不動産の売買当事者、媒介依頼者などの第三者が必ず認識することなどから、裁判所は本件書式の非公知性を否定しています(21頁以下)。
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3 本件所有者情報に関する不正競争の有無
本件買取業者情報と本件書式の営業秘密性が否定されたことから、秘密管理性について当事者間で争われていない本件所有者情報(8頁以下)についてのみ不正取得の有無が検討されています(22頁以下)。
結論としては、被告個人らによる紙媒体や電子データでの情報取得が否定されています。
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4 職務過怠の有無
原告は、被告Fらは原告に対して経営コンサルタントとして人材を派遣したDST社の取締役として信義則上、営業秘密保持義務や競業避止義務を負うものであり、被告Fらには取締役の職務を行うにあたり義務違反による職務懈怠があると主張しましたが、裁判所は認めていません(28頁以下)。
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5 信義則上の義務違反の有無
原告は、DST社との本件業務提携契約に基づき被告Fらは信義則上の義務(競業避止義務類似の義務)を負い、この義務に違反していると主張しましたが、この点についても認められていません(29頁)。
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■コメント
出資金の返還トラブルで関係者が殺害されたり逮捕者が出たりと物騒な事件も絡む事案です。
情報が営業秘密として保護されるためには、1.秘密管理性、2.有用性、3.非公知性の3要件の充足が必要ですが(不正競争防止法2条6項)、本件買取業者情報については、秘密管理の実体がないと判断されています。
ワンルームマンション営業秘密事件
東京地裁平成21.11.27平成20(ワ)16126不正競争行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 中村恭
裁判官 鈴木和典
*裁判所サイト公表 09/12/16
*キーワード:秘密管理性、非公知性、不正取得行為、競業避止義務
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■事案
投資用ワンルームマンション買取業者情報などの秘密管理性が争点となった事案
原告:投資用中古ワンルームマンション売買仲介会社
被告:不動産仲介会社、原告元従業員ら
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 不正競争防止法2条1項4号、7号、8号、2条6項、民法719条
1 本件買取業者情報の秘密管理性
2 本件書式の非公知性
3 本件所有者情報に関する不正競争の有無
4 職務過怠の有無
5 信義則上の義務違反の有無
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■判決内容
<経緯>
H18.3.1 原告とDST社が業務提携契約締結
H18.3 被告AがDSTから原告に出向
H18.10 被告Aが退職
H19.2 被告Aが被告会社に入社
H19.8 業務提携契約を合意解約
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<争点>
1 本件買取業者情報の秘密管理性
原告元従業員らによる原告保有の不動産所有者情報(本件所有者情報)や投資用ワンルームマンション買取業者情報(本件買取業者情報)、契約書類等の書式(本件書式)の不正取得行為の有無やそれら情報の秘密管理性(不正競争防止法2条6項)が争点となっています。
まず、本件買取業者情報について、
1.買取業者の名称などであった
2.インターネットでも公開されている情報であること
3.閲覧についてアクセス制限がなかった
4.自由にプリントアウトできる状況にあった
こうした点から、裁判所は、本件買取業者情報に接した者がこれを秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理している実体があるとはいえないとして、本件買取業者情報は秘密管理性の要件を欠くと判断しています(20頁以下)。
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2 本件書式の非公知性
実際の業務に使用される契約書類等の書式の非公知性について、不動産の売買当事者、媒介依頼者などの第三者が必ず認識することなどから、裁判所は本件書式の非公知性を否定しています(21頁以下)。
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3 本件所有者情報に関する不正競争の有無
本件買取業者情報と本件書式の営業秘密性が否定されたことから、秘密管理性について当事者間で争われていない本件所有者情報(8頁以下)についてのみ不正取得の有無が検討されています(22頁以下)。
結論としては、被告個人らによる紙媒体や電子データでの情報取得が否定されています。
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4 職務過怠の有無
原告は、被告Fらは原告に対して経営コンサルタントとして人材を派遣したDST社の取締役として信義則上、営業秘密保持義務や競業避止義務を負うものであり、被告Fらには取締役の職務を行うにあたり義務違反による職務懈怠があると主張しましたが、裁判所は認めていません(28頁以下)。
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5 信義則上の義務違反の有無
原告は、DST社との本件業務提携契約に基づき被告Fらは信義則上の義務(競業避止義務類似の義務)を負い、この義務に違反していると主張しましたが、この点についても認められていません(29頁)。
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■コメント
出資金の返還トラブルで関係者が殺害されたり逮捕者が出たりと物騒な事件も絡む事案です。
情報が営業秘密として保護されるためには、1.秘密管理性、2.有用性、3.非公知性の3要件の充足が必要ですが(不正競争防止法2条6項)、本件買取業者情報については、秘密管理の実体がないと判断されています。