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2009年12月19日

パンドラTV事件− 著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

パンドラTV事件

東京地裁平成21.11.13平成20(ワ)21902著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官      中村恭
裁判官      鈴木和典

*裁判所サイト公表 09/12/16
*キーワード:侵害主体性、カラオケ法理、プロバイダ責任制限法、損害論

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■事案

動画投稿・共有サイトの違法主体性が争われた事案

原告:ジャスラック
被告:株式会社パンドラTV(旧商号)
    代表取締役A

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、114条の5、プロバイダ責任制限法3条

1 侵害行為の主体性
2 被告会社の損害賠償責任の有無
3 被告Aについての不法行為の成否
4 損害額

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■判決内容

<経緯>

H17.11.10 被告会社設立
H18.2.1   被告会社が「パンドラTV」(「TVブレイク」)サイト開設
H19.6     原告が被告に違法動画の配信停止措置を要請
H20.6     映画会社らが被告に削除要求
H20.8.6   原告提訴

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<争点>

1 侵害行為の主体性

被告会社(代表取締役A)は、動画投稿・共有サイト「パンドラTV」(その後「TVブレイク」)を開設、動画配信サービスを運営していましたが、ユーザのアップロードした動画ファイルにジャスラック(日本音楽著作権協会)が管理する音楽著作物が多数含まれていたことから、管理著作物の複製権、公衆送信権侵害性が争点となりました。

まず、外形的には複製又は送信可能化をユーザが行っていることから、被告会社が直接関与していないとして侵害主体性が争われました(39頁以下)。

この点について、裁判所は、

著作権法上の侵害主体を決するについては,当該侵害行為を物理的,外形的な観点のみから見るべきではなく,これらの観点を踏まえた上で,実態に即して,著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。そして,この検討に当たっては,問題とされる行為の内容・性質,侵害の過程における支配管理の程度,当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し,侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として,侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。』(40頁)

として、いわゆるカラオケ法理に言及。

そのうえで、以下の諸点を検討のうえ、被告会社の侵害主体性を肯定しています。

1.本件サービスの内容・性質(40頁以下)

動画配信サイトとの対比、著作権侵害発生の蓋然性、構成の特徴などから結論として、裁判所は本件サービスが利用者に著作権侵害又は著作隣接権侵害に対する強い誘因力を働かせるものであり、著作権又は著作隣接権を侵害する事態を生じさせる蓋然性の極めて高いサービスであるといえ、その点について被告会社も認識していたと判断しています。

2.複製及び公衆送信における管理支配(47頁以下)

物理的ないし電気的な観点、システムの設計及びツールの提供、動画内容に関する積極的関与などの点から、サーバを管理支配し、専用ソフトウェアをユーザに配布するなどしているとして、被告会社が本件サービスを管理支配していると判断されています。

3.被告会社の受ける利益の状況(52頁以下)

本件サービスには、バナー広告や検索連動型広告が設置されており、被告会社がこれにより広告収入を得ているという状況を踏まえ、そのうえで、動画ファイル数と被告の利益額には相関関係があると判断しています。

4.侵害態様(53頁以下)

侵害割合、削除措置、回避措置の適用について、本件管理著作物の複製物が全カテゴリーの半分を占めており、また権利侵害防止・解消に被告は消極的な姿勢に終始しており、さらに警告だけの回避措置もほとんど有効性を期待できないと判断。

以上の結論として、被告会社は、著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引、招来、拡大させてこれにより利得を得る者であって、侵害行為を直接に行う者と同視できるとしてその著作権侵害主体性を認め、被告会社に対する複製又は公衆送信の差止請求を肯定しています。

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2 被告会社の損害賠償責任の有無

1.プロバイダ責任制限法3条1項の適否

被告側は、プロバイダ責任制限法3条1項の「発信者」にはユーザしかなり得ず、被告会社は「発信者」該当しないと反論しましたが、裁判所に容れられていません(63頁以下)。

2.故意過失の有無

著作権侵害行為について、少なくとも過失があると認められています(64頁以下)。

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3 被告Aについての不法行為の成否

被告A個人の不法行為責任について、被告会社が被告Aの個人会社で、A自らも自身のチャンネルの中で著作権侵害行為をしていたこと、権利者と交渉するなど本件サービスの実務を自ら中心となって担当していたことなどから、被告会社とともに著作権侵害行為の主体と評価できると判断されています(65頁以下)。

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4 損害額

使用料相当損害金について、1視聴回数当たり12円としてリクエスト回数(視聴数)を掛けた額を算定。
弁護士費用800万円とあわせて総額8993万円余を損害賠償金として認定しています(114条の5)。

なお、口頭弁論終結日翌日以降分の損害賠償金の支払いを求める将来給付の訴えについては、却下されています。

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■コメント

JASRACはこれまで「ユーチューブ(YouTube)」(グーグル)、「ニコニコ動画」(ニワンゴ)、「Yahoo!ビデオキャスト」(ヤフー)、「eyeVio」(ソニー)、「アメーバビジョン」(サイバーエージェント)、「Clip Cast」(sus4)、「zoome」(ズーミー)などの動画投稿サイトと利用許諾契約を結んでいますが(2009.11.13プレスリリースによると25サイトと契約)、利用許諾契約の前提として権利侵害防止のための一定の措置を講じることが求められています(下記の2007.7.24プレスリリース「動画投稿(共有)サービスにおける利用許諾条件について」参照)。

被告の動画投稿サービスは動画投稿サイト各社に求められている権利侵害防止のための条件をクリアせず、またA自身も無許諾で本件管理著作物をアップロードするなどしており、裁判所に『本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスである』(62頁)と判断されてしまっています。

被告側代理人に内藤篤先生が就いているので、十分な法律論、事実論が展開されたと期待できますが、いかんせん事案が事案だけに結論を覆すまでには至っていません。

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■参考判例

カラオケ法理について、

クラブキャッツアイ事件
最判昭和63.3.15昭和59(オ)1204音楽著作権侵害差止等
ビデオメイツ事件
最判平成13.3.2平成12(受)222著作権侵害差止等請求事件

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■参考サイト

ジャスラックプレスリリース(2009.11.13)
動画投稿(共有)サイトにおける著作権侵害 東京地裁が運営事業者に対する侵害差止めと損害賠償請求を認容
ジャスラックプレスリリース(2007.7.24)
動画投稿(共有)サービスにおける利用許諾条件について
被告会社プレスリリース(2009年12月3日)
TVbreak「ご利用ユーザーの皆様、ならびに、プレス関係者各位」

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■参考文献

日本弁理士会平成20年度コンテンツワーキンググループ「特集著作権 動画投稿サイト」『パテント』62巻9号(2009)31頁以下PDF
小島芳夫「動画投稿(共有)サイトに対するJASRACの利用許諾 」『コピライト』573号(2009)24頁以下
浜田治雄、安田和史「動画配信サイトサービスと著作権侵害」『日本大学法学部知財ジャーナル』1巻1号(2008)149頁以下

written by ootsukahoumu at 07:20│TrackBack(0)知財判決速報2009 

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