毎年恒例の東京地裁知財部現役判事によるここ1年の著作権裁判例についての講演会に先日参加してきました。
取り上げられた判例は、次の通りです。

1 保護期間について
「チャップリン映画事件上告審」
「松竹映画事件控訴審」
「角川映画事件」
「東宝映画事件」
2 保護を受ける著作物について
「北朝鮮映画事件控訴審」
3 侵害主体について
「まねきTV事件控訴審」
「ロクラクII事件控訴審」
「スカパー事件控訴審」
4 同一性保持権侵害について
「駒込大観音事件」
5 アイディア・ありふれた表現について
「時効の管理事件控訴審」
「漢字テスト事件」
「数霊占術事件控訴審」
「約束の場所事件」
「地下鉄路線案内図事件」
「マンション読本事件」
「催告書事件」
「手遊び歌事件」
6 編集著作物について
「特高警察事件」
7 パブリシティについて
「ピンク・レディー事件」

講演会の冒頭、2008年の全国の知財関係新受事件件数のお話がありましたが、497件のうち著作権関係が105件(そのうちプログラム関係が14件)ということで、印象的には大きく減った感じではありません。
去年今年と最高裁判所サイトにアップされる著作権判例が減っているので、あるいは和解で終局して内容が公表されていないものが増えたのかもしれませんが、この点は改めて統計資料を確認したいと思います。

------------------

中村判事によって取り上げられた判例の中でいくつか備忘録的に記したいと思います。

■「チャップリン映画事件上告審」(最判平成21.10.8)
旧著作権法では、職務著作の成否について学説上争いがありましたが、この点について今回最高裁がどのような見解に立っているのか関心がありました。
この点について、中村判事は、「(旧法6条が)飽くまで著作権の存続期間に関する規定と解すべきであり,団体が著作者とされるための要件及び効果を定めたものと解する余地はない。」との最高裁の説示部分は、職務著作の成立の余地まで否定している訳ではない、と指摘されておいででした。

■「ロクラクII事件控訴審」 (知財高裁平成21.1.27)
ファイルローグ事件をはじめとする新しいサービスでの判断の流れと大きく異なる判断をロクラクII事件で知財高裁は下しました。
この点、中村判事は、(1)汎用的でない特殊な機器が使われたかどうか、(2)別の視点が加わったか という比較の視点を提示。今後知財高裁の判断がどうなるか分からないとの見解を示されていました。

■「駒込大観音事件」 (東京地裁平成21.5.28)
著作権法115条の訂正措置請求での判断が先例的価値があるとのことでした。

■「ピンク・レディー事件」(知財高裁平成21.8.27)
人格権説に立つことを明言した判例となります。


講演会の内容については、著作権情報センター「コピライト」来年号に掲載されます。