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2009年07月21日

「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)

東京地裁平成21.6.17平成20(ワ)11220著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官      坂本三郎
裁判官      岩崎慎

*裁判所サイト公表 09/7/17

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■事案

「暁の脱走」「また逢う日まで」「おかあさん」映画作品の保護期間をめぐり映画の著作者が各監督なのか映画会社であるのかが争われた事案

原告:東宝株式会社
被告:格安DVD製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号、114条3項、旧法6条

1 各映画の著作権の存続期間の満了時期(各映画の著作者はだれか)
2 原告は各映画の著作権を有するか
3 被告の侵害行為の有無
4 被告の故意又は過失の有無
5 原告の損害の有無及びその額

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■判決内容

<争点>

1 各映画の著作権の存続期間の満了時期(各映画の著作者はだれか)

1.本件各映画の著作者について

本件各映画の著作者及び著作名義がそれぞれその監督であるとした場合、「暁の脱走」は平成57年まで、「また逢う日まで」は平成41年まで、「おかあさん」は平成34年まで著作権の存続期間が続くことになります(旧著作権法22条ノ3、3条、52条1項、附則、新法54条1項)。
これに対して団体である映画製作会社の著作名義であるとされた場合の著作権の存続期間は平成14年(あるいは平成12年)までには満了していることとなることから(旧著作権法22条ノ3、6条、52条2項)、平成19年1月に行われた被告による本件DVDの輸入行為が著作権侵害みなし行為となるのか、そもそも本件各映画の著作者がだれであるのかが争点となりました(16頁以下)。

この点について裁判所は、

旧著作権法における著作物とは,新著作権法と同様,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいい,また,旧著作権法における著作者とは,このような意味での著作物を創作する者をいうと解される。
 そして,思想又は感情を創作的に表現できるのは自然人のみであることからすると,旧著作権法においても,著作者となり得るのは,原則として自然人であると解すべきである。


 このように,著作者となり得るのは,原則として自然人であることを前提として,制作,監督,演出,撮影,美術の担当者等多数の自然人の協同作業により製作されるという映画の著作物の製作実態を踏まえると,旧著作権法においても,新著作権法16条と同様,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当して映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者が,当該映画の著作物の著作者であると解するのが相当である。

としたうえで、本件各映画について、

本件各監督はそれぞれ本件各映画の監督を務めており,また,本件各映画は本件各監督による創作的な表現であると評価されていることが認められるから,本件各監督は,それぞれ本件各映画の全体的形成に創作的に寄与している者と推認され,これに反する証拠もない。
 したがって,本件各監督は,他に著作者が存在するか否かはさておき,少なくとも本件各映画の著作者の一人であると認められる。
』(23頁以下)

として各監督が著作者であると判断しています。

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2.本件各映画の著作名義

本件各映画のオープニング冒頭部分には、監督の実名とともに映画を製作した会社の標章や「新東宝映画」や「東宝株式会社」の表示があったことから、旧著作権法6条(団体名義の著作物の保護期間)の適用があるかどうかがさらに問題とされています(24頁以下)。

前提として旧著作権法6条の解釈について裁判所は、

旧著作権法6条が定める団体名義の著作物とは,当該著作物の発行又は興行が団体名義でされたため,当該名義のみからは創作行為を行った者を判別できず,また,著作物の名義人の死亡時期を観念することができない著作物をいうと解するのが相当である。』(24頁)

としたうえで、本件各映画について、

本件各監督がそれぞれ本件各映画の著作者であると認められることからすれば,前記イの本件各映画のオープニングやポスターにおける本件各監督の名前の表示は,それぞれ本件各映画の著作者である本件各監督の実名を表示したものと認められる。
 そうすると,本件各映画は,著作者の実名が表示されて公表された著作物であって,創作行為を行った者を判別できず,また,著作物の名義人の死亡時期を観念することができない著作物であるとはいえないから,本件映画1及び3に「新東宝映画」等の表示が,本件映画2に「東宝株式会社」等の表示があるからといって,旧著作権法6条が定める団体名義の著作物には当たらないというべきである。


として、旧著作権法6条の適用を否定しています。

結論として、本件各映画の著作権は存続していると判断されています(旧著作権法3条、52条1項等)。

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2 原告は各映画の著作権を有するか

結論としては、本件各映画の著作権について、各監督は明示的又は黙示的に原告又は新東宝に対して映画の著作権を譲渡したと推認するのが相当である(新東宝は、原告に著作権譲渡)として、原告が本件各映画の著作権を単独で有していると判断されています(28頁以下)。

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3 被告の侵害行為の有無

被告が本件DVDを国内で頒布する目的でもって輸入した行為は、原告の著作権を侵害する行為とみなされる(113条1項1号)と判断されています(31頁以下)。

結論として、本件DVDの製造、輸入、頒布の差止、在庫品及び原版の廃棄が認められています(112条1項、2項)

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4 被告の故意又は過失の有無

被告が,本件各映画の著作権が存続しているか否かについて,専門家等の第三者に意見を求める等何らかの調査を行ったことをうかがわせる事情は見当たらない。』(34頁)

などの事情も含め著作権侵害行為に関する被告の過失が認められています(33頁以下)。

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5 原告の損害の有無及びその額

原告には、被告の本件DVD輸入行為により映画著作権の使用料相当額の損害が生じているとしたうえで、本件DVD1本あたりの使用料相当額は、小売価格×0.2として、

小売価格1800円×0.2×輸入数量3000本=108万円

と損害額を算定しています(35頁以下)。

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■コメント

黒澤明監督作品格安DVD事件(対角川)(東京地裁平成21.4.27平成20(ワ)6848損害賠償請求事件判決)と同じ清水コートの判断で、同じ流れの内容の判決です。

格安DVD事件の同一被告の訴訟としては今年3つ目で、対松竹控訴審判決、対角川損害賠償請求判決に引き続く対東宝事件判決となります。
対東宝事件としては、すでに「姿三四郎」「生きる」など黒澤明監督の8作品について、昨年控訴審判決(知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10083)が出ています。
今回の訴訟で対象となった映画ですが、「暁の脱走」は谷口千吉監督、「また逢う日まで」は今井正監督、「おかあさん」は成瀬巳喜男監督の各作品でした。

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■過去のブログ記事

2009年02月19日記事
黒澤明監督作品格安DVD事件(対松竹)控訴審
2009年05月14日記事
黒澤明監督作品格安DVD事件(対角川)

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written by ootsukahoumu at 07:33│TrackBack(0)知財判決速報2009 

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