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2009年05月10日

アークエンジェルズ名称使用差止事件−不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アークエンジェルズ名称使用差止事件

大阪地裁平成21.4.23平成19(ワ)8023不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官      島村雅之
裁判官      北岡裕章

*裁判所サイト公表 09/5/7

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■事案

NPO法人による動物愛護活動の不正競争防止法上の事業者性や名称、ドメイン使用差止が争点となった事案

原告:NPO法人
被告:団体代表者

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、2条9項

1 商品等表示性の有無
2 著名性又は周知性の有無
3 類似性の有無
4 誤認混同のおそれの有無
5 名称使用許諾の有無
6 差止の可否、範囲
7 損害論

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■判決内容

<経緯>

S44    原告代表P2が来日、動物愛護活動開始
H2     原告P2が団体「ARK」を創立
H7     「ARK」が阪神淡路大震災で600頭の動物を保護
H11.9.6  P2が原告NPO法人設立
H17.8   被告P1が原告の活動に関与
H17.10  被告P1の妻の活動「ドッグドリーム」名称を「ARK-ANGELS」に変更
       フォスターホームプログラム開始
H17.12.9 原被告仲裁ミーティング
H18.2.9  名称使用を議題としたミーティング
H18.5.18 原告が名称使用差止の内容証明書を送付
H18.10.3 原告がさらに名称使用差止の内容証明書を送付
H18.10  被告が閉鎖されたテーマパーク「広島ドッグぱーく」で寄付活動
H19.2.15 被告が恐喝未遂の嫌疑で告訴受理
H19.7   本訴提起
H19.9.10 第1回口頭弁論

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原告各表示

1 ARK
2 アーク
3 ARK/アーク

被告各表示

1 ARK−ANGELS
2 Ark−Angels
3 アーク・エンジェルズ
4 アークエンジェルズ

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<争点>

1 商品等表示性の有無

1.原被告の事業者性

被告は、動物愛護活動や動物愛護活動に密接不可分なグッズの販売等は不正競争防止法上の事業活動とみなされるべきではないと主張していました。
しかし、裁判所は、

不正競争防止法1条の「事業者」であるためには,その者が営利目的を有する必要はなく,経済上の収支計算の上に立った事業であれば足りると解される。』(19頁)

としたうえで、原告被告ともに経済上の収支計算上に立った事業を行っていると認められるとして、不正競争防止法1条の「事業者」にあたると判断しています(19頁以下)。

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2.原告各表示の商品等表示性

原告は、原告各表示(「ARK」、「アーク」)を各種物品販売等により商品表示及び営業表示として使用していたと認定されています(20頁)。

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3.被告各表示の商品等表示性

被告は、被告各表示を被告の名称として使用していましたが、Tシャツなどの物品に付して販売していたり看板等で使用していて商品表示や営業表示としても使用している。また、ドメイン名(ark-angels.jp)も被告の営業表示として機能しているとして被告各表示の使用及びドメイン名の使用は、不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」の使用に該当すると裁判所は判断しています(20頁)。

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2 著名性又は周知性の有無

平成7年阪神大震災での原告の活動が新聞、雑誌に頻繁に掲載されるようになってから原告において「ARK」、「アーク」の名称が使用されるようになっており、被告が被告各表示を使用し、積極的に活動を行うようになった平成17年10月頃までには、原告の活動領域である関西地域において原告の活動を識別表示する原告の表示(略称)として、周知性を獲得していたと認められるのが相当であると裁判所は判断しています(21頁以下)。

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3 類似性の有無

不正競争防止法2条1項1号の他人の商品等表示の類否判断について、裁判所は、

取引の実情の下において,取引者又は需要者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準に判断するべきである。』(27頁)

と最高裁昭和58.10.7判決(マンパワー事件)を踏襲したうえで、被告各表示の要部を「ARK」「Ark」「アーク」と認定し、原被告各表示の要部の対比として、称呼及び観念等において類似又は同一であるとして、いずれも類似すると判断しています(27頁以下)。

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4 誤認混同のおそれの有無

裁判所は、原被告の各表示が類似しており、しかも活動目的が動物愛護と同じであることから誤認混同のおそれが高く、しかも閉鎖された「広島ドッグぱーく」での被告の募金取扱いに関連して一般市民から原告に対して問い合わせが多数寄せられた事実から混同が生じたことを一つの資料として誤認混同のおそれを肯定しています(29頁以下)。

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5 名称使用許諾の有無

裁判所は、原告が被告に対して被告独自の活動についてアークエンジェルズの名称の使用を許諾していたということはできないと判断しています(30頁以下)。

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6 差止の可否、範囲

結論として、被告各表示及び「ark-angels.jp」ドメイン名の使用差止、被告各表示を付した物品等の廃棄、被告ウェブサイトなどからの被告各表示の抹消の必要が肯定され、動物を扱う事業及びこれに付帯する事業の範囲での差止が認められています(不正競争防止法3条1項、2項 37頁以下)。

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7 損害論

原告に対する信用毀損(無形損害)の損害額として100万円、弁護士費用相当の損害額として10万円の合計110万円が損害賠償額として認められています(不正競争防止法4条、民法709条 38頁以下)。

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■コメント

被告も20年以上にわたって動物保護活動を行っていましたが、閉鎖されたテーマパーク「広島ドッグぱーく」での寄付活動での問題もあって、名称変更した「アークエンジェルズ」の名称使用の点で原告名称「アーク」との誤認混同のおそれが比較的容易に認められた結果となっています。

ところで、わたしの事務所がある世田谷区駒沢公園付近は、DOGショップがたくさんあって、そのなかには犬の里親活動を熱心に行っているショップがあります。また、Dog Shelterもあります。
そんな地縁もあってか犬グッズの商品企画開発、ライセンス契約案件などにもかかわりますが、彼ら(わんこ)にとって少しでも心落ち着ける環境が提供されればと願って止まないところです。

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■参考文献

小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)218頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)149頁以下、183頁
武智克典「著名商品等表示(2)-ドメイン名関係〔J-PHONE事件〕」『商標・意匠・不正競争判例百選』(2007)164頁以下

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■参考判例

・営業表示の使用による信用損害について、
歌謡スナックシャネル事件参照。
東京地裁平成6.4.27平成4(ワ)19111判決PDF

・ドメイン名の営業識別機能性について、以下参照。
ジャックス事件
名古屋高裁金沢支部平成13.9.10平成12(ネ)244判決PDF
富山地裁平成12.12.6平成10(ワ)323判決PDF(原審)
j-phone事件
東京高裁平成13.10.25平成13(ネ)2931判決PDF
東京地裁平成13.4.24平成12(ワ)3545判決PDF(原審)

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■参考サイト

原告サイト
アニマルレフュージ関西-ARK - NEW

ニュースリリース(アニマルレフュージ関西-ARK [ニュース&イベント])
「アークエンジェルズ」について

被告サイト
動物愛護団体 ARK-ANGELS
written by ootsukahoumu at 05:35│TrackBack(0)知財判決速報2009 

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