大家重夫先生(久留米大学法学部 特任教授)の御論文「公取委のJASRACへの排除命令は妥当か」が『マーチャンダイジングライツレポート』582号52頁以下(2009.4 商品化資料センター刊行)に掲載されています。

項目だけ抜き出させていただくと、

1.公正取引委員会の排除命令
2.「社団法人日本音楽著作権協会に対する排除措置命令について-平成21年2月27日-公正取引委員会」
3.公取委の問題か
4.公取委の問題であるとした場合
5.JASRACと放送事業者間の包括利用契約-その経緯
6.むすび


という構成内容をとられており、大家先生は、結論としてはジャスラックには独禁法違反はない、というご見解に立たれておいでです(56頁)。

ところで、以前ブログに「ジャスラックと公取委」というメモ(2009年02月27日)を書いた際、音楽著作権の放送使用料が廉価であることに触れましたが、音楽出版社協会(MPA)のセミナーなどに出席したときは、そうした話を聞く機会もありました。
ただ、手持ちの文献(日本音楽著作権協会編著「日本音楽著作権史 上・下」(1990)など)を紐解いてみても、そのあたりがいまひとつはっきりしないところでした。

大家先生の御論文57頁注8にジャスラック小林亞星評議員と加戸守行理事長(当時)のやりとりに言及されている文献(JASRAC NOW487号)の掲載があり、1998年当時でも「(受信料収入、放送収入に対する料率(0.5%)について)少なくとも3倍、標準的には5、6倍を目指すべき」との放送使用料率に関する議論があったようです。
(なお、平成21年2月現在、使用料規程では包括的利用許諾契約の使用料率は、放送事業収入の1.5%となっています。)

また、大家先生の御論文「プラーゲ旋風−1930年代、日本の著作権事情」『知的財産法研究』138号13頁以下(2008 萼工業所有権研究所出版部刊行)では、プラーゲ旋風対策の後遺症として、戦後も放送局の音楽著作権使用料が低く抑えられてしまった経緯とともに、この後遺症から早く脱却すべきとの見解を大家先生は述べておいでです(26頁参照 大家先生は、平成18年度ジャスラックの使用料徴収額1110億円、放送使用料255億円を踏まえ、放送は全体の半分の500億でもおかしくはない、とされておいでです)。

今回、大家先生のこれらの御論文に接し、ジャスラックの今後の在りようを考えるうえで大変参考になりました。

(以上、御論文を大家先生より拝受いたしました。重ねて御礼申し上げます。)

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■追記09.4.12

プラーゲ旋風にかかわる大家先生の御著書として、「改訂版 ニッポン著作権物語-プラーゲ博士の摘発録-」(1999)がありますが、放送使用料に触れた部分として、195頁以下参照。

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■追記09.4.28

ジャスラックプレスリリース(2009.4.28)
公正取引委員会に対する審判請求の申立について