公正取引委員会がジャスラック(jasrac 日本音楽著作権
協会)に対して排除措置命令を出した件については、
企業法務戦士の雑感さんの記事
[企業法務][知財][独禁]「包括的利用許諾契約」は悪か?
(2009.2.25記事)
が伝えていますが、ジャスラックは2009年2月27日付
プレスリリースで見解を公表しています。

jasracプレスリリース
公正取引委員会に対する審判請求について

公正取引委員会2009年2月27日付排除措置命令
命令書等PDF

独禁法事案でジャスラックに現状の改善を求めることの
当否はともかくとして、現象として見てみると、興味深い
ところです。

NHKと民放キー局の全曲報告の体制は昨年整ったと聞
いていますし(使用楽曲を正確に捕捉できなかったから、
いままでは包括=ブランケット契約だったが、今後はそ
の必要もなくなる)、またそもそもテレビ局との包括契約
での著作権使用料率は低廉であるとも聞いたことが
あります。

この使用料の低廉の経緯は、プラーゲ旋風(戦前、欧米
音楽著作権管理団体の代理人としてプラーゲ博士が日本
で過酷な徴収業務を行った事件。この事件をきっかけに
日本でも音楽管理団体を作って参入障壁を作った。)に
までさかのぼることができるかもしれませんが、ジャスラック
としては、公取委の判断をテコにして、テレビ局との全曲
報告での使用料徴収を早急に具体化していけばよく(プラ
ーゲ旋風以来の放送局との関係でのゆがみを是正できる)、
今回のことで

メリットを受けるひと
・ジャスラック(手数料が増える)
・音楽著作権者(分配が増える)
・ジャスラック以外の管理団体(イーライセンスなど)
         (新規参入による収益増大)

デメリットを受けるひと
・テレビ局、ラジオ局(制作費上昇)

という図式で見ていくことはできないでしょうか。

総務省とテレビ局などがまとめた自主ルール「放送コンテ
ンツの製作取引適正化に関するガイドライン(指針)
」が
公表されましたし

テレビ界、下請けいじめ是正へ 番組買いたたき禁止など
(asahi.com(朝日新聞社2月22日付記事))

総務省プレスリリース(2009.2.25)

放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドラインPDF(別紙1)

テレビ局のあり方や現状に対するいっそうの見直し、改善
が求められている流れでのひとつの現れではないかと感じ
た次第です。

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■追記(09.04.07)

論文案内 大家重夫「公取委のJASRACへの排除命令は妥当か」(マーチャンダイジングライツレポート2009年4月号)

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■追記09.4.28

ジャスラックプレスリリース(2009.4.28)
公正取引委員会に対する審判請求の申立について

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■追記09.7.24

津田大介(2009年7月23日 時評コラム nikkei BPnet 〈日経BPネット〉)
公取委排除措置命令で、JASRACは「変わる」か〜第一回審判は7月27日予定

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■追記09.7.27

2009年7月27日、公正取引委員会で第1回審判が開始(09/7/27記事)
JASRAC排除措置命令、公正取引委員会で審判手続きがスタート -INTERNET Watch

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■追記09.8.06

ニュース - CNET Japan
JASRAC、1億円の供託で公取委の排除措置命令を免除
永井美智子(編集部)2009/08/06 16:12
JASRAC、1億円の供託で公取委の排除措置命令を免除

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■追記09.9.14

09.9.14第2回審理
The Casuarina Tree (2009/09/14記事)
JASRAC独禁法違反事件審判・#2

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■追記09.10.29

09.10.28第3回審理
「公取委の事実認定は誤り」--JASRAC、独禁法違反を否定する証拠を提出ニュース - CNET Japan(2009/10/28 22:26)

次回の審判の予定は12月9日。

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■追記09.12.10

第4回審理について
The Casuarina Tree(2009/12/10記事)
JASRAC独禁法違反事件審判#4