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2009年01月10日

北朝鮮映画事件(対フジテレビ)控訴審〜 著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

北朝鮮映画事件(対フジテレビ)控訴審

知財高裁平成20.12.24平成20(ネ)10011著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 田中信義
裁判官      榎戸道也
裁判官      浅井憲


対日本テレビ事件
知財高裁平成20.12.24平成20(ネ)10012著作権侵害差止等請求控訴事件PDF


*裁判所サイト公表 09/1/9

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■事案

日本が国家として承認していない北朝鮮国民の著作物の著作権が
日本の著作権法上でも保護されるかどうかが争われた事案の控訴審

原告(控訴人) :朝鮮映画輸出入社(平壌:北朝鮮行政機関)
           映像企画制作仲介会社(東京)
被告(被控訴人):フジテレビ

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■結論

一部認容

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■争点

条文 著作権法第6条3号、民法709条

1 北朝鮮著作物の我が国における著作権法上の保護の可否
2 一般不法行為の成否

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■判決内容

<争点>

1 北朝鮮著作物の我が国における著作権法上の保護の可否

控訴審は、朝鮮映画輸出入社の著作権に基づく差止請求と、朝鮮映画
輸出入社及び映像企画制作仲介会社の独占的利用許諾権の各侵害を理
由とする損害賠償請求について、いずれも理由がないと判断しています。
(9頁以下)

我が国と北朝鮮との間でベルヌ条約上の権利義務関係が生じず、北朝鮮
著作物は我が国著作権法上保護されない(著作権法6条3号所定の著作物
に該当しない)と判断した原審の判断を正当としています。

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2 一般不法行為の成否

控訴人らは控訴審で一般不法行為(民法709条)の成立を予備的に追加
しました。
この点について映像企画制作仲介会社に映画著作物の利用について民
法709条の法律上保護される利益があるとされて、損害額10万円(民事
訴訟法248条)と弁護士費用損害額2万円の合計12万円の損害賠償額が
認定されています。
(15頁以下)

著作物は人の精神的な創作物であり,多種多様なものが含まれるが,中にはその製作に相当の費用,労力,時間を要し,それ自体客観的な価値を有し,経済的な利用により収益を挙げ得るものもあることからすれば,著作権法の保護の対象とならない著作物については,一切の法的保護を受けないと解することは相当ではなく
利用された著作物の客観的な価値や経済的な利用価値,その利用目的及び態様並びに利用行為の及ぼす影響等の諸事情を総合的に考慮して,当該利用行為が社会的相当性を欠くものと評価されるときは,不法行為法上違法とされる場合があると解するのが相当である。
(19頁)

と裁判所は説示。そして、

(1)本件映画が経済的な利用価値のある映画である
(2)映画製作にあたり相当の資金、労力、時間を要している
(3)仲介会社は放映許諾により使用料を得ていた
(4)本件無許諾放映によりビデオやDVDが販売できない状況になった
(5)放映は報道目的のニュース内であるが、営利事業であること
(6)6分のTV番組中2分を超える放映で相当な時間の利用であること

などの点から、フジテレビによる本件無許諾放映は社会的相当性を欠
く行為であり仲介会社が本件映画の利用により享受する利益を違法に
侵害する行為に当たり、過失も認められる(19頁以下)として不法行為
の成立を肯定しています。

なお、朝鮮映画輸出入社の映画著作物の日本国内における利用につい
ては、要保護性のある法的利益の存在は認められませんでした。

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■コメント

奇しくも今回も第4部(但し、田中信義裁判長)での判断となりました。

原審、控訴審ともにフジテレビ、日本テレビの番組放送での北朝鮮の映画
著作物の利用について、著作権者や仲介会社の日本国内での著作権法
上の保護を否定しましたが、控訴審では予備的に追加された一般不法行
為論について、著作権法上の保護を受けない著作物の利用であっても仲
介会社には要保護性のある法的利益があるとして民法709条による保護を
肯定しています。

読売オンライン(YOL)事件(知財高裁H17.10.6平成17(ネ)10049)や
法律書籍著作権侵害事件(知財高裁H18.3.15平成17(ネ)10095)での判断
の流れ(第4部 塚原朋一裁判長。現在は第1部担当)からすると、著作権
侵害性を否定した場合の一般不法行為の肯否について、知財高裁での一
般不法行為論の採用もさほどハードルが高くないのかもしれません。
なお、こうした過去2件の事案での知財高裁第4部の挑戦に対して批判的
な立場に立たれる見解として、田村編著後掲書25頁以下参照。

田村先生のご見解のエッセンスは、ウエストロー・ジャパンのコラムで
触れることが出来ます。

第3回 「知的財産法と不法行為」 今週のコラム[ウエストロー・ジャパン]
(2008年3月31日掲載)

北朝鮮の映画著作物の事案ということもあって、その取扱いについては
政治判断に委ねるべきだとも考えられますが、一方では、自由放任され
てしまうことで日本国内で活動しているエージェントのインセンティヴを
過度に損ない、成果開発の投資が過小となることが裁判所にとって明か
な場合といえるのであれば控訴審の判断も是認されるところです(田村
後掲書42頁以下参照)。
なお、原審の結論に賛成するものとして、茶園、横溝後掲論文参照。

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■過去のブログ記事

2005年10月12日記事
ヨミウリオンライン事件控訴審
2006年3月29日記事
「法律書籍著作権侵害」事件控訴審
2007年12月20日記事
「北朝鮮映画」事件(対フジテレビ)原審

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■参考文献

山根崇邦「著作権侵害が認められない場合における一般不法行為の成否-通勤大学法律コース事件-」『知的財産法政策学研究』18号(2007)221頁以下 知的財産法政策学研究/21世紀COEプログラム:「新世代知的財産法政策学の国際拠点形成」研究プロジェクト 論文PDF
塩谷 信「模倣品に対する意匠権,商標権,不正競争防止法 第2条第1項第1号,同2号,同3号,著作権および民法第709条の射程距離の研究」『パテント』60巻7号(2007)54頁以下 論文PDF
田村善之「知的財産権と不法行為-プロセス思考の知的財産法政策学の一様相」『新世代知的財産法政策学の創成』(2008)3頁以下
山本隆司、井奈波朋子「創作性のない表現をデッドコピーした場合における不法行為成立の可否」『最新判例知財法 小松陽一郎先生還暦記念論文集』(2008)658頁以下 インフォテック法律事務所 論文PDF
茶園成樹「北朝鮮の著作物について我が国が保護する義務を負わないと判断された事例」『知財管理』58巻8号(2008)1099頁以下
横溝 大「未承認国家の著作物とベルヌ条約上の保護義務-北朝鮮著作物事件-」『知的財産法政策学研究』21号(2008)263頁以下
石原 修「ニュース記事見出しの著作物性とその利用による不法行為の成否-ヨミウリオンライン事件控訴審判決-」中山信弘編『知的財産権研究』(2008)248頁以下

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■参考サイト

「知」的ユウレイ屋敷(2008年12月28日記事)
[著作権]北朝鮮映画事件控訴審判決が不法行為の成立を認めた点を考える

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■追記09/1/16

参考サイト
企業法務戦士の雑感(2009.1.14記事)
[企業法務][知財]たかが12万、されど12万。

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■追記09/5/22

西口博之「未承認国家の著作権保護-北朝鮮映画判決を読んで-」『コピライト』576号(2009)65頁以下

written by ootsukahoumu at 06:13│TrackBack(0)知財判決速報2008 

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