Tweet

2008年10月24日

「時効の管理」法律実務書事件(控訴審)〜著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「時効の管理」法律実務書事件(控訴審)

大阪高裁平成20.10.8平成20(ネ)1700著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官      小野洋一
裁判官      菊地浩明


*裁判所サイト公表 10/23

   --------------------

■事案

法律書籍の題号をめぐって、題号の著作物性や類似題号の
使用の不正競争行為性(商品等表示性)が争われた事案の
控訴審

原告(控訴人) :弁護士
被告(被控訴人):出版社ら

   --------------------

■結論

控訴棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法第2条1項1号、不正競争防止法第2条1項2号、1号、民法710条

1 題号「時効の管理」の著作物性
2 題号「時効の管理」の商品等表示性
3 人格的利益の侵害による不法行為性

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 題号「時効の管理」の著作物性

原告(控訴人)が出版した時効に関する法律実務書「時効の
管理」と題名が類似する「時効管理の実務」書籍を被告が
出版したとして原告は題名の著作権、著作者人格権侵害を
争点としていました。

しかし、裁判所は、書籍の題名「時効の管理」の創作性、思想性
について、

「時効」は時効に関する法律問題を論じる際に不可避の法令用語であり,「管理」は日常よく使用されて民法上も用いられている用語であり,「時効の管理」という表現はこの2語の間に助詞である「の」を挟んで組み合わせた僅か5文字の表現であり,控訴人書籍Aの発刊以前から時効に関する法律問題を論じる際に「消滅時効の管理」・「時効管理」といった表現が用いられていたものであるから,「時効の管理」はこれを全体として見てもありふれた表現であるというべきである

また、原告主張のように『「時効の管理」という表現が「時効について権利義務の一方当事者が主体的にこれを管理しコントロールすべきであるとの視点から再認識した思想」を表現したとまでは理解できず,単に「時効を管理する」という事物ないし事実状態を表現しているとしか理解できないのであって,「時効の管理」という表現は思想又は感情を創作的に表現したものと認められない。
(8頁以下)

として、題名の創作性、思想表現性を否定し、原審同様題号の
著作物性を否定しています。

   ----------------------------------------

2 題号「時効の管理」の商品等表示性

原告は、被告の類似題号による出版行為の不正競争行為性
をさらに争点としています。

(1)書籍の題号と出所識別機能

書籍の題号は,普通は,出所の識別表示として用いられるものではなく,その書籍の内容を表示するものとして用いられるものである。そして,需要者も,普通の場合は,書籍の題号を,その書籍の内容を表示するものとして認識するが,出所の識別表示としては認識しないのものと解される。
(原判決12頁)

との判断を控訴審でも維持しています(9頁)。

   ----------

(2)周知商品等表示性

書籍内容を示すありふれた題号であっても,発行部数,当該分野での取り上げられ方,影響度,文献としての引用度により題号と著作者が重なり合い,出所表示機能を発生させる(・・・という)控訴人主張のような事情のいかんによっては周知商品等表示性を獲得するようなこともあり得るところ,上記証拠によれば,控訴人書籍の存在が一定範囲で知られるようになったことが窺われるが,控訴人の商品等表示として周知となったとまでは認められず,本件において,その点の立証は十分ではなく,したがって,「時効の管理」を控訴人の周知商品等表示と認めることはできない。
(9頁以下)

として、周知商品等表示性を否定しています。

   ----------

(3)混同のおそれ

書籍に表記された編著者の数・氏名,出版社名,外装のデザイン,色が全く異なるものであることが認められるところ,両書籍のような法律書は,事柄の性質上,特定の著者,出版社の如何に比重を置いた選択,識別がされると考えられるから,上記のような相違点がある以上,混同のおそれがあると認められない。
(10頁)

として、混同のおそれを否定しています。

結論として、不正競争行為性を否定しています。

   ----------------------------------------

3 人格的利益の侵害による不法行為性

同一題号の使用により原告は法的保護に値する人格的利益を
侵害されたとして不法行為に基づく損害賠償請求を控訴審で
新たに主張しました。しかし、

両書籍の題号は同一ではないし,仮に類似するものとしても本件全証拠をもっても被控訴人らが控訴人書籍の題号を殊更に模倣するなどの不正な目的をもって被控訴人書籍の題号を付したと認められない
(10頁)

として、不法行為の成立を否定しています。

なお、和解事案ですが和解勧告の理由のなかで同一題号の使
用が人格的利益の侵害となりうる場合を肯定する裁判所の見解
として、「父よ母よ!」事件があります。
(東京地裁平成9.1.22平成7(ワ)11117著作権に基づく損害賠償請求事件)

   --------------------

■コメント

原審同様、類似題号をもつ書籍の出版、編集行為の著作権
侵害性、不正競争行為性が否定されています。

原告は、日本文芸家協会の題名に関する見解(1984年)をも
論拠のひとつとしてその要保護性を主張しましたが、認めら
れませんでした。

日本文芸家協会の題名に関する見解の要旨については、
豊田きいち「編集者の著作権基礎知識 第五版」(2005)
61頁以下で触れられています。

   --------------------

■過去のブログ記事

2008年5月31日記事(原審)
「時効の管理」法律実務書事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

   --------------------

■参考文献

標識法(商標法、不正競争防止法)における著作物の題号保護
の判例、学説状況を検討するものとして、

宮脇正晴「不正競争防止法による著作物の題号の保護」
野村豊弘、牧野利秋編『現代社会と著作権法 斉藤博先生御退職記念論集』(2008)379頁以下参照

   --------------------

■参考判例

「父よ母よ!」事件
Netlaw(弁護士 荒竹純一先生サイト)

written by ootsukahoumu at 10:48│TrackBack(0)知財判決速報2008 

トラックバックURL