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2008年08月02日

黒澤明監督作品格安DVD(対角川)事件(控訴審)〜著作権 著作権侵害差止請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

黒澤明監督作品格安DVD(対角川)事件(控訴審)

知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10082著作権侵害差止請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 田中信義
裁判官      榎戸道也
裁判官      浅井憲

★原審
東京地裁平成19.9.14平成19(ワ)11535著作権侵害差止請求事件PDF

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★同日同法廷の対東宝事件控訴審判決
知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10083著作権侵害差止請求控訴事件PDF

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■事案

黒澤明監督「羅生門」「静かなる決闘」映画作品の保護期間をめぐり
映画の著作者が黒澤監督なのか映画会社であるのかが争われた
事案の控訴審

控訴人 :格安DVD製造販売会社
被控訴人:角川映画株式会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号、旧法6条

1 映画の著作者は誰か
2 映画の著作権者について
3 映画の著作権の存続期間

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■判決内容

<争点>

1 映画の著作者は誰か

裁判所は、旧著作権法における映画の著作物の著作者につ
いては、制作、監督、撮影、美術等を担当して映画の著作物
の全体的形成に創作的に寄与した者が当該映画の著作物
の著作者であると解するのが相当であると判断。

黒澤監督は本件映画の監督を務め、脚本の作成にも参加す
るなどしており、本件映画は黒澤監督の一貫したイメージに
沿って製作されたものであるとして、黒澤監督は本件映画
の全体的形成に創作的に寄与した者であり、著作者の一人
であると認定しています。

なお、裁判所は、旧法下でも法人著作の成立の余地を認め
ていますが(後掲 龍渓書舎復刻版事件(2))、新著作権法
15条(職務著作)の要件と同様の要件を具備するとの点に
ついて、控訴人からの主張立証がないとしてこの点からも
映画製作者の単独著作物性を認めていません。
(10頁以下)

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2 映画の著作権者について

映画の著作権の帰属については変遷があり、黒澤監督から
製作・興行を担当した旧大映へ、旧大映破産後は新大映、
組合との共有などを経て最終的には角川映画の単独保有と
なっています。
(16頁以下)

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3 映画の著作権の存続期間

旧著作権法6条の「著作物」について裁判所は、著作者名義
として団体を表示して発行又は興行した著作物をいうので
あって、その著作者は法人等である著作物をいうものとの
解釈を示しています。

そのうえで、本件映画のオープニングの冒頭部分で旧大映
の社章とともに「大映株式会社製作」が表示されていること、
そしてオープニングの最後に「監督 黒澤明」と表示されてい
る点を捉えて「大映株式会社製作」は映画製作者が旧大映
であることを示すもので、「監督 黒澤明」は黒澤監督が著
作者であることを示すものであると認定。

そうすると映画は著作者の実名を表示されて興行された著作
物となることから旧著作権法6条の適用はなく、旧著作権法3条
が適用されることになると判断。

結論として、平成48年12月31日まで(黒澤監督死亡の翌年から
38年)著作権は存続しているとされました(旧法22条の3、3条、
9条、52条1項)。(18頁以下)


原審同様、DVDの増製、輸入及び頒布の差止並びに在庫品の
廃棄が認められました。

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■コメント

映画「羅生門」の著作名義が映画監督の黒澤監督なら、
保護期間は平成48年まで、映画製作会社(旧大映)で
あれば平成12年までと保護期間に相違が出てくること
から旧著作権法の解釈として映画の著作者及び著作
名義をどのように考えるべきか(10頁)が争点となった
事案の控訴審です。

54条1項の適用が否定され保護期間の延長が認められ
なかった映画「シェーン」事件との違いについては、シェ
ーン事件がアメリカ法人を映画の著作者、著作名義とし
ていることを前提事実として保護期間延長措置の適否に
ついて附則の解釈が争点となったのに対して、今回の羅
生門事件は黒澤監督を著作者と表示して興行された映画
としての存続期間が争われているとして、両者は事案を
異にするものとされています。(20頁以下)

ただ、公表形態自体では、控訴人主張のようにタイトル
ロール部分の表示の違いは僅か(5頁以下)ですから、
この点だけを捉えれてみればシェーン事件で原告パラマ
ウント社としては争点の立て方を(結果論ですが)失敗
してしまったようにみえてはしまいます(この点につき、
後掲「企業法務戦士の雑感」記事参照)。

もっとも、今回の控訴審の判断にしても職務著作の成立
のための要件の検討が充分されていないこと(後掲岡論
文227頁参照)、「映画の著作権の存続期間が不明確にな
ってしまったという負の効果」(後掲駒田論文4頁参照)を
考えると、すんなりと得心するわけにはいかないところ
です。

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■過去のブログ記事

2007年09月21日記事
「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対角川事件)

2007年12月18日記事
「シェーン」著作権保護期間満了事件(上告審)

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■参考判例

旧法下、政府部内の執務資料について国が著作者
として著作権を原始取得したとされた事案

龍渓書舎復刻版事件(2)
東京高裁昭和57.4.22判決昭和52(ネ)827著作権差止請求事件PDF

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■参考文献

小林尋次「現行著作権法の立法理由と解釈-著作権法全文改正の資料として-」(1958)114頁以下
岡 邦俊「最新判例62を読む 著作権の事件簿」(2007)223頁以下

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■参考サイト

企業法務戦士の雑感(2007-10-01記事)
■[企業法務][知財]綱渡りの主張

今村哲也「昭和28 年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物の著作権は平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了し消滅するとされた事例
LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース
速報判例解説 知的財産法 No.8所収
論文PDF

駒田泰土「旧著作権法施行時に製作、公表された映画について、その著作権の存続期間が満了していないとされた事例(東京地方裁判所平成19年9月14日判決)
LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース
速報判例解説 知的財産法 No.5所収
論文PDF

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written by ootsukahoumu at 15:32│TrackBack(0)知財判決速報2008 

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