最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

便座シート形態模倣事件

大阪地裁平成20.7.17平成20(ワ)1637不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官      西理香
裁判官      北岡裕章

   --------------------

■事案

便座シートの商品形態模倣行為性が争われた事案

原告:日用雑貨品製造販売会社
被告:日用雑貨品製造販売会社

   --------------------

■結論

請求棄却

   --------------------

■争点

条文 不正競争防止法2条1項3号

1 被告製品は、原告製品の形態を模倣したものか

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 被告製品は、原告製品の形態を模倣したものか

原告製品は、便座シートで便座の形に添ったブーメラン形をした
不燃布素材のもので、被告商品も同様のものでした。

裁判所は原被告製品の形態の実質的同一性について、

(1)共通点

・便座の形に添ったブーメラン形
・不燃布からなる基布、厚手のアクリルボア融着
・不燃布の裏に貼着用樹脂
・便座シート


(2)相違点

・原告製品には内側に切り目がある
・裏側の凸状部の幅が異なる

といった対比のうえで、


(3)形態上の特徴の抽出

原告は実用新案登録を得た考案(登録3105081)にかかる内側切り
目部分を製品の特徴として強調して販売していること、需要者も
購入の際に内側切り目を意識し、その効用を予想するものと考えら
れるとしたうえで、原告製品の全体的な形態の中にあって内側切り
目部分が顕著な独自の特徴的な形態をもたらしているものと判断
しています。


(4)実質的同一性の判断

結論として、被告製品には、原告製品の形態上の顕著な特徴であ
る内側切り目が全く設けられていないとして、その他の両社製品
の形態上の共通点を考慮しても原被告製品が実質的に同一の形
態であると認めることはできないとしました。
(7頁以下)

なお、基布の表面にふかふかした厚手のアクリルボアが融着され
ていて肌触りの良い触感である点について、原告製品の特徴の一
つではあるものの、素材の違いを外観上明確に認識することはで
きず、これは原告製品の機能上(使用感)の特徴であっても形態
上の顕著な特徴をなすものとは認められないと判断されています
(10頁以下)。

以上のように被告の商品形態模倣行為性が否定されています。

   --------------------

■コメント

吸着性があってずれない便座シートのデッドコピー商品性が
問題となった事案です。
原告のキャラクターを付けた消臭シートや便座隙間テープな
どのアイデア商品もすぐに他社に模倣される状況だったよう
ですが(5頁)、便座シートについては、便座の形が定型です
ので形自体はどうしても似てしまうわけで、原告登録の実用
新案部分の侵害はなく形態模倣性については否定される結
果となりました。

   --------------------

■参考文献

大阪弁護士会知的財産法実務研究会編
不正競争防止法における商品形態の模倣」(2002)79頁以下

   --------------------