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2008年06月25日

日めくりカレンダー事件(控訴審)〜著作権 慰謝料請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

日めくりカレンダー事件(控訴審)

知財高裁平成20.6.23平成20(ネ)10008慰謝料請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官      今井弘晃
裁判官      清水知恵子

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■事案

携帯待受画面用「日めくり」カレンダーのためのデジタル写真集
について、著作者人格権(同一性保持権)侵害性が争われた事案
の控訴審

控訴人 :写真家
被控訴人:富士通株式会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法12条、20条、民法709条

1 デジタル写真集の編集著作物性 
2 配信行為による同一性保持権侵害の有無
3 配信方法についての明示又は黙示の同意の有無
4 期待権侵害の有無

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■判決内容


<争点>

1 デジタル写真集の編集著作物性 

原告写真家は、365枚のボリュームのデジタル写真集が全
体として編集著作物であり、1日1枚の配信更新ペースでは
なく、週1回1枚のペースで携帯電話の待受画面用として配
信する被告の行為は、編集著作物に関する著作者人格権と
しての写真家の同一性保持権を侵害すると主張していまし
た。

そこでまず、ファイルナンバー0001〜0365でナンバリング
されただけの花の写真のデジタルデータである本件写真集
の編集著作物性が検討されています。

この点、裁判所は、

著作権法12条は,編集著作物につき「編集物…でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,著作物として保護する」と規定しているところ,前記2認定のとおり,控訴人が撮影した花の写真を365枚集めた画像データである本件写真集は,1枚1枚の写真がそれぞれに著作物であると同時に,その全体も1から365の番号が付されていて,自然写真家としての豊富な経験を有する控訴人が季節・年中行事・花言葉等に照らして選択・配列したものであることが認められるから,素材の選択及び配列において著作権法12条にいう創作性を有すると認めるのが相当であり,編集著作物性を肯定すべきである。
(35頁以下)

として、デジタル写真集の編集著作物性を肯定しています。

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2 配信行為による同一性保持権侵害の有無

デジタル写真集の編集著作物性を前提として、週1回1枚のペ
ースでの配信が、写真家の同一性保持権を侵害するかどうか
について、

著作権法20条は同一性保持権について規定し,第1項で「著作者は,その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し,その意に反してこれらの変更,切除その他の改変を受けないものとする」と定めているところ,前記2認定のとおり,平成15年5月27日ころまでに控訴人から本件写真集の個々の写真の著作物及び全体についての編集著作権の譲渡を受けた被控訴人が,別紙4記載の各配信開始日に,概ね7枚に1枚の割合で,控訴人指定の応当日前後に(ただし,正確に対応しているわけではない)配信しているものであって,いわば編集著作物たる本件写真集につき公衆送信の方法によりその一部を使用しているものであり,その際に,控訴人から提供を受けた写真の内容に変更を加えたことはないものである。

そうすると,著作権法20条1項が「変更,切除その他の改変」と定めている以上,その文理的意味からして,被控訴人の上記配信行為が本件写真集に対する控訴人の同一性保持権を侵害したと認めることはできない(毎日別の写真を日めくりで配信すべきか否かは,基本的には控訴人と被控訴人間の契約関係において処理すべき問題であり,前記2認定の事実関係からすると,そのような合意がなされたとまで認めることもできない)。
(36頁以下)

として、被告の配信行為は、デジタル写真集の一部使用であ
って内容変更ではないということで配信方法については、20条
の「変更,切除その他の改変」にはあたらないと判断しています。

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3 配信方法についての明示又は黙示の同意の有無

争点1と争点2を踏まえ同一性保持権侵害性を否定した以上、
争点3は判断不要としています。
(37頁以下)

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4 期待権侵害の有無

写真家は、デジタル写真集の配列に沿って日々花の写真を使用
してもらうとの期待があって、その期待は法的保護を受けると
主張しました。
しかし、もともと被控訴人のサイトが週1回更新ペースのもので
あったことを写真家も認識していたこと、本件写真集に関する
著作権譲渡契約(注文書の備考欄記載事項)に具体的な配信方
法についての記載がないことや事実経過を踏まえても写真家の
内心に抱いた期待は「期待権」あるいは法的保護に値すべき利
益と認めることはできない、と裁判所は判断しました。
(38頁)


結論として、写真家の主張は容れられず控訴棄却となりました。

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■コメント

一審に引き続き、写真家さん敗訴の結果となりました。

一審では、花のデジタル写真が毎週1回の割合で更新して
配信されることについて、写真家さんが黙示の同意を与え
ていたとして、争点3「明示又は黙示の同意の有無」の判断
だけで写真家さん敗訴と済ませましたが、控訴審では、争点1、
争点2を検討しています。
また、控訴審では、写真家さんは新たな主張として写真の
配列順序に従って配信、使用してもらうとの期待があると
述べましたが、こうした期待は法的には保護されるに至り
ませんでした。

控訴審は、今回の事案処理について20条の文理解釈の
体裁をとっていますが、編集著作物のネット送信の仕方、
方法と「改変」の関係についての知財高裁の判断としては、
いまひとつ論旨が説得的ではないところです。

個々のデジタル写真の配列、順番が重要だというのであれ
ば、配信の順序・方法も重要なわけで、たとえば「ケータイ
小説」で章ごとに完結する複数作品の配列、順序が重要
な場合に、ばらばらに配信されて内容のつじつまが合わなく
なればそうした配信行為は、表現に対する有意な変更とし
て「改変」の評価を受けるところです。

もともとデジタル写真集を分割して配信することが予定さ
れており、jpegデータにナンバリングされただけのデジタ
ル写真集をわざわざ編集著作物として認定しているところ
にも議論の余地がありそうです。

なお、事案処理としては、原審のように契約上の解釈での
処理のほうがすっきりする印象です。

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写真家さんとしては、正月にはフクジュソウ、節分にはセツ
ブンソウ、3月3日の桃の節句には桃・・・と365枚を1年かけ
て撮りためた写真集は、あくまで1日1枚の「日めくり」(毎
日更新)で配信されることにこだわったわけですが、残念な
がら実現しませんでした。

サイト運営者側としても予算があるわけで、写真1枚の配信に
そんなにお金を掛けられないというのも分かる話です。
また、写真家のなかには大きなデータのTiffやJpegのまま納
品してそれでおしまい、と、大量かつ大きなデータを1枚ずつ
つ開けなくていはいけない編集者への配慮が足りない(ビジネ
スのセンスに欠ける)写真家も一般論としてですが、いるわけ
です。
携帯へ画像を載せるための加工作業もそれなりにかかるとい
うことの認識にも、もしかしたら当初からズレがあったのかも
しれません。

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■原審

東京地裁平成19.12.6平成18(ワ)29460判決慰謝料請求事件PDF

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■過去のブログ記事

2007年12月08日記事(原審)
日めくりカレンダー事件〜著作権 慰謝料請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

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■追記08/7/8

企業法務戦士の雑感(2008-07-07)
[企業法務][知財]逃げなかった知財高裁

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■追記09/10/9

平澤卓人「分割してインターネット配信する著作物に対する法的保護-日めくりカレンダー事件-」『知的財産法政策学研究』24号259頁以下(2009)


written by ootsukahoumu at 12:37│TrackBack(0)知財判決速報2008 

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