最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

まねきTV事件(本案)

東京地裁平成20.6.20平成19(ワ)5765著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      平田直人
裁判官      柵木澄子

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■事案

海外でもインターネットを利用して日本のTV番組が見られる
ソニー製「ロケーションフリー」のハウジングサービス「まねきTV」
の適法性が争われた事案の本案訴訟


原告:在京キー局5社、テレ東
被告:永野商店

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項9号の5、99条の2、2条1項7号の2、23条

1 本件訴えは訴権の濫用によるものとして却下されるべきものか
2 被告は本件放送の送信可能化行為を行っているか(著作隣接権)
3 被告は本件著作物の公衆送信行為を行っているか(著作権)

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■判決内容

<争点>

1 本件訴えは訴権の濫用によるものとして却下されるべきものか

本件訴訟に先行する仮処分事件で既に3度(申立却下決定、
抗告棄却決定、抗告不許可決定)の司法判断が出ているこ
とから、被告側は本件訴訟の提起は訴権の濫用にあたり、
却下されるべきであると主張しましたが、裁判所は容れて
いません。
(69頁以下)

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2 被告は本件放送の送信可能化行為を行っているか(著作隣接権)

テレビ局は、放送事業者として著作隣接権を有しています
が、被告の行為が放送事業者の送信可能化権(99条の2)
に対する侵害となるかどうかが争われています。

(1)自動公衆送信装置

著作権法2条1項9号の5「送信可能化」は、「自動公衆送信
装置」の存在を前提とするわけですが、ここでいう「公衆」
とは、2条5項に「特定かつ多数の者を含む」と規定されて
いることから、送信者にとって受信者が不特定又は特定多
数であれば「公衆」に該当することになります。
(84頁以下)

(2)送受信行為の主体

「ロケーションフリー」機器の所有者は、利用者であること、
機能として「1対1」送受信であること、構成機器が汎用品で
あること、被告の関与は寄託を受けて事業所内に設置保管し
ているにすぎないなどの各事情を総合考慮のうえ、送受信の
主体は、各利用者であって、被告ではないと判断しています。
(85頁以下)

(3)自動公衆送信装置該当性

「ロケーションフリー」機器が「1対1」送信機能を有するに
すぎず、不特定又は特定多数者に送信する機能を有するもの
ではない、として一連の機器全体が「自動公衆送信装置」に
該当しないと判断されています。
(91頁以下)

結論として、著作権法2条1項9号の5「送信可能化」行為に該
当せず、放送事業者として有する送信可能化権(著作隣接権
99条の2)に対する侵害にもならないとされました。

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3 被告は本件著作物の公衆送信行為を行っているか(著作権)

さらに、被告の行為がテレビ番組の著作権者としてテレビ局
が有する著作権に対する侵害にあたるかどうかが争われてい
ます。

結論として、本件サービスにおいて行われる送信行為につい
て、著作権法2条1項7号の2「公衆送信」行為に該当せず、番
組著作権者の公衆送信権(著作権 23条)に対する侵害にな
らないとされました。
(96頁以下)

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■コメント

テレビ番組の視聴サービスのなかで唯一業者側がテレビ局に
勝訴している「まねきTV」。

後掲本で田村先生が指摘されているように、ソニー製ロケー
ションフリーのような便利な機器の出現による恩恵を社会が
享受し得なくなるのはよろしくない、との政策的価値判断が
裁判所に働いたものといえます。

送信行為の主体性判断の裁判所説示部分を読むと、ソニー製
「ロケーションフリー」機器自体の著作権侵害品性が訴訟で
は争点になっていない、ソニーが提供している設定サービス
の著作権法違反性は争点となっていない、ハウジングサービ
ス一般の著作権法違反性は争点となっていない、ということ
で、テレビ局がソニーを被告にしないと判断した時点でいつ
かはテレビ局が新しいビジネスモデルを提供する業者に負け
る運命だったことが伝わってくるようです。

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■過去のブログ記事

2006年12月23日記事
「まねきTV」事件(抗告審)〜著作権 著作隣接権仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件(知的財産裁判例集)〜

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■参考サイト

株式会社永野商店 まねきTV

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■参考文献

田村善之「著作権の間接侵害」『著作権法の新論点
      (2008)259頁以下
デジタルコンテンツ委員会編「コンテンツ利用者向けサービスにおける著作権侵害の問題-誰が侵害者となるのか?-」
      『知財管理』(2008)58巻3号399頁以下
茶園成樹「テレビ番組録画視聴サービスにおける複製の主体」
      『最新判例知財法』(2008)705頁以下
田村善之「検索サイトをめぐる著作権法上の諸問題(2)-寄与侵害、間接侵害、フェア・ユース、引用等-」
      『知的財産法政策学研究』(2007)17号79頁以下 論文PDF
佐藤 豊「「テレビ放送をインターネット回線を経由して視聴するシステム」を使用するための設備提供の是非-まねきTV事件-」
      『知的財産法政策学研究』(2007)15号241頁以下 論文PDF
吉田克己「著作権の「間接侵害」と差止請求」
      『知的財産法政策学研究』(2007)14巻143頁以下 論文PDF
岡 邦俊「「ロケーションフリー」テレビを活用したサービスは適法」
      『著作権の事件簿』(2007)314頁以下
奥邨弘司「変質するカラオケ法理とその限界についての一考察〜録画ネット事件とまねきTV事件を踏まえて〜」
      『情報ネットワーク・ローレビュー』6巻(2007)38頁以下
大滝 均「まねきTV(ソニー・ロケーションフリーテレビ)事件その後-公衆送信権侵害の行為主体について」
      『パテント』(2007)60巻9号61頁以下  論文PDF
帖佐 隆「判例評釈 まねきTV(東京地裁決定)」
      『パテント』(2007)60巻5号33頁以下  論文PDF

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■追記08.12.18

まねきTV事件(控訴審)
知財高裁平成20.12.15平成20(ネ)10059著作権侵害差止等請求控訴事件PDF