Tweet

2008年05月31日

「時効の管理」法律実務書事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「時効の管理」法律実務書事件

大阪地裁平成20.5.29平成19(ワ)14155著作権侵害差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官     村上誠子
裁判官     高松宏之

   --------------------

■事案

法律書籍の題号をめぐって、題号の著作物性や類似題号の
使用の不正競争行為性(商品等表示性)が争われた事案


原告:弁護士
被告:出版社ら

   --------------------

■結論

請求棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法第2条1項1号、不正競争防止法第2条1項2号

1 題号「時効の管理」の著作物性
2 題号「時効の管理」の商品等表示性

   --------------------

■判決内容


<争点>

1 題号「時効の管理」の著作物性

原告は、新日本法規出版から「時効の管理-法律問答一三〇-」
「続 時効の管理」「新版 時効の管理」などを昭和63年から
平成19年までの間に出版していましたが(「新版 時効の管理」
は現在も販売されています)、被告出版社らが平成19年8月21日
以降、「時効管理の実務」の題号で書籍を出版していることから、
題号の著作物性を前提として著作権侵害、著作者人格権侵害性
を争いました。

しかし、結論的には、「時効の管理」は、ありふれた表現で
あって、思想又は感情を創作的に表現したものということは
できないとして、題号の著作物性が否定されています。
(9頁以下)


2 題号「時効の管理」の商品等表示性

裁判所は、書籍の題号が書籍の内容を表示するものであり、
出所識別表示として認識されるものではないとの原則論に
続けて、本件原告書籍について

「時効の管理」という表現は,管理行為たる消滅時効の中断を始めとする時効に関する法律問題を論じる際のありふれた表現ということができる。そうだとすると,原告書籍の題号に接した需要者は,原告書籍の題号のうち「時効の管理」という部分を,時効に関する法律書であるという内容を表現したものと認識するにすぎず,それ以上にこれを商品等表示と認識するものとは認められない。したがって,仮に原告書籍の存在が広く知られるようになっているとしても,「時効の管理」なる表示が原告の商品等表示として周知ないし著名となったとすることはできない。

本件書籍の題号についても商品等表示性を否定しています。
(12頁以下)

   --------------------

■コメント

書籍の題号の保護をめぐっては、著作権法、不正競争防
止法、商標法などで争われていますが、著作物の題号の
独占を認めることによる創作者保護と表現の自由・情報
の自由な流通のバランス論が問われることになります。

   --------------

書籍の題号と商品等表示性(不正競争防止法)について
「スイングジャーナル事件」
東京地裁平成11.2.19平成10(ワ)18868判決参照

書籍の題号と商標法について
田村善之『商標法第二版』(2002)229頁以下

   --------------

そういえば、法律相談シーリズを出版している青林書院
と学陽書房とでは、書名が同一のものがあって紛らわし
いのですが、両社ともあまり気にしていないのでしょうか。

院生の頃、指導教授の書籍を校正したさい、教授から書
籍の題号の候補案を「刑法学入門」「入門刑法」・・・
といくつか示された経験があります。
既存の書籍とできるだけかぶらないようにとの配慮です
が、題号ひとつとってもおろそかにしない研究者の態度
に接すると、書籍に対する研究者の思い入れの深さ、題号
の重要性も伝わってくるというものです。

   --------------------

■参考文献

・ラジオ放送番組名と商品等表示性について
究極の選択事件
小野昌延「放送番組名及び書籍の題号の保護」
    『平成2年度重要判例解説』(1991)242頁以下

・映画の題号(タイトル)と商品等表示性について
超時空要塞マクロス事件
土肥一史「超時空要塞マクロス不正競争事件」
     『コピライト』(2005)44頁以下
茶園成樹「アニメーション映画の題号と不正競争防止法」
     『コピライト』542号(2006)14頁以下
岡 俊邦『最新判例62を読む 著作権の事件簿
     (2007)406頁以下

   --------------------

松原洋平「著作物の題号と同一構成の商標が公序良俗に反し無効とされた事例-Anne of Green Gables事件-」
     『知的財産法政策学研究』15号(2007)371頁以下
紋谷暢男「著作物の題号の保護」
     『著作権のノウハウ第六版』(2002)67頁以下
中山信弘『著作権法』(2007)71頁以下
作花文雄『著作権法第三版』(2008)15頁以下
小野昌延編『注釈不正競争防止法(上)新版
      (2007)414頁以下〈山名美加〉
井奈波朋子「フランスにおける題号(タイトル)の保護」
     『コピライト』497号(2002)40頁以下

   --------------------

■関連サイト

商品詳細(時効の管理) 新日本法規出版株式会社 Webショップ

時効管理の実務|きんざいストア


■追記(08/6/9)

企業法務戦士の雑感(2008-06-09)
■[企業法務][知財]題号の著作物性

written by ootsukahoumu at 10:38│TrackBack(0)知財判決速報2008 

トラックバックURL