2008年04月28日

ネットワーク研修教材事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

ネットワーク研修教材事件

東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)26738損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      平田直人
裁判官      瀬田浩久


■事案

CCNA技術者認定資格試験対策のためのネットワーク
研修教本を元従業員らが無断で複製したことについて
元請け会社のみなし侵害行為性が争われた事案


原告:システム、人材開発会社
被告:ナレッジツール事業会社甲
    一般労働者派遣業会社乙(元請け)


■結論

請求一部認容


■争点

条文 著作権法第15条、21条、19条、20条、113条1項2号

1 原告教本の職務著作性
2 被告甲による著作権侵害性
3 被告甲に対する差止の要否
4 被告甲に対する損害賠償の可否
5 被告乙に対する差止の可否
6 被告乙に対する損害賠償の可否


■判決内容

<経緯>

H14   被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
      原告と被告乙間で講師派遣契約
      原告がパワポ資料「平成14年資料」を作成
H15   被告乙がNTTラーニング、原告とH14と同一内容で契約
      被告乙がNTTラーニングと教材販売契約
      原告と被告乙間で教本制作販売契約
      原告が「平成15年教本」を作成
H16   被告乙がNTTラーニング、原告とH15と同一内容で契約
      原告と被告乙間で教本制作販売契約
      原告が「平成16年教本」を作成
H16.2  Aらが教本「ネットワーク基礎」(第1版)作成
H16.5  教本「ネットワーク基礎」(第2版)作成
H17.6.20 Aが退社
H17.7  教本「ネットワーク基礎」(第3版)作成
H17.8  被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
      被告乙と被告甲間で講師派遣契約
      被告乙とNTTラーニング間で教本制作販売契約
H17.9.7 Aが被告甲を設立、代表取締役に就任
       B,C,Dが被告甲の取締役に就任、その後原告を退社
       被告甲が「別件被告教本」を作成、販売
H18.1.19 原告が被告甲に「別件被告教本」販売中止通知書送付
H18.1.26 被告甲が原告に回答
H18.2.2 原告が被告甲に対して「別件被告教本」について提訴
       (東京地裁平成18(ワ)2012)
H18.3.3 損害賠償金100万円で訴訟上の和解成立

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平成14年〜16年の取引状況

NTTラーニング(CCNA資格試験対策研修開催)

 ↓委託(講師派遣委託)

被告乙(元請け)

 ↓委託(講師派遣委託)

原告

 ・原告社員を講師として派遣
 ・教材作成

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<争点>

1 原告教本の職務著作性

被告甲は、原告に著作権が帰属していることを
認めているので争点とはなっていません。

裁判所は、原告のネットワーク研修に関する業
務を担当する部署であるシステム技術部に所属
する社員らによって作成された原告教本の職務
著作性を認めています。
(22頁以下)


2 被告甲による著作権侵害性

原告会社の退社社員である被告甲の代表取締役及び
取締役のAらは、原告に無断で原告教本に依拠し、
かつこれを複製して被告教本を作成したことを認め
ており、複製権侵害、著作者人格権(同一性保持
権、氏名表示権)侵害が認められています。
(23頁以下)


3 被告甲に対する差止の要否

被告甲は、現在被告教本を作成、販売していない
こと、今後も作成、販売行為による著作権侵害等
のおそれがあるとは認められないとして差止の必
要性が否定されています。
(24頁以下)


4 被告甲に対する損害賠償の可否

被告甲に著作権侵害等についての故意が認められ、
著作権侵害部分として21万円余り(販売数79冊)、
人格権侵害部分として50万円が損害額として認定
されています。
(25頁以下)


5 被告乙に対する差止の可否(113条1項2号)

被告乙が、著作権侵害物である被告甲の教本を情
を知って販売していたかどうか(みなし侵害行為 
113条1項2号)が争点となっています。

裁判所は、被告乙に教本の著作権の帰属関係につ
いて、明確な認識を有していたと認めることはで
きないとしてみなし侵害性を否定、差止請求は理
由がないと判断しています。
(27頁以下)


6 被告乙に対する損害賠償の可否

被告乙については、みなし侵害行為(113条1項2号)
が否定されていることもあって、教本販売行為の
不法行為性が否定されています。
(29頁以下)


結論として、被告甲には71万円余りの損害賠償が
認められ、被告乙に対する請求は棄却されています。


■コメント

退職従業員による研修教材流用事案です。

別の教本に関する別訴で和解が成立している経緯
もあって、今回の教本でも著作権侵害性の部分で
は大きな争点とはなっていません。

見るべきところとしては、研修講師派遣業務の元
請けとなった乙の責任です。

原告会社を退職した従業員らが立ち上げた新会社
がいままで原告会社が行ってきた研修業務を実質
的に引継いで担当するカタチになったわけですが、
元請けの乙が原告との従前の取引関係を踏まえど
の程度教本の著作権関係などに注意をしなければ
ならなかったのか。

今回の事案では、詳細な検討に至っていませんが
(27頁以下)、クライアント先に納品する教材の
著作権関係について、元請けが無関心でいられる
訳にもいかないので、事例判断とはいえ参考とし
たいところです。


■過去のブログ記事

15条関係
2008年1月16日記事
「メンタリングトレーニング職務著作」事件〜著作権 不正競争行為差止等請求事件判決
2006年10月22日記事
「講習会資料職務著作」事件(控訴審)〜著作権 損害賠償等請求事件判決
2006年3月4日記事
「講習会資料職務著作」事件(原審)

21条関係
2007年9月3日記事
「営業ノウハウ書籍」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決


■参考文献

岡邦俊「職務著作以外の業務上の文書を会社が複製できる条件
    「計装士講習資料」事件」
    『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)60頁以下


written by ootsukahoumu at 20:12 │TrackBack(0)知財判決速報2008 

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