2008年04月25日
スターボ広告代理店事件〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
スターボ広告代理店事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)10704損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
クライアントの製品広告に使用されたイラストのラ
イセンス契約関係について、製作・取次を担当した
広告代理店の著作権処理に関する責任が認められた
事案
原告:カー用品製造販売会社
被告:広告代理店
■結論
請求一部認容
■争点
条文 民法415条、709条
1 原告被告間の契約内容
2 被告の履行の有無
3 損害および過失相殺
■判決内容
<経緯>
S60〜 原告被告間で取引開始
H5.9 原告製品「スターボ」(RS-12)のリーフレット製作委託
H5.11 原告製品(RS-12)の自動車雑誌用広告原稿の製作、
広告掲載取次を委託
H5.12 被告が原告に本件イラストのデュープを交付
H6.9 原告製品(RS-50)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H8.9 原告製品(RS-60)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H10.6 原告製品(RS-651)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品のパッケージデザイン製作を委託
H10.8 原告製品(RS-601)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品(RS-701)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H11.9 原告製品(RS-2000)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H12.2〜H14.5
原告新製品について、他社へデザイン製作を依頼、
広告掲載取次ぎは被告へ依頼
H14.3 本件イラストを作成したCが著作権侵害の問い合わせ
H14.7 原告は社内デザイナーによりデザインを製作、
被告が広告取次ぎ
H15.10 Cが原告に対してイラストの使用中止などの通告書送付
H15.10.24 C代理人弁護士による通告書送付
H16.1.10 Cが原告に対してイラスト使用差止等を求め提訴
(東京地裁平成16年(ワ)1398)
H17.5.16 原告とCが損害金1200万円、パッケージ廃棄で和解
------------------------------------------
平成5年9月の契約状況
クライアント(原告) 代表取締役D
↓デザイン製作依頼、印刷取次依頼
広告代理店(被告) 担当者A
↓デザイン発注
デザイン会社 代表取締役B
↓イラスト発注
イラスト製作 C
------------------------------------------
<争点>
1 原告被告間の契約内容
1.イラストの著作権譲渡の有無
原告が被告に対してデザイン製作を依頼した際、本件
イラストの著作権や著作者人格権について取決めた契
約書はありませんでした。
また、取引の経緯からも原告被告間での著作権譲渡の
口頭の合意も認定されるに至っていません。
(20頁以下)
2.契約内容に関する黙示の合意
平成12年4月以降は、原告はデザイン製作を他社に依頼
したり、自社で製作し、広告掲載の取次ぎのみ被告に
依頼していました。
この平成12年以前の原告被告間での合意内容としては、
被告に品番ごとに著作権者との翻案の許諾、著作者人格
権不行使のための権利処理が求められていたこと、また、
12年以降は、被告による権利処理について黙示の合意
がされていたと認定しています。
(21頁以下)
3.被告の契約義務内容
被告としては、著作権、著作者人格権についての権利
処理が求められ、権利処理が行われていなかったこと
を認識し又は認識し得たときは契約による信義則上、
原告への連絡など被害拡大防止義務を負っていたもの
である、とされています。
(22頁)
2 被告の履行の有無
1.被告による権利処理の有無
イラストを作成したCのことを被告担当者Aは当初か
ら知らなかったことから、権利処理は行われていませ
んでした。
(23頁)
2.被告による連絡義務の履行の有無
Cからの苦情の取扱いについて、被告社員Aは積極的
な対応をとっていませんでした。
『平成14年4月当時,原告は,既に,本件イラストをキャラクター的に使用していたものであるから,Aがその使用の中止を求めたとすれば,原告は,その宣伝広告の方法を根本から見直す必要があり,当然,そのことによって原告に生じる損害の補償問題や,それがこじれた場合の取引関係の解消の問題が生じることになり,被告として補償に応じるのか否かを真剣に検討せざるを得ない状況になる。しかしながら,Aが,このような点まで十分考慮し,以後責任を負えないことを明確に伝え,本件イラストの使用中止を強く求めることをうかがわせる状況を認めるに足りる証拠はないものである。C前訴が提起された後においても,C前訴の提起後の原告による使用は原告の自己責任である旨を伝える内容証明を原告に送付したり,被告の担当役員がD社長と面談して,上記の旨を伝えたことがうかがわれないことは,AがCからの苦情につき,明確な態度を採らなかったことをうかがわせるものである。』
(23頁以下)
結論として、被告は原告に対する連絡義務(先行行為
による通知義務)を果たしていないとされています。
3.被告の責に帰すべき事由(過失)
『被告にCが著作者であるとの認識がなかったとしても,広告代理店である被告として,自己の履行補助者の立場にあるゼル社に製作過程等を確認するなどして,著作権法上問題が生じないように権利処理を行う義務を有していたことは当然であるところ,被告がこの義務を履行していないことは明らかである。』
(25頁以下)
裁判所は、広告代理店として著作権法上の権利処理を行
う義務があることを明確に示しています。
3 損害および過失相殺
1.C前訴での和解金
Cと原告が別訴で和解をしていて和解金が1200万円(著
作権侵害800万円、慰謝料400万円)となっていましたが、
この1200万円が被告の債務不履行行為と相当因果関係が
ある損害と判断されています。
(26頁以下)
2.パッケージ廃棄、差替費用など
パッケージの廃棄、差替費用として発生した1979万円余
りの費用が損害として認定されています。
また、原告とCとの訴訟についての弁護士費用420万円も
損害として認定されています。
(27頁)
3.過失相殺
原告がCからの苦情を知った平成15年10月以降について
は、原告にも損害拡大防止が期待されていたとして結論
的には過失割合を原告:被告=4:6と認定しています。
(28頁以下)
結論としては、本訴の弁護士費用とあわせて3000万円余
りが損害額として認められました。
■コメント
被告の広告代理店は、交通広告に実績がある総合広
告代理業社で、戦前からの歴史のある会社です。
広告代理店の担当者は、イラストの使用中止をクラ
イアント先に強く求めることが長年の取引がある大
口取引先に対して出来なかったのかもしれません。
こと著作権侵害事案においては、書籍出版社の責任
にみられるように、取次業、仲介業社に注意義務違
反が認められ易い昨今の状況があるかもしれません。
広告代理店が著作権管理について末端の下請け先ま
で工程管理しなければならないと説示された点は重
要です。
ところで、下請けのデザイナーさんとデザイン製作
会社の間では、イラストの使用範囲を自動車雑誌用
の広告までと考えていたようです(8頁以下参照)。
なお、イラストの作成対価は25万円でした。
パッケージなどの他の媒体での二次使用は別途協議、
イラスト(キャラクター)の髪型や体型、衣装の色
彩を変更する場合はデザイナーさんに話を通せ、勝
手にやるな、ということだったと思われます。
昨年の「おりがみあそび」イラスト事件でもそうで
すが、筋を通さないと末端の制作者さんは黙っては
いません。
とはいえ、エンジンスターター用の遠隔リモコンを
手に持つミニスカートの女性の後ろ姿のイラストだ
けで4桁、5桁の損害賠償をデザイナーさんから請求
されたら正直なところ、ちょっとどうかな?という
感じですが、これがキャラクター展開(「スターボ
ねえちゃん」)していたとなると話が違うのかもし
れません。
■参考判例
・イラスト使用関係で広告代理店の責任が争点となった事例
恐竜イラスト事件(原審)
東京地裁平成10.10.26平成8(ワ)3385損害賠償請求事件
日本ユニ著作権センター/判例全文・1998-10-26
・イラストの無断改変について出版社に責任が認められた事例
「おりがみあそび」イラスト事件
東京地裁平成19.11.16平成19(ワ)4822損害賠償等請求事件PDF
■参考サイト
原告会社製品
リモコンエンジンスターター[STARBOシリーズ]|サンヨーテクニカ
スターボRS-1500パッケージデザイン
isshiy's room エンジンスターター・スターボ装着
■参考文献
斉藤博ほか「シンポジウム 広告と著作権・著作隣接権」
『著作権研究』21号(1995)71頁以下
■追記(08.5.7)
企業法務戦士の雑感 5月7日記事
■[企業法務][知財]「スターボねえちゃん」をめぐる騒動の果てに。
*企業法務戦士の雑感さんの記事にイラストレーターさんの
訴状のリンクの紹介があります。
訴状
参考サイト
著作権その可能性の中心(弁護士 柳原敏夫先生)
陳述書(1)
*イラストレーターさんの原告側陳述書も掲載されています。
スターボ広告代理店事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)10704損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
クライアントの製品広告に使用されたイラストのラ
イセンス契約関係について、製作・取次を担当した
広告代理店の著作権処理に関する責任が認められた
事案
原告:カー用品製造販売会社
被告:広告代理店
■結論
請求一部認容
■争点
条文 民法415条、709条
1 原告被告間の契約内容
2 被告の履行の有無
3 損害および過失相殺
■判決内容
<経緯>
S60〜 原告被告間で取引開始
H5.9 原告製品「スターボ」(RS-12)のリーフレット製作委託
H5.11 原告製品(RS-12)の自動車雑誌用広告原稿の製作、
広告掲載取次を委託
H5.12 被告が原告に本件イラストのデュープを交付
H6.9 原告製品(RS-50)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H8.9 原告製品(RS-60)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H10.6 原告製品(RS-651)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品のパッケージデザイン製作を委託
H10.8 原告製品(RS-601)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品(RS-701)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H11.9 原告製品(RS-2000)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H12.2〜H14.5
原告新製品について、他社へデザイン製作を依頼、
広告掲載取次ぎは被告へ依頼
H14.3 本件イラストを作成したCが著作権侵害の問い合わせ
H14.7 原告は社内デザイナーによりデザインを製作、
被告が広告取次ぎ
H15.10 Cが原告に対してイラストの使用中止などの通告書送付
H15.10.24 C代理人弁護士による通告書送付
H16.1.10 Cが原告に対してイラスト使用差止等を求め提訴
(東京地裁平成16年(ワ)1398)
H17.5.16 原告とCが損害金1200万円、パッケージ廃棄で和解
------------------------------------------
平成5年9月の契約状況
クライアント(原告) 代表取締役D
↓デザイン製作依頼、印刷取次依頼
広告代理店(被告) 担当者A
↓デザイン発注
デザイン会社 代表取締役B
↓イラスト発注
イラスト製作 C
------------------------------------------
<争点>
1 原告被告間の契約内容
1.イラストの著作権譲渡の有無
原告が被告に対してデザイン製作を依頼した際、本件
イラストの著作権や著作者人格権について取決めた契
約書はありませんでした。
また、取引の経緯からも原告被告間での著作権譲渡の
口頭の合意も認定されるに至っていません。
(20頁以下)
2.契約内容に関する黙示の合意
平成12年4月以降は、原告はデザイン製作を他社に依頼
したり、自社で製作し、広告掲載の取次ぎのみ被告に
依頼していました。
この平成12年以前の原告被告間での合意内容としては、
被告に品番ごとに著作権者との翻案の許諾、著作者人格
権不行使のための権利処理が求められていたこと、また、
12年以降は、被告による権利処理について黙示の合意
がされていたと認定しています。
(21頁以下)
3.被告の契約義務内容
被告としては、著作権、著作者人格権についての権利
処理が求められ、権利処理が行われていなかったこと
を認識し又は認識し得たときは契約による信義則上、
原告への連絡など被害拡大防止義務を負っていたもの
である、とされています。
(22頁)
2 被告の履行の有無
1.被告による権利処理の有無
イラストを作成したCのことを被告担当者Aは当初か
ら知らなかったことから、権利処理は行われていませ
んでした。
(23頁)
2.被告による連絡義務の履行の有無
Cからの苦情の取扱いについて、被告社員Aは積極的
な対応をとっていませんでした。
『平成14年4月当時,原告は,既に,本件イラストをキャラクター的に使用していたものであるから,Aがその使用の中止を求めたとすれば,原告は,その宣伝広告の方法を根本から見直す必要があり,当然,そのことによって原告に生じる損害の補償問題や,それがこじれた場合の取引関係の解消の問題が生じることになり,被告として補償に応じるのか否かを真剣に検討せざるを得ない状況になる。しかしながら,Aが,このような点まで十分考慮し,以後責任を負えないことを明確に伝え,本件イラストの使用中止を強く求めることをうかがわせる状況を認めるに足りる証拠はないものである。C前訴が提起された後においても,C前訴の提起後の原告による使用は原告の自己責任である旨を伝える内容証明を原告に送付したり,被告の担当役員がD社長と面談して,上記の旨を伝えたことがうかがわれないことは,AがCからの苦情につき,明確な態度を採らなかったことをうかがわせるものである。』
(23頁以下)
結論として、被告は原告に対する連絡義務(先行行為
による通知義務)を果たしていないとされています。
3.被告の責に帰すべき事由(過失)
『被告にCが著作者であるとの認識がなかったとしても,広告代理店である被告として,自己の履行補助者の立場にあるゼル社に製作過程等を確認するなどして,著作権法上問題が生じないように権利処理を行う義務を有していたことは当然であるところ,被告がこの義務を履行していないことは明らかである。』
(25頁以下)
裁判所は、広告代理店として著作権法上の権利処理を行
う義務があることを明確に示しています。
3 損害および過失相殺
1.C前訴での和解金
Cと原告が別訴で和解をしていて和解金が1200万円(著
作権侵害800万円、慰謝料400万円)となっていましたが、
この1200万円が被告の債務不履行行為と相当因果関係が
ある損害と判断されています。
(26頁以下)
2.パッケージ廃棄、差替費用など
パッケージの廃棄、差替費用として発生した1979万円余
りの費用が損害として認定されています。
また、原告とCとの訴訟についての弁護士費用420万円も
損害として認定されています。
(27頁)
3.過失相殺
原告がCからの苦情を知った平成15年10月以降について
は、原告にも損害拡大防止が期待されていたとして結論
的には過失割合を原告:被告=4:6と認定しています。
(28頁以下)
結論としては、本訴の弁護士費用とあわせて3000万円余
りが損害額として認められました。
■コメント
被告の広告代理店は、交通広告に実績がある総合広
告代理業社で、戦前からの歴史のある会社です。
広告代理店の担当者は、イラストの使用中止をクラ
イアント先に強く求めることが長年の取引がある大
口取引先に対して出来なかったのかもしれません。
こと著作権侵害事案においては、書籍出版社の責任
にみられるように、取次業、仲介業社に注意義務違
反が認められ易い昨今の状況があるかもしれません。
広告代理店が著作権管理について末端の下請け先ま
で工程管理しなければならないと説示された点は重
要です。
ところで、下請けのデザイナーさんとデザイン製作
会社の間では、イラストの使用範囲を自動車雑誌用
の広告までと考えていたようです(8頁以下参照)。
なお、イラストの作成対価は25万円でした。
パッケージなどの他の媒体での二次使用は別途協議、
イラスト(キャラクター)の髪型や体型、衣装の色
彩を変更する場合はデザイナーさんに話を通せ、勝
手にやるな、ということだったと思われます。
昨年の「おりがみあそび」イラスト事件でもそうで
すが、筋を通さないと末端の制作者さんは黙っては
いません。
とはいえ、エンジンスターター用の遠隔リモコンを
手に持つミニスカートの女性の後ろ姿のイラストだ
けで4桁、5桁の損害賠償をデザイナーさんから請求
されたら正直なところ、ちょっとどうかな?という
感じですが、これがキャラクター展開(「スターボ
ねえちゃん」)していたとなると話が違うのかもし
れません。
■参考判例
・イラスト使用関係で広告代理店の責任が争点となった事例
恐竜イラスト事件(原審)
東京地裁平成10.10.26平成8(ワ)3385損害賠償請求事件
日本ユニ著作権センター/判例全文・1998-10-26
・イラストの無断改変について出版社に責任が認められた事例
「おりがみあそび」イラスト事件
東京地裁平成19.11.16平成19(ワ)4822損害賠償等請求事件PDF
■参考サイト
原告会社製品
リモコンエンジンスターター[STARBOシリーズ]|サンヨーテクニカ
スターボRS-1500パッケージデザイン
isshiy's room エンジンスターター・スターボ装着
■参考文献
斉藤博ほか「シンポジウム 広告と著作権・著作隣接権」
『著作権研究』21号(1995)71頁以下
■追記(08.5.7)
企業法務戦士の雑感 5月7日記事
■[企業法務][知財]「スターボねえちゃん」をめぐる騒動の果てに。
*企業法務戦士の雑感さんの記事にイラストレーターさんの
訴状のリンクの紹介があります。
訴状
参考サイト
著作権その可能性の中心(弁護士 柳原敏夫先生)
陳述書(1)
*イラストレーターさんの原告側陳述書も掲載されています。
written by ootsukahoumu at 06:09│TrackBack(0)│知財判決速報2008












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