2008年02月29日
「社保庁LAN公衆送信権侵害」事件〜著作権 著作権侵害行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「社保庁LAN公衆送信権侵害」事件
★東京地裁平成20.2.26平成19(ワ)15231著作権侵害行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 中島基至
裁判官 関根澄子
■事案
社会保険庁LANシステム中の電子掲示板に無断で
社保庁職員が原告の雑誌記事を掲載したことが複製権、
公衆送信権侵害となるかどうかが争われた事案
原告:ジャーナリスト
被告:社会保険庁
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第42条、23条、2条1項7号の2、21条、114条3項
1 公衆送信権侵害の成否
2 損害論
3 差止請求の肯否
■判決内容
<争点>
1 公衆送信権侵害の成否
(1)公衆送信性(2条1項7号の2)の肯否
社保庁が管理運営する電子掲示板に無断で原告の記事が
職員によって掲載された点について、裁判所は、
『本件LANシステムは,社会保険庁内部部局,施設等機関,地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステムであり(前提となる事実),その一つの部分の設置の場所が,他の部分の設置の場所と同一の構内に限定されていない電気通信設備に該当する。』
『したがって,社会保険庁職員が,平成19年3月19日から同年4月16日の間に,社会保険庁職員が利用する電気通信回線に接続している本件LANシステムの本件掲示板用の記録媒体に,本件著作物1ないし4を順次記録した行為(本件記録行為)は,本件著作物を,公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことを可能化したもので,原告が専有する本件著作物の公衆送信(自動公衆送信の場合における送信可能化を含む。)を行う権利を侵害するものである。』
として、社保庁職員による電子掲示板への原告記事の記録行為が
送信可能化行為にあたり、原告の公衆送信権を侵害するもの
と判断しました。
(16頁以下)
(2)42条1項(行政目的複製)に該当するか
被告側は、電子掲示板への複製行為は行政目的のための
内部資料としての作成行為であり、42条や49条1項1号の
趣旨からすれば42条の目的以外の目的で当該複製物が
公衆送信されたものではない以上、著作権者の公衆送信権
を害さないと解すべきであると反論しています。
しかし、裁判所は、
『社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかならない。』
としたうえで、
『42条1項は,「著作物は・・・行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,複製することができる。」と規定しているとおり,特定の場合に,著作物の複製行為が複製権侵害とならないことを認めた規定であり,この規定が公衆送信(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む。)を行う権利の侵害行為について適用されないことは明らかである。』
『また,42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである。』
として、42条1項の形式面と実質面(許容性)から
被告の主張を容れませんでした。
(*なお、複製権侵害の点については、選択的請求原因として
公衆送信権侵害の点が先に判断されています。)
2 損害論
電子書籍として配信されている原告の書籍の配信料や
著作権使用料を参考とし、電子掲示板に掲載された記事
へのアクセス数を7000回としたうえで(114条の5)、
公衆送信権侵害による損害額を22万円余り、
弁護士費用を20万円の合計42万円余と認定しました。
(17頁以下)
3 差止請求の肯否
(1)削除請求(112条2項)
削除請求については、すでに社保庁が新聞報道用の掲示板を
閉鎖していることから必要性を認めませんでした。
(2)予防的差止(112条1項)
原告著作物の将来の掲載行為について、社保庁が掲載行為を
再開するおそれがあることを認めて予防的差止が肯定されて
います。
(21頁以下)
■コメント
「週刊現代」に掲載された原告執筆の記事4件について、
社会保険庁が管理運営する電子掲示板内に職員が無断で
アップして利用していたという事案です。
LANで結ばれている範囲が社会保険庁の内部部局課だけでなく
社会保険庁大学校や社会保険庁業務センター、
地方社会保険事務局、社会保険事務所と、広範囲にわたる
ものでしたので、「同一の構内」(2条1項7号の2)という
場所的範囲論は争点とはなっていません。
被告は42条1項と49条1項1号の解釈論で反論を
試みましたが、設楽コートに一蹴されてしまいました。
これで、国は「土地宝典」事件に続き、著作権侵害事案で
二連敗となってしまいました。
■参考ブログ
企業法務戦士の雑感
[企業法務][知財]社保庁の憂鬱
Matimulog
jugement:社保庁の著作権侵害事件
名古屋の商標亭
LANシステムの掲示板への無断転載(08/03/01)
社保庁の業務用の内部資料として?(08/03/03)
ピリ辛著作権相談室
Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…
■参考文献
加戸守行「著作権法逐条講義 五訂新版」(2006)32頁、289頁以下
■追記(08.03.21)
企業法務戦士の雑感(2008-03-21)
■[企業法務][知財]権利制限規定の限界(続・社保庁の憂鬱)
「社保庁LAN公衆送信権侵害」事件
★東京地裁平成20.2.26平成19(ワ)15231著作権侵害行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 中島基至
裁判官 関根澄子
■事案
社会保険庁LANシステム中の電子掲示板に無断で
社保庁職員が原告の雑誌記事を掲載したことが複製権、
公衆送信権侵害となるかどうかが争われた事案
原告:ジャーナリスト
被告:社会保険庁
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第42条、23条、2条1項7号の2、21条、114条3項
1 公衆送信権侵害の成否
2 損害論
3 差止請求の肯否
■判決内容
<争点>
1 公衆送信権侵害の成否
(1)公衆送信性(2条1項7号の2)の肯否
社保庁が管理運営する電子掲示板に無断で原告の記事が
職員によって掲載された点について、裁判所は、
『本件LANシステムは,社会保険庁内部部局,施設等機関,地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステムであり(前提となる事実),その一つの部分の設置の場所が,他の部分の設置の場所と同一の構内に限定されていない電気通信設備に該当する。』
『したがって,社会保険庁職員が,平成19年3月19日から同年4月16日の間に,社会保険庁職員が利用する電気通信回線に接続している本件LANシステムの本件掲示板用の記録媒体に,本件著作物1ないし4を順次記録した行為(本件記録行為)は,本件著作物を,公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことを可能化したもので,原告が専有する本件著作物の公衆送信(自動公衆送信の場合における送信可能化を含む。)を行う権利を侵害するものである。』
として、社保庁職員による電子掲示板への原告記事の記録行為が
送信可能化行為にあたり、原告の公衆送信権を侵害するもの
と判断しました。
(16頁以下)
(2)42条1項(行政目的複製)に該当するか
被告側は、電子掲示板への複製行為は行政目的のための
内部資料としての作成行為であり、42条や49条1項1号の
趣旨からすれば42条の目的以外の目的で当該複製物が
公衆送信されたものではない以上、著作権者の公衆送信権
を害さないと解すべきであると反論しています。
しかし、裁判所は、
『社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかならない。』
としたうえで、
『42条1項は,「著作物は・・・行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,複製することができる。」と規定しているとおり,特定の場合に,著作物の複製行為が複製権侵害とならないことを認めた規定であり,この規定が公衆送信(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む。)を行う権利の侵害行為について適用されないことは明らかである。』
『また,42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである。』
として、42条1項の形式面と実質面(許容性)から
被告の主張を容れませんでした。
(*なお、複製権侵害の点については、選択的請求原因として
公衆送信権侵害の点が先に判断されています。)
2 損害論
電子書籍として配信されている原告の書籍の配信料や
著作権使用料を参考とし、電子掲示板に掲載された記事
へのアクセス数を7000回としたうえで(114条の5)、
公衆送信権侵害による損害額を22万円余り、
弁護士費用を20万円の合計42万円余と認定しました。
(17頁以下)
3 差止請求の肯否
(1)削除請求(112条2項)
削除請求については、すでに社保庁が新聞報道用の掲示板を
閉鎖していることから必要性を認めませんでした。
(2)予防的差止(112条1項)
原告著作物の将来の掲載行為について、社保庁が掲載行為を
再開するおそれがあることを認めて予防的差止が肯定されて
います。
(21頁以下)
■コメント
「週刊現代」に掲載された原告執筆の記事4件について、
社会保険庁が管理運営する電子掲示板内に職員が無断で
アップして利用していたという事案です。
LANで結ばれている範囲が社会保険庁の内部部局課だけでなく
社会保険庁大学校や社会保険庁業務センター、
地方社会保険事務局、社会保険事務所と、広範囲にわたる
ものでしたので、「同一の構内」(2条1項7号の2)という
場所的範囲論は争点とはなっていません。
被告は42条1項と49条1項1号の解釈論で反論を
試みましたが、設楽コートに一蹴されてしまいました。
これで、国は「土地宝典」事件に続き、著作権侵害事案で
二連敗となってしまいました。
■参考ブログ
企業法務戦士の雑感
[企業法務][知財]社保庁の憂鬱
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名古屋の商標亭
LANシステムの掲示板への無断転載(08/03/01)
社保庁の業務用の内部資料として?(08/03/03)
ピリ辛著作権相談室
Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…
■参考文献
加戸守行「著作権法逐条講義 五訂新版」(2006)32頁、289頁以下
■追記(08.03.21)
企業法務戦士の雑感(2008-03-21)
■[企業法務][知財]権利制限規定の限界(続・社保庁の憂鬱)
hayabusa9999 at 17:52
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│知財判決速報2008












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