裁判所HP 知的財産裁判例集より

「アイデア提案書」事件

東京地裁平成20.1.29平成19(ワ)18805知的財産に関する使用料請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官     平田直人
裁判官     柵木澄子


■事案

アイデア提案書の表現が特許公報や商品カタログに使用されたとして
著作権侵害性が争われた事案

原告:被告会社元従業員
被告:技術者派遣事業・技術プロジェクト受託事業会社


■結論

請求棄却


■争点

条文 著作権法第15条、特許法35条

1 特許を受ける権利の侵害の有無
2 著作権の侵害の有無


■判決内容

<経緯>

S63.05  原告がアイデアを被告に提出
H01.03  被告が特許出願
H01.04  原告被告間の譲渡証書の作成
H01    実施相当品の販売(〜H08)
H03.04  原告が被告会社を退職
H06.12  登録


<争点>

1 特許を受ける権利の侵害の有無

原告は、発明の性質について自由発明であり職務発明ではないと
主張しましたが、原告のアイデアは被告との関係で原告の職務に
属するものであったとして、裁判所に容れられていません。
また、仮に職務発明が成立していないとしても、特許を受ける権利
について被告に譲渡したことが認められる、としています。
(8頁以下)


2 著作権の侵害の有無

原告が被告に提出したアイデアの提案書について、原告は提案書の
著作物性を主張。
本件特許公報の表現や実施相当品(被告商品)カタログの表現との
類似性を捉えて著作権侵害性を争点としました。

しかし、裁判所は、本件提案書が職務著作であるとして被告が著作者
であると判断。
また、仮に本件提案書について職務著作が成立しなくても、著作物の
利用について原告の許諾があったものと推認できるとしています。
(11頁以下)

結論として、特許を受ける権利も著作権の侵害も無いとして
請求が棄却されています。


■コメント

本人訴訟で判決文全12ぺージのあっさりした内容です。

被告商品「メルアート21」は、被告サイトの画像や公開特許公報を
見てみるとTVのような筐体から周辺の温度、湿度、環境音を検知して
香りや音を出す静止画像装置だったようです。
合計100台(1台のセット価格が108万円)の販売でした。