Tweet

2007年12月12日

「プリペイドカード代金決済システム営業秘密」事件〜不正競争防止法 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「プリペイドカード代金決済システム営業秘密」事件

東京地裁平成19.11.27平成17(ワ)23171損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     関根澄子
裁判官     古庄研


■事案

プリペイドカードのカードレス発券事業に関し、相手方が有する秘密情報の
取扱いについて不正競争行為性が争われた事案

原告:カードレスシステム企画設計運営会社
被告:携帯電話等販売、代理店業務会社


■結論

請求棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項4号、7号、14号、民法709条

1 不正競争防止法2条1項7号の成否
2 秘密保持契約違反の有無
3 黙示の合意に基づく守秘義務違反の有無
4 売買基本契約違反の有無
5 不正競争防止法2条1項4号の成否
6 情報詐取としての不法行為性
7 継続的契約関係破棄の不法行為性
8 不正競争防止法2条1項14号の成否
9 信用毀損としての不法行為性



■判決内容

<経緯>

H15.12.15 原告被告間で事業提携を検討
H16.02.16 原告と被告が秘密保持契約を締結
H16.03    原告と被告は提携事業のチラシを作成し配布、営業活動
H16.10    被告は別会社の同種システムの情報を入手
H16.11.01 原告社員が退職後、被告へ入社
H16.12.13 業務提携検討終了を確認のうえ秘密保持契約終了合意の覚書を
       締結
H16.12.15 原告被告は秘密情報一覧に捺印
H17.01.17 原告の特許出願に係る発明の技術的範囲について被告が鑑定
H17.02.15 原告と被告がPIN商品売買基本契約を締結
H17.04.28 被告がコンビニ会社に特許報告文書を手交
H17.07    被告は別会社とともにサービスを提供開始


<争点>

1 不正競争防止法2条1項7号の成否

原告は、サーバシステムの構成などの技術情報や商品別販売手数料率など
の情報の営業秘密の要件充足性などを主張しましたが、裁判所は

しかし,本件において,原告は,被告において,原告の本件営業秘密のうちどの情報を本件被告サービスのどの部分に使用したのか,具体的に特定した主張も立証もしていない。また,本件営業秘密が本件被告サービスの構築に有用であるとはいえるとしても,本件営業秘密を使用しなければ,本件被告サービスを構築することが不可能であることを示す証拠は見当たらない。
(54頁)

として、秘密の使用の点から7号の不正競争行為性を否定しています。


2 秘密保持契約違反の有無

上記1で営業秘密の使用が認められていないので、秘密保持契約違反性も
否定されています。
(55頁)


3 黙示の合意に基づく守秘義務違反の有無

秘密保持契約上の秘密情報に該当しない営業秘密について、秘密保持契約と
同様の守秘義務に服するという黙示の合意が成立しているとする原告の主張
は容れられていません。
(55頁以下)

とくに当事者間で秘密保持契約上の対象となる秘密を限定的に取扱っていた
経緯もあって黙示の合意というものを認めるのは難しい状況となっています。


4 売買基本契約違反の有無

PIN(Personal Identification Number プリペイド式で提供されるサービス
の利用権を当該サービスの提供事業者から購入した者を識別する番号)の
売買契約上の秘密保持義務違反性も原告は主張しましたが、秘密の特定性、
使用性の立証が尽くされておらず容れられていません。
(56頁)


5 不正競争防止法2条1項4号の成否

被告が架空の事業提携を持ち出すなどして原告から営業秘密を不正に取得し
これを使用するといった目的が被告にあたっとは認められていません。
(56頁以下)


6 情報詐取としての不法行為性

営業秘密の不正使用の目的が無く、また使用したことを認めるに足りる証拠
もないと判断されています。
(57頁以下)


7 継続的契約関係破棄の不法行為性

10ヶ月に及ぶ提携交渉を経たうえで秘密保持契約を合意解除させて提携交渉
を打ち切った被告の行為は、継続的な契約関係の不当な破棄であるとして
不法行為にあたると原告は主張しました。
しかし、裁判所は、秘密保持契約書に事業提携を行わなかった場合の競業避
止義務規定がないことから、競業の意図が被告にあったとしても提携交渉打
ち切りが違法であるということはできないと判断しています。
(58頁以下)


8 不正競争防止法2条1項14号の成否

被告がコンビニ会社側に報告文書(特許出願の特許性についての文書)を
手交した行為の営業誹謗行為性が争われています。
結論的には先行特許出願部分については虚偽事実の告知性が肯定された
ものの、文書交付について差止の必要性がなく、また具体的な損害が原告
に生じていないとして原告の主張は容れられていません。
(59頁以下)


9 信用毀損としての不法行為性

上記8のほかに被告による報告文書配布によって原告の社会的評価が低下
して損害が生じていると原告は主張しましたが、この点についても容れら
れていません。
(63頁以下)


■コメント

事業提携交渉にあたって秘密保持契約を締結し、取得情報の事後処理も
それなりに行われている(51頁以下参照)にもかかわらず紛争になって
しまっています。

提携事業の正式契約締結前の交渉の成熟度合いをひとまず措くとしても、
営業秘密保護の不正競争防止法からのアプローチについては立証の困難性
がつきまといました。


■当事者サイト

原告会社ニュースリリース
(特になし)

被告会社IR情報
(特になし)

written by ootsukahoumu at 15:15│TrackBack(0)知財判決速報2007 

トラックバックURL