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2007年11月08日

「液晶テレビ営業誹謗」事件〜不正競争防止法 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「液晶テレビ営業誹謗」事件(アクティブマトリクス型表示装置事件)

知財高裁平成19.10.31平成18(ネ)10040特許権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官     大鷹一郎
裁判官     嶋末和秀


★原審
東京地裁平成18.3.24平成17(ワ)3089特許権侵害差止請求権不存在確認

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■事案

特許権に基づく差止請求権を被保全権利とし、本件製品を販売する
原告の顧客を相手方として、販売禁止等の仮処分を申し立てる被告
の行為等が不正競争防止法2条1項14号の営業誹謗行為に当たるかど
うかが争点となった事案の控訴審

原告(被控訴人・附帯控訴人):液晶パネル製造販売会社(台湾法人)
被告(控訴人・附帯被控訴人):液晶ディスプレイ研究開発会社

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■結論

請求一部変更

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号

1 仮処分申立て及び記者発表の不法行為性
2 仮処分申立て及び記者発表の営業誹謗行為性(14号該当性)

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■判決内容


<争点>

1 仮処分申立て及び記者発表の不法行為性


被告がした仮処分申立てと記者発表が不法行為となるかどうかについて、

法的紛争の解決を求めて訴えを提起することは,原則として正当な行為であって,不法行為を構成することはない。しかし,提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合には,違法な行為として不法行為を構成するというべきである(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)

としたうえで、この理は仮処分の申立においても同様であり、

権利の行使に藉口して,競業者の取引先に対する信用を毀損し,市場において優位に立つこと等を目的として,競業者の取引先を相手方とする仮処分申立てがされたような事情が認められる場合には,同仮処分の申立ては違法な行為として不法行為を構成するというべきである。

そして当該仮処分の申立が違法な行為となるかどうかは、競業者との交渉
の経緯、相手方の対応等を総合して判断するべきであると説示。
(52頁)

あてはめとしては、特許権に無効理由が存在すること、調査の不十分性、
警告内容の不十分性、販売店への事前予告無しの申立てであったこと、
販売店の対応予測などから、本件仮処分申立ては、原告に圧力をかけ被
告に有利な内容のライセンス契約を締結させるための手段として行われ
たものであり、著しく相当性を欠くものであるとされました。
(52頁以下)

また、記者発表についても、仮処分申立てと同様に有利なライセンス契約
の締結のための手段として用いられたもので、著しく相当性を欠くとされ
ています。
(59頁)

以上から、被告がした仮処分申立てと記者発表は不法行為を構成すると
されました。


2 仮処分申立て及び記者発表の営業誹謗行為性(14号該当性)


原審では、被告の特許権に無効事由があることを前提に仮処分申立て
により東京地裁をしてその申立書を販売店に送達させた行為は告知行
為に該当する。
記者発表については流布行為に該当するが、「虚偽」要件を具備しな
いとして、結論的には仮処分申立てについてだけ不正競争防止法2条1項
14号の営業誹謗行為にあたると判断していました。
(原審28頁以下)

これに対して、控訴審では、仮処分の申立てについて、

仮処分の申立てが権利者が義務者に対して権利を実現するために設けられた仮の救済制度であって,かかる救済制度の利用及びこれに当然随伴する行為を差し止めることは不競法の予定するところではない点に鑑みれば,特許権侵害等を理由とする差止の仮処分など仮の地位を定める仮処分の申立てに伴って,申立書の内容を相手方に知らしめることを,不競法2条1項14号所定の告知行為であるとすることはできない。
(59頁以下)

として、仮処分申立ての告知行為性を否定しています。

そして、記者発表については、

1審被告は,本件記者発表により,本件仮処分申立ての事実や本件仮処分事件における自己の申立内容や事実的主張,法律的主張の内容を説明したものであり,その公表自体について,虚偽の事実を告知・流布したものと評価することはできない
(60頁)

と判断しています。

なお、記者発表と「虚偽の事実」性についての判例状況に関し、
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)700頁
以下参照。

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■コメント

原審と控訴審とでは、仮処分申立ての営業誹謗行為性(14号該当性)
について判断が分かれる結果となっています。

侵害訴訟・仮処分の提起、追行が不法行為となるかどうかの
争点は以前にもいくつかの事案に現れていましたが、仮処分
申立て自体の営業誹謗行為性が正面から争点となった事案は
珍しいかもしれません。
なお、後掲「医薬品特許権侵害営業誹謗」事件判例参照。

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■参考文献

田村善之「著作権法概説第二版」(2001)440頁以下

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■参考判例

「医薬品特許権侵害営業誹謗」事件
大阪地裁平成19年02月15日平成17(ワ)2535損害賠償請求事件PDF
PDF116頁以下参照

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■関連サイト

原審に関する原告プレスリリース
平成18年4月3日発表「日本でのSEL社LCD特許にかかる勝訴判決について」PDF

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■追記(09/7/18)

洪 振豪「知的財産権の侵害警告と「正当な権利行使」(1)-アクティブマトリクス型表示装置事件-」『知的財産法政策学研究』23号(2009)285頁以下


written by ootsukahoumu at 05:33│TrackBack(0)知財判決速報2007 

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