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2007年09月21日

「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対角川事件)〜著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対角川事件)

東京地裁平成19年09月14日平成19(ワ)11535著作権侵害差止請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官     大竹優子
裁判官     中村恭


なお、同日同一コートでの同一被告に対する同種事案の
著作権侵害差止請求事件判決について、

対東宝事件
東京地裁平成19年09月14日平成19(ワ)8141著作権侵害差止請求事件PDF


■事案

黒澤明監督「羅生門」「静かなる決闘」映画作品の保護期間をめぐり
映画の著作者が黒澤監督なのか映画会社であるのかが争われた事案

原告:映画会社
被告:格安DVD製造販売会社


■結論

請求認容


■争点

条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号

1 映画の著作者は誰か
2 映画の著作権の存続期間



■判決内容

<経緯>

S24年 「静かなる決闘」公開
25年  「羅生門」   公開

24年〜 黒澤監督から旧大映へ著作権譲渡
46年  旧大映破産宣告
51年  新大映へ著作権譲渡
H10年  黒澤監督死去
14年  角川へ著作権譲渡
19年〜 被告がDVD商品を製造輸入販売


*参考:旧著作権法6条

「官公衙学校社寺協会会社其ノ他団体ニ於テ著作ノ名義ヲ以テ発行又ハ興行シタル著作物ノ著作権ハ発行又ハ興行ノトキヨリ三十年間継続ス」


<争点>

1 映画の著作者は誰か

映画の著作者が法人である映画会社かどうかという点について、
裁判所は、

確かに,映画の著作物は,映画製作者が,企業活動として,当初から映画の著作物を商品として流通させる目的で企画し,多額の製作費を投入して製作するものであり,その製作には脚本,音楽,制作,監督,演出,俳優,撮影,美術,録音,編集の担当者など多数の者が関与しており,その関与の範囲や程度も様々であるという特殊性を有する。しかし,著作者とは元来著作物を創作する者をいうから,映画利用の円滑化を図るために,映画製作者に著作権を帰属させる必要があるとしても,そのことから直ちに映画製作者が映画の著作物の著作者となると解することはできず,映画の著作物の著作者は,新著作権法16条と同様に,映画の制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に関与した者であると解するのが相当である。
(ウ) そして,この解釈の正当性は,後記ウの立法者意思及びエの新著作権法の審議経過によっても裏付けられる。

(14頁以下)

旧著作権法下での創作物の著作者の認定についても現行法(16条)
と基本的には同じであると判断しています。

結論としては、黒澤監督が著作者の一人であると認定しています。


2 映画の著作権の存続期間

映画の冒頭部分には表題に続き、「監督 黒澤明」と表示され、
次に旧大映の社章とともに「大映株式會社製作」と表示されて
いました。
この点について、裁判所は、著作者の実名で公表されているこ
とから本件映画は旧著作権法6条にいう団体名義の著作物に当た
らないと判断しました。
(21頁)

結論として、監督が死亡した翌年の平成11年から起算して38年
間存続することになり(旧著作権法3条、9条、52条1項)、映画
の著作権は少なくとも平成48年12月31日まで存続するとされま
した。

最終的に被告のDVD複製行為、頒布目的輸入行為が著作権侵害行為
にあたり、差止請求も認められました。


■コメント

民事40部で角川(2作品)と東宝(「姿三四郎」ほか8作品)に
ついてほぼ同一内容での判断が出ています。


ところで、旧著作権法当時は、著作者は自然人のみという解釈
でした(判旨6頁以下)。

現実に創作行為を為したる者が著作者であるから,その著作を自己の発意で為したか又は他人から依頼を受けて為したるかは問ところでなく,創作行為さえあれば,何れの場合も著作者である。又被傭者がその職務上著作したものであっても同じであって,現実に創作行為を為したる者が著作者であって,現実に創作行為をしない依頼者又は雇傭主が著作者となることは有り得ない。同様の趣旨から,自然人でない法人が著作者となることは有り得ない。

なる程映画作成には大きな資本を必要とし,その資本が無くては如何に名監督,名俳優等が集っても名画は完成できないのであり,できあがった後も,資本がなければ,広く映画館を通じて上映することも難かしいから,映画会社を著作権者と認定することが,実際にも適合し且権利の安定上妥当のようにも思われた。しかし又本章第一節でも述べたように,著作者は自然人に限るとすることが正論であるとするならば,映画会社は法人であるから,これを著作者と断定することは妥当を欠く。そこで昭和6年の立法当時は著作者は映画監督であると一応断定し,完成された映画の著作権は映画監督が,原始取得するものであるが,彼は映画会社の被傭者乃至専属契約下に在る者であるから,契約に基き,映画著作権は映画完成と同時に映画会社に移るものとする意見に統一して,国会に臨んだ

また、旧著作権法6条の団体名義について、

法律は,単に団体名義だけで発行されて,自然人の著作者名が掲げられていない出版物が存立することを想定して,保護期間に関してのみ第6条の規定を設けたものと考える。
(判旨12頁)

原告主張の小林尋次「現行著作権法の立法理由と解釈」(1958)
からの引用部分ですが、立法者意思を尋ねることもまた、現行
法の理解を深めるためには不可欠のところといえます。


■参考ブログ

「知」的ユウレイ屋敷
[時事][著作権]黒澤作品の保護期間を巡って感じるちょっとした違和感


■過去のブログ

チャップリン作品格安DVD事件について

2007年09月01日記事
「『モダンタイムス』格安DVD」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

東京地裁平成19年08月29日平成18(ワ)15552著作権侵害差止等請求事件PDF


■追記(09.10.01)

企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財]綱渡りの主張


■追記(08.02.15)

LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース
速報判例解説 知的財産法 No.5
駒田泰土「旧著作権法施行時に製作、公表された映画について、その著作権の存続期間が満了していないとされた事例(東京地方裁判所平成19年9月14日判決)
PDF

岡邦俊「自然人を著作者とする映画の保護期間の延長」『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)223頁以下


■追記(08.03.08)

2008年01月29日記事
「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対松竹事件)〜著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

2008年03月08日記事
「『モダンタイムス』格安DVD」事件(控訴審)〜著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

written by ootsukahoumu at 07:01│TrackBack(0)知財判決速報2007 

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