裁判所HP 知的財産裁判例集より

「レース付衣料品」事件

大阪地裁平成19.7.3平成18(ワ)10470不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     間史恵
裁判官     古庄研



■事案

レースが付されたカーディガンやノースリーブ、パーカーなどの
衣料品の模倣性が争われた事案

原告:衣料品製造販売業
被告:婦人服製造販売業



■結論

請求一部認容



■争点

条文 不正競争防止法2条1項3号、同5条2項

1 2条1項3号該当性(商品形態模倣行為性)
2 損害の有無及び額
3 謝罪広告の要否


■判決内容


争点

1 2条1項3号該当性(商品形態模倣行為性)


(1)商品形態の実質的同一性

レースが付されたカーディガンやノースリーブ、パーカーなど都合4点の
衣料品について、うち2点については原告製品の特徴的な点(レースを付
した部分など)がありふれたものではなく創作的なデザインであり、被告
製品も同様の特徴を有するものである。相違点もわずかなものであるとし
て特徴部分の共通性から実質的同一性を肯定しています。
(35頁以下)

これに対して、1点については実質的同一性を否定。
もう1点は独創性は否定しつつもありふれたものではないという程度に特
徴的な部分の両商品の実質的同一性を肯定しています(この商品について
は次項の依拠性を否定しています)。


なお、デッドコピーを規制する法2条1項3号での模倣性の判断手法として、
創作性のある部分での判断、いわゆる意匠権侵害での要部観察の手法を採
用することの肯否について、後掲小野編「新注解」460頁(泉)参照。


(2)依拠性

実質的同一性が肯定された3点のうち、2点の依拠性を肯定、1点につい
ては否定しています(原告商品2について、40頁以下)。


2 損害の有無及び額

不正競争防止法5条2項に基づいて商品形態模倣行為性が認められた商品2
点の販売利益の合計額309万円余が損害額と認定されています。
(49頁以下)


3 謝罪広告の要否

謝罪広告の必要性は認められませんでした。
(51頁)


■コメント

裁判所サイトに問題となった製品の資料が添付されていないので
どういうデザインだったのか視覚的によくわかりませんが、
平成に入ってからの「ノースリーブ」関連の模倣事案とあわせ、
最近人気のレース編み布地を利用したデザインものを巡る紛争が
今後起こりそうです。


■参考判例

「ノースリーブ型カットソー事件」

控訴審
知財高裁平成17年12月05日平成17(ネ)10083損害賠償請求控訴事件PDF

原審
東京地裁平成17年03月30日平成16(ワ)12793損害賠償請求事件PDF

「ノースリーブ型ワンピース事件」

控訴審
知財高裁平成17年11月10日平成17(ネ)10088損害賠償等請求控訴事件PDF

原審
東京地裁平成17年04月27日平成16(ワ)12723損害賠償等請求事件

「ファッション商品事件」

控訴審
東京高裁平成15年05月28日平成14(ネ)6392不正競争行為差止等請求控訴事件PDF

原審
東京地裁平成14年11月27日平成13(ワ)27144不正競争行為差止等請求事件PDF


■参考文献

小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)
      (2007)457頁以下、476頁以下、440頁以下
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務
       (2005)290頁以下


■参考サイト

過去のブログ記事(2005年12月11日)
「カットソー事件」不正競争控訴審判決(知財判決速報より)


被告サイト
Apuwiser-riche JUSGLITTY ARPEGE Co. Ltd., (株)アルページュ HOME