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2007年06月18日

「YG性格検査用紙」事件〜著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「YG性格検査用紙」事件

大阪地裁平成19.6.12平成17(ワ)153等著作権侵害差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官     西理香
裁判官     西森みゆき

第1事件:著作権侵害差止等請求事件(平成17(ワ)153)
第2事件:商標権侵害差止等請求事件(平成17(ワ)2317)


■事案

質問紙法性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)用紙の
著作権を侵害したかどうかが争われた事案(第1事件)


第1事件原告:実験心理学器械・職業適性検査器等製作販売会社
         母親
第1事件被告:心理テストのための印刷物等企画、開発会社
         長男


■結論

請求一部認容(第1事件)
請求棄却(第2事件)


■争点

条文 著作権法第21条、27条、65条3項、80条

1 本件用紙の著作物性
2 著作権は譲渡されていたか
3 海賊版販売の有無(略)
4 和解との関係(略)
5 遺言と著作権(略)
6 権利濫用論(65条3項)(略)
7 出版権侵害の肯否(80条)
8 損害額の算定
9 差止の要否(略)
10 第2事件(商標権侵害差止等請求事件)(略)


■判決内容

経緯

P1が大学教授らとともに研究・開発した心理テストが数次の
改訂を経て製品化され原告(創作者亡P1の妻ら)、被告(亡
P1の長男ら)がこの心理テスト用紙の販売を行っていました。

P1の死後、この心理テスト用紙の取扱いをめぐって、長男と
母親が争う事態となりました。


争点

1 本件用紙の著作物性

(1)各著作物の関係

YG性格検査用紙(本件用紙)の著作物性については、本件用紙が
基礎研究から昭和32年論文(P1著作)、昭和30年代の用紙、そして
昭和41年の用紙とその内容が変遷していることから各記載相互の関
係が検討されています。

結論的には、

昭和32年論文=昭和30年代用紙

昭和30年代用紙≠昭和41年用紙

昭和41年用紙=本件用紙

ということで、

本件用紙は、昭和32年論文を翻案した昭和41年用紙を複製したもの、
と判断されました。
(85頁以下)


(2)被告用紙との関係

被告用紙(YGP詰兒罅旧ハイブリッド用紙、新ハイブリッド用紙)
はいずれも原告本件用紙を複製したものであると判断されています。
(97頁以下)


2 著作権は譲渡されていたか

亡父P1から被告長男側へ著作権が譲渡されていたかどうかが争点とな
っていました。


(1)事業の承継はあったが、著作権の承継は無かった(100頁以下)
(2)死因贈与もなかった(105頁以下)
(3)被告側による原始取得もなかった(106頁)


以上の点から、著作権の譲渡等は無かったと判断されました。


(まとめ)

結論として、P1死亡によりP1の著作権を原告母親と被告長男が共同
相続していることから、被告会社による原告母親の取得した著作権
に対する侵害性が肯定されました。
被告長男についても被告会社との共同不法行為が認められました。

被告用紙の発行等の差止も認められました(YGP詰兒罎亙鵡洋検法


7 出版権侵害の肯否(80条)

原告会社はP1と出版契約(平成12年)を締結していました。

被告会社による海賊版用紙の発行等について、原告会社の出版権を
侵害する不法行為を構成するものと認められました。
(112頁以下)


8 損害額の算定

原告(母親)について、逸失利益として159万円(著作権法114条3項)、
弁護士費用として16万円を認定。
原告会社については、逸失利益として403万円(114条1項)、弁護士
費用として40万円と認定されています。
(116頁以下)



なお、第2事件である被告側からの商標権侵害差止等請求事件に
ついては請求棄却の判断となっています。


■コメント

平成13年に亡くなった父親の生前の創作物の著作権をめぐって
の身内での内輪もめです。

長男はインターネットを活用して心理テストを実施するなどの
構想を持っていましたが、これに母親は反対(33頁参照)。
こうしたことも含めお互い反目しあう関係にあったようです。

二つの仮処分を経た上での本件提訴となりました。


原告会社の監査役には本橋光一郎先生が就かれていますので
(本件訴訟での代理人でもある)、原告としては強く著作権
紛争の懸念を持っていたということでしょうか。


■参考サイト

原告会社サイト
竹井機器工業株式会社

被告会社サイト
日本心理テスト研究所

■追記2011.12.4

被告らは,原審の判断を不服として大阪高等裁判所に控訴したが(平成19年(ネ)第2062号),平成21年9月29日,控訴は棄却され,同判決は確定した。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111201135639.pdf
written by ootsukahoumu at 19:17│TrackBack(0)知財判決速報2007 

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