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2007年06月09日

「登山ガイドマップ著作権侵害」事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「登山ガイドマップ著作権侵害」事件

東京地裁平成19.5.30平成18(ワ)4398損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官     大竹優子
裁判官     杉浦正樹


■事案

被告が出版した登山ガイドマップの執筆者らが未払い印税の
支払いとともに被告による英語版出版行為が翻訳権侵害にあ
たるとして争った事案


原告:山岳家、写真家ら
被告:データ処理・ソフトウエア開発販売会社


■結論

請求一部認容


■争点

条文 著作権法第27条

1 執筆契約の成否、内容
2 翻訳権侵害の成否
3 相殺の抗弁


■判決内容


争点

1 執筆契約の成否、内容

被告は登山ガイドマップ出版にあたり外部の編集者M(訴外)にコー
ディネートを依頼。
被告はMとの間で執筆部分の著作権買取合意があったとして原告ら
執筆者との執筆契約の合意はなかったと主張していました。

しかし、原告被告間の打ち合わせの経緯などから、
「本体価格×制作部数×印税率6%」での執筆契約の成立が認定され
ています。
(34頁以下)

なお、「制作部数」の意味などが契約内容上の争点となっていますが、
最終的には印刷した部数ではなくいつでも出荷できる状態にある部数
(三つ折り地図をケースに入れた状態のもの)であったとされました。


2 翻訳権侵害の成否

翻訳に対する許諾が無かったことから翻案権侵害が肯定されています。

被告代表者に無断翻訳について故意があることから慰謝料として20〜
40万円の損害額が認定されています。
(36頁以下)


3 相殺の抗弁

被告は、原告執筆部分に誤記があり、ガイド本の廃棄等の必要があっ
たことから執筆契約の債務不履行に基づく損害賠償請求を予備的に行い
印税未払い部分との対当額での相殺の抗弁を出していました。

しかし、そもそも誤記が原告の執筆によるものか被告側のデータ変換
ミスなのか認定できず、また廃棄による損害と誤記との相当因果関係
もないとして被告の相殺の抗弁を認めませんでした。
(37頁以下)


■コメント

被告データ会社が登山ガイドマップ本を企画編集する際に外部編集
プロダクションにあたるMに編集コーディネートを頼んだことが事の
発端となります。

Mによる実際の執筆者(原告ら)とのガイド本についての著作権処理
やコーディネートがしっかりできていなかったことから被告会社側と
原告執筆者側との間で著作権の取扱いについて認識に差(著作権買取
合意の有無など)が生じてしまいました。


被告会社も原告側から英語版翻訳の許諾が得られなかったにもかかわ
らず英語版を出版したり、校正作業についても初稿だけしか執筆者に
させず、結果、だれの責任かはっきりしない誤記の責任を執筆者に負
わせようとするあたり、出版業務としてという印象です。

場合によっては登山者の生命や身体の安全にもかかわる登山ガイド本
ですから、会社として最終製品に近い形態でのチェックも念のため
執筆者にお願いすべきだったでしょうし、
なにより、実際に歩いている登山家や山岳ガイドなら決して地図に
誤記などしない
わけで、登山家という人種を知っているわたしから
すれば法的な側面はひとまずおくとしても被告の相殺の抗弁は理
解に苦しみます。

使いやすい登山マップのようですし、今後も登山のプロに指導監修を
仰ぐことになると思います。
今後のシリーズ展開のことを考えて和解などで折り合いを付けられな
かったのか、判決になること自体たいへん残念な事案でもありました。


■参考サイト

登山ガイドマップ
ジョイフルマップ


written by ootsukahoumu at 17:07│TrackBack(0)知財判決速報2007 

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