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2007年04月18日

「創価学会ウエブ画像著作権侵害」事件〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「創価学会ウエブ画像著作権侵害」事件

東京地裁平成19.4.12平成18(ワ)15024損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     古河謙一
裁判官     吉川泉


■事案

「聖教グラフ」(創価学会機関誌:聖教新聞社発行)掲載の池田名誉会長の写真を無断でHPに掲載した行為の著作権侵害性が争われた事案

原告:創価学会
被告:A(元創価学会会員・日蓮正宗信徒)


■結論

請求一部認容


■争点

条文 著作権法第20条、21条、23条、32条1項

1 写真の著作物性とその著作者
2 被告写真の複製物性
3 同一性保持権侵害性
4 故意・過失の有無
5 引用に当たるか
6 損害額の算定


■判決内容

1 写真の著作物性とその著作者

創価学会の出版部門である聖教新聞社所属カメラマン(B)撮影による池田大作名誉会長の全身写真(肖像写真)の著作物性とその写真の著作者が争点となっています。

カメラマンは、職務の一環として撮影を行っており、撮影目的から背景を考慮、ライティング、ポーズなどを工夫のうえ百数十枚のカットを撮影していました。


結論的には、裁判所は

Bは,本件写真の撮影に当たり,背景,構図,照明,被写体であるCの表情等に工夫を加えて撮影していることが認められるから,本件写真にはBの個性が表現されている。したがって,本件写真は,Bの思想又は感情を創作的に表現したものということができ,著作物性を有する。
また,上記認定事実及び前記前提となる事実によれば,本件写真は,Bが原告の発意に基づき,職務上作成した上,原告の名義で公表したものといえるから,著作権法15条1項の職務著作の要件を満たし,その著作者は原告と認められる。

(12頁)

として、著作物性ならびに原告の著作者性を肯定しています。


2 被告写真の複製物性

原告のカラー写真がトリミングされた上でモノクロ画像として被告のウエブサイトに掲載されていました。

被告は、再製部分が本件写真の創作上の本質的特徴にはあたらないと反論しましたが、裁判所は不鮮明なものではあるものの写真の同一性を認めて複製物性を肯定しました。
(12頁以下)


3 同一性保持権侵害性

被告は、第三者のウエブサイト上の画像をそのまま自分のサイトに掲載しただけで原告写真を改変していないと反論していました。

しかし、裁判所は、

前記認定のとおり,被告は,何人かが本件写真を白黒にし,上下左右の一部を切除して作成された被告写真をそのまま複製したものである。しかし,著作物を一部改変して作成された同一性保持権を侵害する複製物をそのまま複製し,本件のように,自らのホームページに掲載する行為も,客観的には,著作物の改変行為であり,著作権法20条1項の同一性保持権侵害行為に当たるというべきである。この場合,複製者が,当該複製対象について,他人の著作物を改変して作成されたものであることを認識していたかどうかについては,同一性保持権侵害行為についての故意又は過失の有無の問題として検討されるべきことである。
(13頁以下)

そのうえで、トリミングされモノクロ化された画像をそのまま複製しているとして、被告による同一性保持権侵害行為性を肯定しました。


4 故意・過失の有無

裁判所は、複製権、公衆送信権、同一性保持権の侵害性について被告の過失を肯定してます。
(14頁以下)


5 引用に当たるか

被告は、創価学会と日蓮正宗との間の紛争を契機として「創価学会からの脱会を考える会」というHPを開設していました。
被告は、名誉会長批判は表現の自由の範囲内であり本件写真の利用は社会通念に照らして正当な範囲内の利用であるとして引用性(著作権法32条1項)を主張しました。

しかし、裁判所は、原告写真を被告サイトで利用する必然性がなく、また被告サイト上の記載と画像との間の主従関係もないなどを理由に引用要件を充足しないと判断しました。
(15頁以下)

6 損害額の算定

2年2ヶ月あまりに亘って被告サイトに画像が掲載されていましたが、

・著作権侵害行為について30万円
・著作者人格権侵害について5万円
・弁護士費用について5万円

以上合計40万円が損害額として認定されました。


■コメント

同一の原告肖像写真を巡って過去に別件で訴訟が行われています。
(後掲「創価学会vs日蓮正宗 宣伝ビラ事件」参照。なお、H17.4.19上告不受理決定)

別件訴訟では、宣伝ビラに使われた写真が問題となり、本件と同様、写真の著作物性や引用性が争点となっています。

なお、別件訴訟では原審、控訴審ともにこの肖像写真の著作物性を肯定、引用性を否定しています。


■参考判例

「創価学会vs日蓮正宗 宣伝ビラ事件」控訴審
東京高裁平成16年11月29日平成15(ネ)1464損害賠償等請求控訴事件

東京高等裁判所知的財産第2部
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官    古城春実
裁判官    岡本岳


「創価学会vs日蓮正宗 宣伝ビラ事件」原審
東京地裁平成15年02月26日平成13(ワ)12339損害賠償等請求事件

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官     榎戸道也
裁判官   佐野信

■参考文献

上野達弘「引用をめぐる要件論の再構成」『著作権法と民法の現代的課題 半田正夫先生古稀記念論集』(2003)308頁以下
田村善之「絵画のオークション・サイトへの画像の掲載と著作権法」『知財管理』56巻9号(2006)1311頁以下

■参考ブログ

Matimulog
jugement:池田大作の写真をウェブに無断転載

■追記07.04.23

企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財] 「引用」要件の新たな展開

追記(08.02.15)

LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース
速報判例解説 知的財産法 No.3
上野達弘「他人の写真のウェブ掲載をめぐる引用および同一性保持権侵害の成否(東京地方裁判所平成19年4月12日判決) 」
PDF

written by ootsukahoumu at 00:53│TrackBack(0)知財判決速報2007 

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