Tweet

2007年03月30日

『シェーン』著作権保護期間満了事件〜著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

『シェーン』著作権保護期間満了事件(控訴審)

知財高裁平成19.3.29平成18(ネ)10078著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官    石原直樹
裁判官    高野輝久


★原審
東京地裁平成18.10.6平成18(ワ)2908 著作権侵害差止等請求事件 著作権民事訴訟PDF


■事案

パブリックドメインとなった映画を格安DVDとして製造・販売していた
業者に対して、映画会社が、著作権保護期間はいまだ満了していない
として著作権侵害などを理由に損害賠償、差止を請求した事案の控訴審。


控訴人 :映画会社ら
被控訴人:格安DVD販売会社ら


■結論

控訴棄却(原審原告側敗訴)


■争点

条文 著作権法第54条1項、附則2条1項

1 54条1項の適否


■判決内容

1 54条1項の適否

本件映画の著作権は,上記(2)のとおり,平成15年12月31日の終了をもって,存続期間の満了により消滅する。そうすると,本件改正法が施行された平成16年1月1日においては,改正前の著作権法による本件映画の著作権は既に消滅しているから,本件改正法附則2条の規定により,改正著作権法54条1項の規定は適用されない。
(16頁)

・12月31日午後12時と1月1日午前零時の同時刻性

改正前の著作権法54条1項及び57条は,映画の著作物の著作権の存続期間を年によって定めたものであって(民法140条),この場合には,期間は,その末日の終了をもって満了するから(民法141条),日を単位としているものである。そして,本件改正法附則1条は,本件改正法の施行の時点を日を単位として定めたものである。そうすると,両者はいずれも日を単位とするものであるから,本件改正法が平成16年1月1日から施行され,この日が午前零時から始まるものであるとしても,平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了する本件映画の著作権がその翌日である平成16年1月1日に存続していたということはできない。
(16頁以下)


・立法者意思解釈について

本件映画のような昭和28年に公表された映画の著作物の著作権は,本件改正法の施行日の前日である平成15年12月31日の終了をもって,存続期間の満了により消滅するものであるところ,本件改正法の経過規定は,あえて,施行期日を平成16年1月1日とし(附則1条),同日において,改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については改正著作権法54条1項の規定を適用しないものとした(附則2条)のであるから,個々の国会議員の認識や内心の意思はともかく,上記経過規定自体から推知される立法者意思としては,昭和28年に公表された映画の著作物については,その著作権の保護期間を延長しないというものであったというほかない。
(18頁以下)


・改正法附則2条の趣旨について

本件改正法附則1条は,本件改正法の施行の時点を日を単位として定めたものであるから,本件改正法附則2条の「施行の際」という文言を,平成16年1月1日午前零時の直前,すなわち,平成15年12月31日午後12時の直前をも含むものとして理解することの合理性は,見いだし難いところであり,同様に,「施行の際現に」という文言を,平成16年1月1日午前零時の直前,すなわち,平成15年12月31日午後12時の直前までを意味するものとして理解することの合理性も,見いだし難いところである。
(20頁)


・映画ビジネスに対する影響について

原告はこの点についても重大な影響があると主張しましたが
裁判所は容れませんでした。そのうえで、

改正著作権法54条1項の規定は,映画の著作物の保護期間を公表後50年から70年に延長するものであって,その適用があるか否かにより,著作物を自由に利用できる期間が大きく相違する上,著作権の侵害行為に対しては,民事上の差止めや損害賠償の対象となるほか,刑事罰の対象ともなるのであるから,改正著作権法54条1項の規定の適用の有無は文理上明確でなければならないというべきである。
上記(3)のとおり,本件改正法附則2条は,その施行日である平成16年1月1日において,改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について改正著作権法54条1項の規定を適用し,改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については改正著作権法54条1項の規定を適用しないものとしたものであって,昭和28年に公表された映画の著作物の著作権は本件改正法が施行された平成16年1月1日において既に消滅しているから,昭和28年に公表された映画の著作物について,改正著作権法54条1項の規定が適用されないことは文理上明らかである。そうであれば,文理に反した文化庁の見解を信じた関係者があるとしても,そのために将来にわたり文化庁の見解に沿った運用をすることは,かえって,法律に対する信頼を損なうこととなってしまって,妥当でない。
(27頁以下)



■コメント

民法の期間計算に関する基本原則と、条文の文理解釈という
至極まっとうな立場を裁判所は選択しました。

ぎりぎりのところで政策的価値判断の選択を迫られる場合、
原則(罪刑法定主義など)に立ち戻るのは当然で、控訴審でも
原則論重視の立場をとっています。

なお、牛木先生は保護期間満了事件に関して、
文化庁は著作権審議会を早急に開いてこの問題の検討を始め、
行政府としての統一見解を早く表明するべきである。

牛木内外特許事務所2006年10月15日)として
この問題の重大性を指摘されておいでです。


■過去のブログ記事

2006年10月07日記事
『シェーン』著作権保護期間満了事件〜著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

2006年07月12日記事
「ローマの休日」保護期間事件〜著作権 仮処分命令申立事件決定(知的財産裁判例集)〜


■追記(2007年12月18日)

最高裁判所第三小法廷平成19年12月18日平成19(受)1105著作権侵害差止等請求事件
「『シェーン』著作権保護期間満了」事件(上告審)〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(最高裁判所判例集)〜


written by ootsukahoumu at 20:11│TrackBack(0)知財判決速報2007 

トラックバックURL