裁判所HP 知的財産裁判例集より

「『カナンの呪い』名誉毀損」事件

知財高裁平成19.3.8平成18(ネ)10092損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官    森義之
裁判官    田中孝一


原審
東京地裁八王子支部平成18年11月24日平成18年(ワ)第567号


■事案

ユースタス・マリンズ著『カナンの呪い』翻訳本をめぐって
翻訳者間で名誉毀損の肯否が争われた事案。


原告(控訴人) :翻訳者
被告(被控訴人):原著者公認翻訳(監訳)者


■結論

控訴棄却(原告側敗訴)


■争点

条文 民法709条

1 名誉毀損の肯否
2 著作権侵害の肯否


■判決内容

1 名誉毀損の肯否

原告が出版した翻訳本について、被告は原著者の言辞として、
また被告自身の見解として原告書籍に対する批判的見解を
被告翻訳書籍(『カナンの呪い寄生虫ユダヤ3000年の悪魔学』)に
掲載していました。

この点について、原告に対する名誉毀損の肯否が争われましたが、
原著者の言辞の部分は、被告の言葉ではないこと、
また、
被告自身の見解部分については、原告の社会的評価を低下させる
ものではあるものの、摘示事実には真実性があり、
公共の利害に関するものであり、公益目的もある、として
違法性を阻却しています。

よって、名誉毀損は成立しないとされました。


2 著作権侵害の肯否

原告は、「一審被告の非合法の発行物により,一審原告の著作権,
知的財産が著しく侵害されている。」(3頁)と主張していましたが、
被侵害権利及び行為の特定を欠くとして退けられています。


■コメント

本人訴訟ということもあって、著作権侵害の部分の主張は
体を成していません。


カナンの呪い―寄生虫ユダヤ3000年の悪魔学