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2006年10月22日

「講習会資料職務著作」事件(控訴審)〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「講習会資料職務著作」事件


★控訴審
知財高裁平成18.10.19平成18(ネ)10027損害賠償等請求控訴事件著作権民事訴訟PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官    宍戸充
裁判官    柴田義明


★原審
東京地裁H18. 2.27平成17(ワ)1720 著作権 民事訴訟事件

★過去のブログ記事
2006年03月04日「講習会資料職務著作」事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知財判決速報)〜



■事案

原告(控訴人) :元従業員
被告(被控訴人):企業ら

職務命令で社外講習会の講師として講習資料を作成した場合の
資料の職務著作物性(著作権法15条)などが争われた事案の
控訴審判決


■結論

控訴棄却(原告側元従業員敗訴)


■争点

条文 著作権法第15条、19条、20条、24条

1 職務著作物の成否(15条)
2 利用許諾の有無
3 口述権侵害の有無
4 氏名表示権侵害の有無
5 同一性保持権侵害の有無


■判決内容

1 職務著作物の成否(15条)

講習会資料に表示されていた名義が著作者を表示するものなのか
たんなる著作者とは別の担当講師名なのか、内容についての
最終責任者の主催団体名にすぎないのか、あいまいであったことから
公表要件の充足性判断が争点となりました。

結論的には原審と同様、職務著作成立の要件である
「公表名義」について、被告企業を自己表示したものとは
認められませんでした。
(10頁以下)

15条の要件を欠く以上、講習会資料の原始的な著作者は
あくまで原告の元従業員となります。


2 利用許諾の有無

講習会の講師役の引継ぎに際して原告は無留保で原稿データを
後任者に交付しているなどの事情から、
被告側に原稿を利用させる意思があったと判断。

さらに利用内容として原稿の変更、追加等の改変・複製を
黙示的に許諾していたと認定されました。
(15頁以下)


3 口述権侵害の有無(24条)

黙示的な利用許諾があったとして侵害性を否定しています。
(22頁)

4 氏名表示権侵害の有無

氏名表示権の,著作者名を表示するかしないかを選択する権利であるという側面からみた場合,控訴人は,12年度資料について,少なくとも,控訴人の氏名を著作者名として表示しないことを選択しているものと解される。
そうすると,13年度資料及び14年度資料に講師名としてBの氏名を付するとともに,その他は,12年度資料及び同資料を含む講習資料集と同様の表示をして,平成13年度及び平成14年度の維持講習の講習資料集を作成し,使用することは,著作者名を表示しないこととした控訴人の措置と同様の措置をとっていることになるから,著作者名の表示に関する控訴人の当時の意思に反するものではなく,控訴人の氏名表示権を侵害するものとはいえないと解するのが相当である。

(22頁以下)

この点についての侵害性も否定されています。


5 同一性保持権侵害の有無

著作権法20条1項は,著作者の有する同一性保持権について,「著作者は,その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し,その意に反してこれらの変更,切除その他の改変を受けないものとする。」と規定している。この趣旨は,著作物が,著作者の思想又は感情を創作的に表現したものであり,その人格が具現化されていることから,著作物の完全性を保持することによって,著作者の人格的な利益を保護する必要があるため,著作者の意に反してその著作物を改変することを禁じているものであるが,一方,著作者自身が自らの意思によりその著作物の改変について同意することは許容されるところであって,著作者が,第三者に対し,必要に応じて,変更,追加,切除等の改変を加えることをも含めて複製を黙示的に許諾しているような場合には,第三者が当該著作物の複製をするに当たって,必要に応じて行う変更,追加,切除等の改変は,著作者の同意に基づく改変として,同一性保持権の侵害にはならないものと解すべきである。


必要に応じて原稿を変更、追加、切除等の改変をすることも
原告は黙示的に許諾していた。
そして講習会資料という著作物の性質などを考えて改変の必要性を
具体的に検討。
その上でいずれの改変部分も同一性保持権侵害性はないと
判断されました。
(23頁以下)


■コメント

原審、控訴審と判決が揃ったことで
企業、団体が作成する講習会資料などの取扱い内規や
原稿執筆契約のひな型が整備できるのではないでしょうか。


■追記

岡邦俊「職務著作以外の業務上の文書を会社が複製できる条件 「計装士講習資料」事件」」
    『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)60頁以下

藤野忠「従業者が作成した著作物の利用関係が争われる事例における「公表名義」要件の意義−講習資料職務著作事件−」
    『知的財産法政策学研究』14号(2007)355頁以下

written by ootsukahoumu at 13:14│TrackBack(0)知財判決速報2006 

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