5月19日から4日間の日程で行われた新司法試験の
知的財産法の問題の一つは著作権法に関する問題でした。
論文式試験問題集[知的財産法]
〔第2問〕
出版社Aは,その発行する美術雑誌に新作美術作品の紹介記事を連載しているところ,職業写真家である甲に対し,同美術雑誌の次号の記事で紹介する作品の写真を撮影することを依頼した。その際,甲はAから,撮影する作品は日本の伝統芸能の一つである浄瑠璃芝居に用いられる文楽人形αであり,文楽人形細工師乙が創作した新作品であること,乙は文楽人形αが写真撮影されることを承諾して撮影への協力を引き受けたこと,写真の掲載に当たっては写真撮影者の表示はしないこと,写真原版は雑誌発行後に甲に返還することについて説明を受け,甲は写真撮影を承諾した。そして,甲は,写真βを撮影し,その写真原版をAに引き渡した。
写真βは,文楽舞台において,衣装等を着けて鼓を持たせた文楽人形αを斜めから撮影したカラー写真であり,乙は,衣装等をつけた文楽人形αと鼓を撮影現場に持参し,自ら人形を操作してそのポーズを決め,甲は,写真構図,採光,露光,シャッタースピード等を決めてシャッターを切ったものである。
出版社Aは,写真βを文楽人形α及び乙の紹介記事とともに掲載( 写真撮影者の表示はない 。)した美術雑誌を発行した。その後,Aは,経営不振のため美術雑誌の発行を継続することができなくなり,写真βの写真原版は甲に返還されないままとなっていた。
商業用カレンダーの製作を業とする会社丙は,出版社Aからその保有するすべての写真原版を買い受けたところ,その中に写真βの写真原版があったことから,これを顧客に配布する自社のカレンダー用の写真として利用することとした。その際,丙は,自社のカレンダー仕様に合わせるために写真βの左右の2辺を一部削除したので,その背景の一部がカットされた。丙はこの写真を自社の来年度のカレンダーに掲載した。
甲及び乙は,それぞれ丙に対して,著作権法上いかなる法的主張が可能か。
新司法試験問題について「企業法務戦士の雑感」さんが
コメントされています。
論文を書く際にどんな判例をあげる必要があるのか・・・
ほんとうに読むだけなら、ありそうな話ですし
面白いのですが(笑)
法務省サイト
法務省 平成18年新司法試験試験問題選択科目
「企業法務戦士の雑感」
[法律][法曹] 読むだけなら、面白い。
■追記(06.5.29)
大まかに言えば
1 契約関係の認定(対A:著作権の帰属の決定)
2 共同著作物性の認定(甲乙間の法律関係)
3 侵害論
1財産的側面 複製権侵害
2人格的側面 同一性保持権侵害
その上での差止、廃棄、損害賠償・慰謝料、
名誉回復措置の肯否
ところで、人形作家乙の立場からの
人格権侵害の側面の主張ですが、
仮にキャンディキャンディ事件、ポパイネクタイ事件判決の
理論構成・議論(二次的著作物における原著作者の
権利行使の範囲論等)を共同著作物での検討に
応用することができるとすると(田村373ページ以下、
小泉ほか編著「ケースブック知的財産法」325ページ以下参照)、
乙の創作的表現が再生されていない本件写真の背景部分の
削除については、乙との関係では人格権侵害とは
いえない(要素区別論肯定説)、と考えることも
できるのではないでしょうか。
■追記(06.6.12)論文紹介
駒田泰土「著作物と作品概念との異同について」
(北海道大学 知的財産法政策学研究11号145頁以下(2006))
論文PDF
駒田泰土「著作物と作品概念との異同について」PDF
■追記(06.9.30)
平成18年新司法試験論文式試験問題出題趣旨PDF
〔第2問〕
本問は,美術雑誌に掲載された文楽人形αを撮影した写真βを一部削除した上でカレンダーに掲載した丙に対する甲及び乙の著作権法上の法的主張を問うものであり,以下の点について論述した上で,結論として,甲及び乙が丙に対してどのような権利に基づいていかなる請求をすることが可能であるかを明示することが求められる。
まず,甲及び乙が文楽人形α及び写真βについて著作権・著作者人格権を有するかどうかを明らかにしなければならず,そのために,文楽人形α及び写真βのそれぞれについて,著作物性の有無,著作物である場合の著作者・著作権者につき論じなければならない。写真βに関しては,特に,その著作物性を判断する際に考慮すべき要素との関連において写真被写体の作出に関与した乙の行為を検討することにより,甲の単独著作物であるか又は甲と乙の共同著作物であるかという点を論じることが求められる。
次に,甲及び乙が有するどのような権利が,丙の行為によって侵害されるかを論じなければならない。甲に関しては,写真βについての複製権,譲渡権,同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無につき論述することが求められる。乙に関しては,文楽人形α及び写真βについての複製権,譲渡権,同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無につき論述することが求められる。
■追記(08.02.06)
上智大学のサイト?下に以下のPDFがありました。
新司法試験問題解説2006 知的財産法 in Hokkaido Univ.
特許実務日記さん経由
●「新司法試験問題解説2006 知的財産法 in Hokkaido Univ.」 - 特許実務日記
知的財産法の問題の一つは著作権法に関する問題でした。
論文式試験問題集[知的財産法]
〔第2問〕
出版社Aは,その発行する美術雑誌に新作美術作品の紹介記事を連載しているところ,職業写真家である甲に対し,同美術雑誌の次号の記事で紹介する作品の写真を撮影することを依頼した。その際,甲はAから,撮影する作品は日本の伝統芸能の一つである浄瑠璃芝居に用いられる文楽人形αであり,文楽人形細工師乙が創作した新作品であること,乙は文楽人形αが写真撮影されることを承諾して撮影への協力を引き受けたこと,写真の掲載に当たっては写真撮影者の表示はしないこと,写真原版は雑誌発行後に甲に返還することについて説明を受け,甲は写真撮影を承諾した。そして,甲は,写真βを撮影し,その写真原版をAに引き渡した。
写真βは,文楽舞台において,衣装等を着けて鼓を持たせた文楽人形αを斜めから撮影したカラー写真であり,乙は,衣装等をつけた文楽人形αと鼓を撮影現場に持参し,自ら人形を操作してそのポーズを決め,甲は,写真構図,採光,露光,シャッタースピード等を決めてシャッターを切ったものである。
出版社Aは,写真βを文楽人形α及び乙の紹介記事とともに掲載( 写真撮影者の表示はない 。)した美術雑誌を発行した。その後,Aは,経営不振のため美術雑誌の発行を継続することができなくなり,写真βの写真原版は甲に返還されないままとなっていた。
商業用カレンダーの製作を業とする会社丙は,出版社Aからその保有するすべての写真原版を買い受けたところ,その中に写真βの写真原版があったことから,これを顧客に配布する自社のカレンダー用の写真として利用することとした。その際,丙は,自社のカレンダー仕様に合わせるために写真βの左右の2辺を一部削除したので,その背景の一部がカットされた。丙はこの写真を自社の来年度のカレンダーに掲載した。
甲及び乙は,それぞれ丙に対して,著作権法上いかなる法的主張が可能か。
新司法試験問題について「企業法務戦士の雑感」さんが
コメントされています。
論文を書く際にどんな判例をあげる必要があるのか・・・
ほんとうに読むだけなら、ありそうな話ですし
面白いのですが(笑)
法務省サイト
法務省 平成18年新司法試験試験問題選択科目
「企業法務戦士の雑感」
[法律][法曹] 読むだけなら、面白い。
■追記(06.5.29)
大まかに言えば
1 契約関係の認定(対A:著作権の帰属の決定)
2 共同著作物性の認定(甲乙間の法律関係)
3 侵害論
1財産的側面 複製権侵害
2人格的側面 同一性保持権侵害
その上での差止、廃棄、損害賠償・慰謝料、
名誉回復措置の肯否
ところで、人形作家乙の立場からの
人格権侵害の側面の主張ですが、
仮にキャンディキャンディ事件、ポパイネクタイ事件判決の
理論構成・議論(二次的著作物における原著作者の
権利行使の範囲論等)を共同著作物での検討に
応用することができるとすると(田村373ページ以下、
小泉ほか編著「ケースブック知的財産法」325ページ以下参照)、
乙の創作的表現が再生されていない本件写真の背景部分の
削除については、乙との関係では人格権侵害とは
いえない(要素区別論肯定説)、と考えることも
できるのではないでしょうか。
■追記(06.6.12)論文紹介
駒田泰土「著作物と作品概念との異同について」
(北海道大学 知的財産法政策学研究11号145頁以下(2006))
論文PDF
駒田泰土「著作物と作品概念との異同について」PDF
■追記(06.9.30)
平成18年新司法試験論文式試験問題出題趣旨PDF
〔第2問〕
本問は,美術雑誌に掲載された文楽人形αを撮影した写真βを一部削除した上でカレンダーに掲載した丙に対する甲及び乙の著作権法上の法的主張を問うものであり,以下の点について論述した上で,結論として,甲及び乙が丙に対してどのような権利に基づいていかなる請求をすることが可能であるかを明示することが求められる。
まず,甲及び乙が文楽人形α及び写真βについて著作権・著作者人格権を有するかどうかを明らかにしなければならず,そのために,文楽人形α及び写真βのそれぞれについて,著作物性の有無,著作物である場合の著作者・著作権者につき論じなければならない。写真βに関しては,特に,その著作物性を判断する際に考慮すべき要素との関連において写真被写体の作出に関与した乙の行為を検討することにより,甲の単独著作物であるか又は甲と乙の共同著作物であるかという点を論じることが求められる。
次に,甲及び乙が有するどのような権利が,丙の行為によって侵害されるかを論じなければならない。甲に関しては,写真βについての複製権,譲渡権,同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無につき論述することが求められる。乙に関しては,文楽人形α及び写真βについての複製権,譲渡権,同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無につき論述することが求められる。
■追記(08.02.06)
上智大学のサイト?下に以下のPDFがありました。
新司法試験問題解説2006 知的財産法 in Hokkaido Univ.
特許実務日記さん経由
●「新司法試験問題解説2006 知的財産法 in Hokkaido Univ.」 - 特許実務日記