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2006年02月15日

「伊勢丹商事不正競争防止法違反」事件〜不正競争防止法差止等請求事件判決(知財判決速報)〜

最高裁判所HP 知財判決速報より

H18.2.13 東京地裁 平成17(ワ)24941 不正競争 民事訴訟事件


■事案
デパートで有名な「伊勢丹」(株式会社伊勢丹)が、残土処理、販売代理業、
中国国内でのコンサルティング業務を行っている企業(「有限会社伊勢丹商事」)に対して
その使用している商号、サイト上での表示の使用差止等を求めた事案。



■結論

請求認容(原告側勝訴)

被告会社は、口頭弁論期日に欠席し、また準備書面等も提出しておらず
擬制自白(民事訴訟法159条)が成立。
そのうえで原告の主張を認容。

■争点

条文 不正競争防止法2条1項2号、5条2項

 著名表示の冒用行為


■判決内容

判決は、原告表示の著名性、原告と被告の両社の表示の類似性を肯定して、
被告の行為の不正競争防止法2条1項2号所定の不正競争行為該当性を認めました。
また、損害についても認めています(同5条2項)。


■コメント

被告が争っていないので裁判所は原告の請求に対して「満額回答」しています。

ところで、
平成5年改正により不正競争防止法2条1項2号が新設、ブランドにただ乗りすることが
許されないことが法律上明確になりました。

不正競争防止法2条1項2号の著名表示の冒用行為を巡る争いの場合、
原告の主張・立証としては、請求の原因として

1著名性
2使用
3類似性・同一性
4営業上の利益侵害(第3条1項)

さらに損害賠償請求の点については、

1請求権発生時期
2故意・過失(第4条)
3損害額

ということを掲げていくことになります(小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)271頁)。


さて、朝日新聞のスクープ記事が発端となって建築基準法やハートビル法、
各種条例違反が問題となった「東横イン」事件。
わたしも「東横イン」は「東急イン」など、東急グループとなんらかの
かかわりがあるのかと思っていましたが、まったく関係がなく
今回の事件で「東急イン」は迷惑を被っているようです。
(実際、「東横イン」の通常のサイトでも、「東急イン」と「よく間違えられる」
ことを自認しています。株式会社東横イン-会社沿革-

東京や神奈川在住の人にはなじみの深い東京急行電鉄(東急電鉄)を中核とする
東急グループの一員として、東急インなどのホテル事業を統括する「東急ホテルズ」
があります。
「東横」という名称は、東急が「東横線(東京ー横浜線)」「東横百貨店」
「東横学園(学校法人)」などで戦前から使っているものです。
こうした状況を踏まえて、「東横イン」(S61年設立)という名称をホテル業で
使用することが不正競争行為にあたるのかどうか、使用差止の対象となるのか
(なるものだったのか)、その他の法令での対応等考えてみるのも
アタマの体操になりそうです。

なお、伊勢丹は過去にも「イセタン」名称を営業表示として使用していた調査業者を
被告として訴訟を提起しているようです。
(イセタンリサーチ事件 東京地裁S63.4.13判決 青山後掲書57頁)

自社のブランドイメージをどれだけ重視しているかが企業の姿勢として
伝わってきます。



■参考判例

不正競争防止法2条1項2号に関係する裁判例として、
最新不正競争関係判例と実務第二版」(2003)240、260、279、303、400頁以下、
金井重彦ほか編著「不正競争防止法コンメンタール」(2004)41頁以下参照。


・トラサルディ事件
 東京地裁H10.3.20判決(2号の著名表示冒用行為が初めて認容された事案)

・JAL事件
 東京地裁H10.11.30判決(「ジャル合資会社」商号の保険代理業者を被告とする事案)

・正露丸事件
 大阪地裁H11.3.11判決(「正露丸」の普通名称性、「正露丸糖衣A」の著名性などが争われた事案)

・アリナビック(アリナミン)事件
 H11. 9.16 大阪地裁 平成10(ワ)5743 不正競争 民事訴訟事件
(「アリナミンA25」と「アリナビックA25」の類否、著名性をめぐって争われた事案)

・JACCS事件
 H12.12. 6 富山地裁 平成10(ワ)323 不正競争 民事訴訟事件
 控訴審
 H13. 9.10 名古屋高裁金沢支部 平成12(ネ)244等 不正競争 民事訴訟事件
(ドメイン名の使用が「商品等表示」の「使用」にあたるか、著名性、類似性が争われた事案)

・虎屋黒川事件
 H12.12.21 東京地裁 平成11(ワ)29234 不正競争 民事訴訟事件
(和菓子の「虎屋」と「虎屋黒川」の名称をめぐって著名性などが争われた事案)

・JーPHONE事件
 H13. 4.24 東京地裁 平成12(ワ)3545 不正競争 民事訴訟事件
(ドメイン名使用の「商品等表示」使用性、著名性をめぐって争われた事案)

・呉青山学院中学校事件
 H13. 7.19 東京地裁 平成13(ワ)967 不正競争 民事訴訟事件
(「青山学院」の著名性、被告表示との類似性などをめぐって争われた事案)


著名性否定例

・キューピー事件
 H11.11.17 東京地裁 平成10(ワ)13236 著作権 民事訴訟事件
(原告ないしその関係者側の「商品等表示」としての著名性を否定した事案)

なお、控訴審
 H13. 5.30 東京高裁 平成11(ネ)6345 著作権 民事訴訟事件
平成14年10月29日上告棄却

・月の友の会事件
 S57.11.12 最高裁第二小法廷判決 昭和57(行ツ)15 審決取消
(商標法4条1項8号の著名性をめぐって争われた事案。
なお、平成8年改正の商標法4条1項19号著名商標規定について、
山本庸幸「要説不正競争防止法第三版」(2002)118頁以下)



■参考文献

田村善之「不正競争法概説第二版」(2003)236頁以下
竹田稔「知的財産権侵害要論 不正競業編改訂版」(2003)95頁以下
小野昌延「不正競争防止法概説」(1994)143頁以下
牧野利秋ほか編著「新裁判実務大系 4知的財産関係訴訟法」(2004)449頁以下
渋谷達紀「知的財産法講義3」(2005)71頁以下
逐条解説 不正競争防止法」(1994)32頁以下
逐条解説 不正競争防止法 平成16.17年改正版」(2005)50頁以下
青山紘一「不正競争防止法第二版」(2005)51頁以下
牛木理一「商品形態の保護と不正競争防止法」(2004)30頁以下

なお、著名標識の保護に関する諸問題について、
満田重昭「不正競業法の研究」(1985)85頁以下





written by ootsukahoumu at 11:38│TrackBack(0)知財判決速報2006 

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